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零の魔法使い  作者: 桃姫
ゼロの魔法使い
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0話:プロローグ

 魔法。それは、世界に密に存在していた。魔法則(まほうそく)と呼ばれる魔法を発動するための言葉を詠むことで、使えるそれは、大いなる力だった。しかし、現代科学の発達とともに衰退の一途を辿っていった。魔法使いの減少。その現象がもたらしたのは、魔法使い同士の協調。少ないもの同士が集まり、何とか子孫を残そうという動きになったのである。こうして、魔法使いの減少は止まった。


 ……と、思われていた。しかし、自体は、ある事件を切欠に一変したのである。「水素事件」と呼ばれる事件。その事件は、魔法の盛んな水素家が全滅したのである。その後に送られた犯行声明によると、犯人等の名前は「魔真衆」。


 魔真衆は、魔法使いの討滅を目的に生まれた魔法使いの集団である。存在自体が矛盾するその存在は、様々な魔法組織を潰してきた。主な活動拠点は日本。極稀に海外でも、行動が起きる。その「魔真衆」のリーダーの名前は天壌月世(てんじょうつきよ)。最強の魔法使いにして「月の魔法使い」と呼ばれる。その月世を止めるためにいくつもの組織が活動をしている。しかし、どれもその強さに壊滅寸前。もう、彼女を止められる人間はいないと思われていた。


 しかし、ある一人の魔法使い。彼は、彼ならば……



 俺は、雲の隙間から零れ落ちる月明かりを見上げながら呟いた。

「月世……」

天壌月世。「魔真衆」のリーダーにして、俺の幼馴染だ。彼女はある日、俺の前から姿を消した。その理由は定かではない。しかし、その数ヵ月後に活動を始めた「魔真衆」のリーダーになっているのだ。「魔真衆」に入ればその理由が分かるかも知れなかったが、「魔真衆」に俺が入ることは出来なかった。だから、俺は、「魔真衆」を潰すことで、月世が、姿を消した理由を探ることにしたのだ。


 足音が聞こえる。その数はおそらく十人。俺は、息を潜めながら、魔法則を詠んだ。

「消滅」

その瞬間。そこに存在した空気が消滅した(・・・・)。相手は、空気がなくなり、真空となったその空間で、呼吸が出来ず、窒息し、気絶した。

「解除」

そして、空気を消滅させるのを止めた。解除とは、魔法を解除することだが、本来の魔法なら、こういったことはなく、普通に自動で切れる。しかし、俺の魔法の場合、解除させなければ、その空間には、永遠に空気がなくなる。真空となった空間に流れ込む空気すら消滅させていく。自然消滅を待つと、除々に、その空間外の空気をも消してしまい、悪影響を及ぼしかねない。だから、解除という概念が必要になるのだ。


 気絶させた「魔真衆」を縄で縛り、放置し、俺は、家に帰えることにした。どうせしばらくすれば、魔法関連の組織がやってきて、あいつ等を連行するだろう。そう思い、一歩踏み出したところで、俺の足は止まった。背後に現れた、途方もない存在に身震いが止まらない。金縛りに遭ったように動かない体に鞭を打ち、後ろを振り向く。すると、そこにいたのは、途方もないくらいの――美少女だった。


 その美貌のあまり、呼吸を忘れそうな。人は誰しも足を止めるだろう。時すら止まりそうな、その美貌。鮮やかな碧色の髪。そんな現実にはありえなさそうな髪が、神々しさとして魅力を引き上げているようにも思える。その美しさは人を超越している。人外とさえ言える。


 その少女は、俺に手を向けていた。そして、一言呟く。

「恒久」

その鈴の音のような声は、俺の耳の奥までも入り込み、何度もこだました。そして、数刻後、理解する。それが魔法則であることを。

「抹消」

俺は、慌てて、その魔法則を消すための魔法則を詠んだ。


 その魔法が物理的であれ概念的であれ、魔法則が消されれば、それは成り立たなくなる。だから、俺は、「恒久」と詠まれた魔法則を抹消したのだ。

「……ッ?」

少女は驚きを隠せない様子だった。それはそうだろう。魔法則が消されるなんて言う体験は、初めてのことだろうから……。そう思ったのだが、違う。消せて、ない。おかしい、俺の魔法はきちんと発動したはずなのに、消えていないのだ。だが、発動もしていない。これは、一体どういう現象なんだ。あの魔法はなんなんだ。

「貴方は、何?」

少女の問いに、俺は、同じ問いで返す。

「そういうお前こそ、何なんだ……」

髪を風になびかせながら、少女は名乗る。

永久日(とわひ)天螺(てんら)。『無窮の魔法』使い」

無窮……、朽ちのない永遠……だと……。俺の魔法の逆。正しく真逆の魔法だ。

四之宮(しのみや)黎希(れいき)。『(ゼロ)の魔法』使いだ」


 ――そう、この出会いこそ、全ての始まり。この時より、零と無限の輪廻が動き出したのであった。


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