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セミリタイアのはずなのに! ~勇者パーティーを抜けた俺~  作者: 柚鼓ユズ


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12話 ルジア、謹慎処分を受ける

 ルジアと二人、宿舎を出て学園に向かって歩く。宿舎は学園内にあるため程なくして学園へ到着する。


「……よし、んじゃ行くぜ。色々と長くなるからまずは教室からだな。皆、本気でお前の事を心配していたんだからな」


 ルジアが頷いたのを確認し、教室へと入る。自分たちの姿を見て、皆が一斉にこちらへ駆け寄ってくる。


「ルジアさんっ!大丈夫でしたか!?」


「どこ行ってたのさルジっち!皆で凄い探したんだよ!」


 マキラとナギサを筆頭に、皆が口々にルジアに声をかける。流石にルジアが殊勝に頭を下げてから口を開く。


「……皆、悪かったわね。つい頭に血が登って後先考えずに動いちゃったのよ。迷惑かけたわね」


 そう皆に謝罪し、自分が何か言う前にルジアは自ら皆へ一部始終を打ち明けた。


 コンプレックスを抱えた優秀な双子の姉という存在の事。それを冷やかされてつい手を出してしまった事。その後、衝動的に学園を飛び出してしまった事。ルジアが一通り語り終えて教室に沈黙が訪れた中、自分が口を開く。


「……よし。じゃあ皆にルジアの無事と報告が終わったから次は学園長のところに行くぞ。流石に、生徒を殴って学園を飛び出して何の処分も無しって訳にはいかないからな」


 そう自分が言うと、ナギサが自分に声をかけてくる。


「……待ってリカっち。本当にルジっちだけが責められないといけないの?そりゃ、手を出したルジっちが悪いのは分かってるけど……情状酌量的なのは何かないの?」


 ルジアにどのような処分が下されるのかが不安なのだろう。皆も似た様な表情を浮かべている。


「心配すんな。その辺りは俺も既に昨日のうちに学園長に嘆願してあるからよ。この後も色々働きかけるからな。流石に何の処分も無しとはいかないだろうが、退校とかにはならない様に俺も動くからな」


 そう自分が言うと、皆に安堵の雰囲気が流れる。それを見てルジアの肩をぽんと叩いて言う。


「よし。じゃ行くぜルジア。面倒な事はとっとと終わらせようぜ。あ、皆は適当に自習していてくれよ」


 ルジアが頷くのを確認し、そのまま二人で学園長の元へと向かった。


 その後、学園長との面談にてルジアの処分が正式に下された。



「……お、思ったより早かったな。無期限と言われた時はどうなるかと思ったが、きっちり一週間で謹慎が終わるとはな。これからはちゃんと周りを見てから手を出すんだぞ」


 一週間の謹慎期間を終え、学園長室を一礼して出てくるルジアに声をかける。こちらを見て少しバツの悪そうな顔をして言う。


「……おかげさまで、ね。あたしだってこの程度で済むなんて夢にも思ってなかったわよ」


 そんな事を話しながら二人で教室へと向かう。歩きながらぽつぽつと二人で会話する。


「ま、当人への謝罪に反省文、謹慎中の日報もきっちり済ませたんだしこれで一件落着だろ。あ、くれぐれも再犯だけはするんじゃないぞ」


 そう言うとルジアが歩みを緩めてつぶやく。


「……しないわよ。てか、向こうがむしろあたしを見たら逃げると思うから。対面での謝罪の時、こっちから手を出した事は確かだからあたしから頭を下げて謝ったのよ。でも悔しいから『また同じ事をあたしや誰かに言いふらしたら、今度は退校覚悟の全力でぶん殴って報復するから』って最後に言ったけどね」


 あれでまだ全力じゃなかったのかよ、と内心で突っ込みたい気持ちを抑えているとルジアが言葉を続ける。


「そしたら、あいつ何て言ったと思う?『死んでも言わないわよ!同じ事があったらあんたの担任に何されるか分からないもの!』って言ってたわよ。あいつ、殴ったあたしよりもあんたに怯えているみたいだったわ。……あんた、一体どんだけの圧力かけたのよ」


 大人の交渉をしただけなのに怯えられるとは心外である。まぁルジアへの様子を聞くに、向こうもこれ以上不用意にルジアの事をふれ回る事が無いならそれで構わない。


「うーん。そんな大した事は言ってないんだがなぁ。ま、向こうがその反応ならもう大丈夫なんじゃないか?」


 そう自分が言うと、ルジアが苦笑して言う。


「……ま、そうでしょうね。あんたがそう言うならきっとそうだと思うわ」


 そうルジアがつぶやいた時に懐からある物を取り出しルジアに渡す。


「そうだ。これ、お前に渡しておこうと思ってな。ほれ」


 そう言ってルジアに袋に入った紙の束を握らせる。袋の中をちらりと覗いたルジアがつぶやく。


「何これ……手紙?」


 不思議そうな表情のルジアに言葉を返す。


「あぁ。お前の謹慎中にメディ先生から俺が受け取っておいた。これ全部、お前の姉さんからの手紙だってよ。もちろん、中身は一切見てないぜ。一通目が届いた時点でお前が受け取り拒否してから、届くたびにずっと先生が預かっていたそうだ。お前からの返事が返ってこなくても、折にふれて送ってきているそうだぜ」


 そう自分が言うと、歩みを止めてルジアが自分に言う。


「……これを見て、あたしにどうしろっていうのよ」


 ルジアの言葉に頭をかきつつ答える。


「どうもしねぇよ。読むのも捨てるのもお前の自由だ。ただ、今のお前なら少なくとも姉さんはお前の事をどう思っているのかくらいは受け止められると思ってな。返事が返ってこなくてもこれだけ手紙を送ってくる姉さんが、お前を周りの連中の様に『劣化品』扱いしているのか確かめてみても良いんじゃないか?」


 自分の言葉にしばし無言で手紙の一つを手に取り、宛名の部分を見つめた後、それを袋に戻しながらルジアが言う。


「……本当、下手くそな字。そういえば姉様、書き物だけは苦手だったわね。……ま、気が向いたらそのうち見てみる事にするわよ。見ても返事を返すかは別だけどね」


 そう言って苦笑するルジア。長年抱いた気持ちが突然氷解するのは難しいだろうが、そのきっかけぐらいにはなったのではないかと思う。


「だな。それで良いと思うぜ。さ、晴れてお務めも終わった事だし皆の元へ戻るとしようぜ」


 そう言って二人で再び教室へ戻る道すがら、ルジアが自分に声をかける。


「……ねぇ、あんたって恋人とかいるの?もしくは奥さんとか……」


 ルジアの質問にわざとらしくため息をついてから返答する。


「あ?謹慎明け早々喧嘩売ってんのか?そんな存在がいたらここで働いてないし、そもそも勇者のパーティーにすら加入してねぇよ」


 自虐的に答えると、何故か少しほっとした表情になったルジアが再び口を開く。


「そ、そうよね。あんたみたいなタイプは伴侶探しも難しいものね。聞いたあたしが悪かったわ」


 ……こいつの処分を軽くするべく尽力した事をほんの少し後悔しつつ、その後は軽口をたたき合いながら教室へ到着した。


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