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零の魔法使い  作者: 桃姫
レイの魔法使い
13/32

12話:月世物語

 (ゼロ)。俺は、「零の魔法」使いだ。ゼロとは何もないことを表す。そして、俺は、もう一つ魔法を持っている。その魔法は、――


「月世。お前は、――」

魔法。いつか、お前を、……


「だからね、黎希。キミはキミだけの魔法を使いなよ。キミはわたしの、わたしだけの――の魔法使いなんだから。でも、その魔法は、キミとわたしの秘密だよ。その代わり、わたしの秘密の魔法も教えてあげるから」

 いつかの約束。俺と月世、二人だけの約束。だから、俺は――の魔法を使うことはないだろう。この先、ずっと。


 三縞の話を聞いてからどの位経っただろうか。といっても数週間程度なのだが。あれから、俺と天螺は行動を一切起こさなくなった。《魔真衆》もここしばらくは、主だった活動を控えている。

「黎希ぃ~!ちょっと、買い物してきて~」

酔っ払った深蘭により頼まれた俺は、外に買い物に行くことになった。

「まったく、だるいな」

「また、買い物?」

後ろから掛けられた声。それは、妖の声だ。

「クスッ、またまた深蘭姉に、厄介ごとを無理やり押し付けられたんでしょ?」

身の毛もよだつとは、まさにこのこと。全身に寒気が走った。今の口調は、間違いない。月世のソレだ。

「クスッ、相変わらずこき使われてるみたいだね。――の魔法使いも、こういう時はただの人間だもんね」

コイツ、何だ?何故、俺と月世の約束を……。――の魔法のことを知っているんだ。妖、お前は、

「お前は、誰だ……?」

「わたしは、月の魔法使い。キミの月世だよ」

月世……。間違いない、俺の、俺の知る月世そのものだ。


「ずっと、ずっとこのときを待っていたんだよ……。さあ、今こそ、わたしを助けて。わたしの『(レイ)の魔法』使い」


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