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ジュラシック•アイランド  作者: ダイナ
2/6

囚われた生徒達


 朝、目が覚めると俺は囚われていた。もう一度言おう。


 目が覚めたら囚われていた。...どういうことだ!?


 「あ、目が覚めた?中村君」


 俺に声を掛けたのは、同じくクラスメイトである白崎伊織。俺が通っている学校、宮野高校の美少女ランキング一位のヒロインと言われている少女である。


 「白崎?これは一体...なんか縛られてるんだが?」


 「あ、それは「...ゼンインオキタナ?」」


 瞬間、ビクリとなる部屋中。拙い日本語でドアから入ってきたのは明らかに軍人とも言える数十人もの軍人達だった。


 「あ、貴方達は、一体!?...ひっ!」


 生徒指導の男性教員が声を張り上げるも銃を突きつけられ悲鳴を上げる。


 「スコシダマッテイロ。オレタチハロシアノグンタイ、クルイークリオートダ。オマエタチハヒトジチトシテココニイル。ムダナテイコウハヤメテオクコトダナ」


 日本語が聞き取りづらいが、ロシアの軍隊が俺たちを人質にとっているらしい。何故そんなことに...?


 「オマエタチニホンジンハコノシマヲカッテニジコクノリョウドトシタ。シカシ、ソレハスコシバカリカッテガスギタノダ。モトモトコノシマハダイチガリュウキシタモノ。ニホンニデキタノハ、グウゼンニスギナイ。ソノコトニフマンヲモツクニハカズオオクイル。ワレワレハソノナカノイッコクトシテ、ニホンニコノシマノリョウドケンヲハキサセルノガモクテキダ」


 聞き取りづらい!が、何となくは分かった。要するに、ダイナミクス島を勝手に日本の領土にするなってことか。んなこと言って、自分たちがこの島を欲しいだけだろうに。


 「キサマラハシバラクオトナシクシテイルンダナ。ナニ、コロシハシナイ。...モットモ、キサマラガリコウニシテイルナラ、ナ」


 「そ、それなら...」 「信じていいのかよ?」


 「でもじゃあ何ができるんだよ?」「それは...」


 その通り、今現在俺たちが出来ることはない。日本政府がどう答えるかは分からないが、少なくとも見殺しにすることはないだろう。そう思い、そして昼頃の話だった。


 流石に食事だけは許されたのか、各々が腕の手錠だけは外されサンドウィッチを食していたころ、突如銃声が鳴り響く。


 「じゅ、銃声...!?」


 その音に周囲がパニックになる中、ロシア人が無線に叫ぶ。


 『何があった!?』


 『ーーそれが、恐竜が攻めてきてーーがぁっ!?』


 『恐竜だと!?なにをいい加減な...おい、返答しろ!』


 向こう側の悲鳴が聞こえた後に響く、何かの叫び声。そして聞こえる、甲高い音。それを聴いて、何人かが銃を持って出ていく。

 

 「今のは、一体...」


 「динозавр...。恐竜?」


 「は?」


 隣の白崎が出した声に思わず声を漏らす。


 「динозаврはロシア語で恐竜っていうの。ちょうどこの前家庭教師から教えてもらった内容だったから...」


 「教養の深さ...。待てよ、恐竜?あのか?それはないだろ、だって恐竜は絶滅してるんだぞ?」


 「でも...」


 『ーーこちらアルファ班、現場に遭遇!現場に残されているのは遺体のみです!』


 『映像映します!』


 その声と共にスクリーンに映し出される血まみれの遺体。突然のグロ画像に顔を青くする生徒達。


 「うっ、うう...」


 「大丈夫か、白崎?...ん?何だあの遺体?」


 顔が半分削れ、胴体にも穴が空いている遺体。その遺体を見て不自然に思う。まるで何かに引っ掛かれたかのように軍服が切り裂かれているのだ。恐らくは三本ほど...。そして身体に開いている大きな穴。このような傷跡を、昔見たことがある。


そう、それはラプトル系の恐竜が爪を立てたときのような。


 その考察からまもなく、叫び声が聞こえる。


 『ベータ、応答しろベータ班!』


 『こちらベータ班、何者かに襲われて...ぎゃあああ!』


 『何が起こっているんだ...!?ベータ班の元へ行くぞ!』


 『ガンマ、了解!』


 『デルタ班も了解した!』


 そうしてアルファ班がついた先には無惨にも殺されたベータ班の遺体。そしてその中心にいるのは...


