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ジュラシック•アイランド  作者: ダイナ
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野宿


 川の上流を目指し始めて数時間、もう夕方も近くなる中俺たちは川から離れ、近くにあった洞窟にいた。


 「ふぅ...。白崎、木は集め終わったか?」


 「うん。それにしても、高台を目指さなくて良かったの?まだ夕方にもなってないけど...」


 「ああ。さっき腕時計を調節してな。どうやらここと外の世界は時間が違うみたいだったから。今の時間は大体4時半ってところか?これ以上進むと夜になっても拠点が見つからない危険があったからな。夕方や夜にこの古代世界を進むのは流石に遠慮したかった」


 「そんなに?確かに、あんまり夜に動きたくはないけど...」


 「夜行性の恐竜がいるかどうかは分かってないけど、少なくとも恐竜は夜目がきいたらしい。俺たちは夜目がきかないからな、暗闇の中、いきなりラプトルなんかに襲われたらそれこそひとたまりもない」


 「ラプトル...」


 それを聞いて、昼の動画を思い出したのか震える白崎。


 「...悪い、無神経だったな」


 「ううん、ごめんなさい。...これからどうなるんだろうね...」


 白崎の言葉にふと考える。これから、か...。確かに、どうなるのだろうか。この地下世界がそもそも見つかるとも思えない。元々あの洞窟は調査隊が何処かに消えると有名だったらしいが、今でもその調査隊がどうなっているかはわからない。道中で人間の骨らしきものは見つからなかったが、少なくともラプトルやらティラノやらに襲われて亡くなっている可能性は否定できない。


 日本政府はもしかしたら俺たちのことを探してくれるかもしれないが...洞窟の中にこんな世界が広がっているなんて思いもしないだろうし、調査隊が来ても多分すぐにやられてしまうだろう。となるとそもそも調査が打ち切られる可能性もある。よしんば調査が打ち切られないとしても、そもそもの話調査隊が来るのはいつになるのか、という話だ。数日で来るなんて甘い妄想はしないほうがいいだろう。なら、一週間後?一ヶ月後?それとも、それ以上先?


 ...やめよう。こんな思考しても虚しいだけだ。少なくとも俺たちは一刻も早くこの世界から脱出しなければならない。それさえ覚えてればいいだろう。


 「...さあな。それより早く火をつけよう。恐竜以外にも他の野生動物が来ても困るからな」


 



 そのころ。なんとかティラノサウルスから逃げ切ったロシアの軍人たちは元の湖に戻り被害を報告しあっていた。


 『教員の話によれば囮の人間は5名が行方不明らしい。1人は死亡が確認されている。恐らくは他の奴らもそうだろう。さっきの襲撃で全員が怯え切っていて囮は使えそうにない。こちらの被害はどうなっている?』


 『こちらの被害は5名の死亡とトラックが一台横転して炎上だ。そのおかげであいつらを退けられたとも言えるが...。設備は確実に減っているな。それと乗っていた生徒どもが全員逃げ出した。あの中村とかいう小僧もだ』


 『なんだと?ちっ、あの小僧の知識は役に立ったんだが...逃げ出したんなら仕方ない、どうせ何処かでくたばっているだろう』


 『...どうだろうな』


 軍人の脳内に運よくティラノにより銃弾から逃れられた中村が映る。あの悪運と知識、そうそうに死ぬとは思えないが...。


 『そんなことより、これからだろう。どうするんだ?もうこちらの人間は10名以上も死んでいる、後いるのはたったの20名だ。恐竜の捕獲は金になるが、死体でも充分だろう。撤退するか?』


 『撤退だと?こんなに手酷くやられてか?冗談じゃない、一匹くらいは持って帰らないと報告もできないだろう!なにより我らの誇りにも影響する!』


 『なら、撤退に賛成の人間は手を挙げてくれ』


 その言葉に手を挙げる複数の軍人達。しかし、その数はどう見ても半分もいっていない。


 『なら現時点を持って撤退の可能性を破棄する。目標は恐竜一匹の捕獲。それ以上は無しだ。目標を確保次第撤退し、退却。それでいいな?』


 その声に了承の声を上げる軍人達。そのまま今後の計画を煮詰めていった。


 

 夕方も過ぎ、とっくに夜になった洞窟内。近くでは何かの鳴き声が絶えず響いているが、火に恐れているのか、取り敢えずは近寄ってこないようだ。念の為に作っておいた防衛には不安が残るバリケードの中、2人はほっと息を吐く。


 「とりあえず夜はこれで過ごせそうだな」


 「うん。それにしても、中村君がいてよかったよ。中村君がいなかったらもう私死んじゃってたかも知れないし」


 「どうだろうな、案外生き残ってたんじゃないか?白崎意外と対応力が高いしな、俺抜きでも生き残ってかもしれないぞ?」


 「ううん、私1人じゃ無理だったよ。だから、ありがとうね、中村君。君がいて良かったよ」


 「...そうか。それなら、良かった」


 それから会話も尽き、ボーッと火を眺めていると白崎は眠ってしまったようだ。まぁ、あんだけいろんなことがあったしな。荷物からコートを出してかけると、幸せそうにこちらに寄りかかり眠り始めた。それにちょっとドキドキしながらも、俺は明日のことを考えていた。


 食料はとりあえず1日分はある。修学旅行が始まったばかりで、しかもサバイバルの予定もあったのが幸いした。修学旅行の予定にサバイバルがあった時は目を疑ったが...ことこういう時に限っては用意してあったのが助かる。簡易ながらバリケードを作れたのも、こうして火があるのもそのおかげなのだから様々だろう。とは言っても、食料は1日分しかないのだ。何処かできのみか、はたまた魚でも取る必要がある。とはいえ、こんな世界で魚など安全にとれるだろうか?先ほど川にはテリジノサウルスがいた。恐らくは日によってはスピノサウルスやイリテーター、バリオニクスなんかも来るかもしれない。そもそも普通に川にデイノスクスなんかいたら本当にヤバい。最大12メートルのワニとか対峙したくもない。


 ならきのみはというと...。そもそもこの世界にラズベリーとか野いちごとかあるのだろうか?残念なことに俺にそう言った知識はない。世の中には山菜があるそうだが...見分けなんかつかないし、毒かなんかがあって腹を壊したら元も子もない。死んだら終わりなのだ、慎重になる必要がある。


 なら、どうするか...。その答えの出ない思考を続けているうちに、いつのまにか俺も眠ってしまっていた。



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