11話:無窮
無窮、それは、無限であり、恒久であり、永久であり、永遠である。無窮、それは、朽ちることなく栄華を誇る力。永遠の美、永遠の命、永遠の力。所謂、不老不死の化け物。吸血鬼にも似た存在。ただ、吸血鬼と違うのは、血を吸わなくてもいいし、太陽の光を浴びても平気だし、流れる水も関係ないし、にんにくも平気。そして、永久日天螺は、そんな無窮の力の持ち主である。その美貌は、老若男女関係なく人を虜にする。触れることを躊躇いそうなほど綺麗な肌。綺麗な髪。そして、恋することさえ愚かしい高嶺の花。碧の髪は、神々しく太陽を反射する。その光に引き寄せられたかのように集まる虜たち。彼女には、全てを手に入れられる力がある。地位も名誉も永久に……。
「恒久」
それは、永遠の力の魔法。魔力も体力も精神力も全てが永遠となる魔法。
「永久」
それは、永遠の生の魔法。その命が尽きることはなくなる。永遠の命を得る魔法。
「永遠」
それは、永遠の美の魔法。その美しき体を永久に保つ魔法。年を取らず、体重の増減もない。プロポーションも変わらない。
永久日天螺は、全てを手に入れられる。そして、その力が、働かなかったことはない。無限の力は絶対的。それは、いつにおいても変わらずそうであった。しかし、一度、たった一度だけ、働かなかった。それは、「零の魔法」とぶつかったとき。無限にあるものを零にしようとするため、ループが繰り返され、発動せずに終わった。
「だから、私は、貴方に惹かれる」
そう呟いた永久日天螺の声は、虚空にこだまし、風が運び消し去った。
四之宮黎希。零の魔法使いであり、永久日天螺の家の宿主である。無窮の魔法使いである永久日天螺とは、逆の存在。地位も名誉も持たず、彼に近づくものはいない。本当に逆の存在。
「なのに、彼は、強い……」
無限の力があるわけではない。無限の美しさがあるわけではない。無限の命があるわけではない。でも、戦っている。天螺は、もう、尽きることのない寿命と傷の付かない体を持っている。だけど彼は違う。寿命はあるし、攻撃を受ければ傷つく。なのに、なのに彼は、戦う。だから、
「私が、支えていかなくてはならないわね……」




