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セミリタイアのはずなのに! ~勇者パーティーを抜けた俺~  作者: 柚鼓ユズ


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41話 モルスト、学園へ滞在する

「なるほど……私用を兼ねて昔からの仲であるリッカ先生との再会かつ、我が学園の特進クラスの生徒達への個人的な調査を含めた訪問交流というのが勇者様の本来の目的でしたか……。突然の事で狼狽えてしまい、誠に申し訳ございませんでした」


 あれからすぐに皆と一緒に教室へと戻り、皆と口裏を合わせる様に会議をし、それが終わると同時にモルストと二人で学園長とメディ先生の元へと向かった。なお、モルストのひび割れた鎧は何か言われたら面倒だと思い『擬態』の魔法をかけて傍目には分からないようにしている。


「いえ。こちらこそ突然の訪問を重ねてお詫び申し上げます。国が絡むと厄介なため、このような形を取らねば私個人での訪問が叶わなかったもので。……ですが、やはり来て良かったと思います。僅かな時間ではありますが、彼女たちとの交流は実りのある訪問になるかと思います」


 ……しれっと完全に外交モードに切り替わっているモルストを見て思わず感心する。そもそもこいつとした事と言えばただの一騎打ちで、あいつらの魔法なんて今の時点では全く見ていないのだ。


「……ですが勇者様。またとない機会ですので、私としては私達や特進クラスだけではなく、他のクラスの者たちにも勇者様とお会いする貴重な機会を頂けたらとは思うのですが……」


 学園長の言葉にモルストが首を振りながら答える。


「……いえ。そうなればそこから噂が広がり、私が内密にここに訪れた意味が無くなってしまいます。私用のついでにここに来たという事は、私としては出来れば公にはしたくありませんので。ですので、今回は学園長をはじめ一部の講師の方と特進クラスの面々のみとの間の秘密とさせて頂きたいと思います」


 モルストの言葉にそれならば、と頷く学園長とメディ先生。その後、自分を含めた数名で歓談を含めた会議が行われた。その会議の中で、短期間ではあるがモルストが実際に特進クラスの現時点での魔法の知識や実力を見届け、国の魔術師組合へそのレベルを秘密裏に報告するという形へと落ち着いた。


「……では、お言葉に甘えて僅かの間になりますがご厄介になります。では、私は引き続きリッカと特進クラスの生徒の皆を観察させて頂きますのでよろしくお願いします」


 そう言って頭を下げるモルスト。学園長が同じく頭を下げて言う。


「はい。ご滞在の間は私どもがご用意した部屋にてお過ごしください。ではリッカ先生、勇者様のご滞在の間、ご対応を旧知の仲である貴方へほぼ一人でお任せしてしまう形になりますがよろしくお願いしますね」


 学園長の言葉に頷き、モルストと一礼して会議室を後にする。


「……まったく、上手く猫をかぶっているようだな。まるで本当の講師の様ではないか」


 二人きりになったのを確認してモルストが自分に声をかけてくる。


「お前には負けるよ。それに、一応今は本当に講師なんだからな。そこは覚えておいてくれよ」


 自分の言葉に笑いながらモルストが言葉を続ける。


「そうだったな。……さぁリッカ、悪いがこれからしばらく付き合って貰うぞ。もう時間があまり私には残されていないからな」


 その言葉に頷き、モルストと二人特進クラスへと向かった。



「……という訳だ。これを見る限り残党魔族の行動は無視出来ないだろう。どう思うリッカ。お前の意見を聞きたい」


「そうだな。俺がここに来たばかりの時にも一度魔族の襲来があったんだが、やはり今後の対策としては……」


 モルストと顔を突き合わせながら会議をしていると、突然ルジアが声を上げる。


「……ちょっと!何なのよ一体!二人で教室に戻ってきたかと思えば、いきなり当面の間自習って!し、しかもその後二人でずっとそうやって話し込んでいるじゃないのよ!」


 席から立ち上がりこちらを指差すルジアにモルストがやれやれと言った表情で答える。


「……仕方ないだろう。リッカがここに残る以上、本来なら国で行うはずの予定や魔族への今後の対策を最低限練っておかねばならないのだからな。極秘事項かつ、今後の国のための会議を他でやれというのか?」


 モルストの言葉にぐっ、と苦虫を噛み潰した表情で押し黙るルジアに声をかける。


「まぁまぁ。落ち着けよ二人とも。悪いなルジア、それに皆。第三者の耳に入らずやり取りするにはここが一番安全だからな。悪いが二、三日の間辛抱してくれ。その間は教室なり施設で自由にトレーニングなり勉強するなりしてくれてかまわないからな」


 そう言って皆を落ち着かせ、モルストとの会議を再開する。


「……こうして落ち着いてみますと、モルストさんってかなりの美人さんですよね。凛としながらも時折先輩の前で可愛らしく笑うところとか……」


「だよね。……歳もリカっちと同じくらいだし、あぁやって二人を見ていると普通にお似合いのカップルって言われても違和感無いよね。……ちょっと悔しいかも」


「……あぁもう!何より距離が近いのよ!話すだけならそんなに近付かなくても良いでしょうに!」


「……先生、年下は守備範囲内?」


 モルストとの会話の合間、何やら離れた席でやいのやいのと小声で騒いでいるルジア達の方へ顔を向ける。


「……ん?あいつら何を騒いでいるんだ?そんでモルスト、お前は何がおかしいんだ?さっきから時々会話中も笑っているみたいだが」


 手を口に当て、くくっ、と笑うモルストに声をかける。


「なぁに。何でもないさ。……さ、続けるぞリッカ」


 こうして、国の今後の魔族対策から活動方針に至るまでのありとあらゆる会議を時間の許す限りモルストと行った。ある程度の資料がまとまったところで、建前ではあったが実際に皆の魔法のレベルを見てもらうべくモルストの前で各自得意の属性を実戦室で披露してみたところ、予想以上の出来栄えだったらしく自分がここに残る理由の後押しになったのは思わぬ収穫であった。


「……なるほど。確かにお前が彼女達を育てたいと思うのも頷けるな。この若さで皆、ここまでの高みに到達しているというのは予想外だ。お前が後進育成に興味を持つのもこれなら納得というものだ」


「そうだろ?ま、お前がそう思ってくれたのなら何よりさ」


 そう言って皆の様子を眺める。だが何故か皆、モルストを睨むようにいつもより気合いを入れて魔法を放っているように見えた。


こうして、三日間というモルストの滞在期間はあっという間に過ぎ去ったのであった。


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