 『嘘だろ、ありえない...!』


 スクリーンに映し出された存在に全員が息を呑む。それは人間の半分ほどの体格を持ち、その顔はトカゲのようでいて、しかし口には鋭い牙が並ぶ。手には3本の爪が生えており、その腕には少しながらも羽毛のように毛が生えている。足の人差し指に当たる部位ではその一本だけが大きくなっておりカタカタと地面で音を鳴らしている。


その恐竜は...。


 「ヴェロキラプトル...!」


 俺がそう叫んだのが皮切りになったのか、飛びかかるヴェロキラプトル。それにより正面のカメラを持っていた軍人が倒れ、その顔面がアップになる。


 『何をしている!撃て、撃てー!』


 ダンダン、と鳴らされる発砲音。その音に敏感に反応したラプトルは俊敏に跳躍し、すぐさま他の兵士の方へと進む。しかし先ほどとは違い数十人による兵士の発砲は流石に避けきれないのか、一発、二発と当たっていく。


 それでも倒れずに次々に兵士を薙ぎ倒していくが、1人の兵士が放った弾丸が運良くラプトルの目玉に当たりその眼球を弾き飛ばす。それにより倒れたラプトルに軍人が一斉に銃の放射をし、ようやくその恐竜は動きを止めた。それでも、被害は甚大で見るだけでも数名の人間が腕や足に穴を開け、最初に飛び掛かられた兵士は顔をやられてしまっていた。


 『しかし何故恐竜が...?』


 『...洞窟だ。確かこの島には開拓中の洞窟があったはずだ。たしか大型の機械では何故か入り口に戻されるとかいういわくつきの...』


 『洞窟、か。...なぁ、思ったんだが。これ、金にならないか?』


 『金だと?そりゃあなるだろうが...。コイツで十分だろ?』


 『馬鹿が。生きた恐竜を捕まえるんだよ。幸いにも装備はある。そして、いざという時の囮も...な』


 『しかし、あいつらに手を出したら国際問題にならないか?』


 『んなもん恐竜発見で誤魔化せるだろ。なんせ一大ビッグニュースだぜ?国際問題なぞ恐竜発見のニュースに比べたら屁でもないだろう?なに、一匹捕まえる程度でいい。それなら全滅とはならないし、大した問題にもなりはしないさ』


 『ふむ...一匹だけなら、まぁそうか。そうだな、ならそうするか』


 無線を終えたロシア人がこちらに向き直る。


 「イマカラオレタチハ、アノキョウリュウヲツカマエニイク。オマエラハソノタメノオトリニナッテモラウコトニナッタ」


 その言葉にざわつく生徒達。


 「シカシモンダイハナイ。ナニ、セイゼイイッピキツカマエルテイドダ。ヒガイハデテモスウニンデスムダロウヨ。シカシオマエタチモシタイニハナリタクナイダロウ?ソコデ、ダ。キョウインハカクテイトシテホカノニンゲンハオマエタチデキメテモラオウ。ナニ、キニイラナイニンゲンデイイ、モシクハツカエナイニンゲンデモナ。ソウダナ...カククラスヒトリダシテモラウカ。イマカライチジカンゴダ、ソレマデニキメテオケ」


 クラスで1人生贄を決めろ、だと...。そんなの...。


 しばらく話し合った後に、クラスの奴らから視線が集まるのを感じる。そう、だろうな。俺はクラスの中でも浮いている存在だ、友達だっていない。必然的に俺はそうなるか...。となったところで白崎が声を上げる。


 「待ってよ!中村くんを1人生贄にするの!?皆本当にそれでいいの!?」


 「でもよ白崎さん...」「俺たちだって死にたくねぇし」


 「それに中村はぼっちだ、死んでも悲しむ奴はいねぇよ」


 「あ、貴方達...!」


 ギリィと白崎が拳を握る。そんな中軍人が声を掛ける。


 「...マッタ。ナカムラトカイッタナ?キサマハサッキノキョウリュウニココロアタリガアルノダロウ?」


 「そういえばさっき...」


 「ヴェロキラプトルとか何とかって...」


 「...ああ。あの恐竜はヴェロキラプトル。見て分かった通り長い爪が特徴の小型の肉食恐竜だ。化石が集まっていたことから群れで生活していたとも考えられている」


 この世界でジュラシックパークは放送されている。何ならワールドも放送されている。しかし、それはすでに何十年も昔の話だった。ワールドの最終作が出てから恐竜は大人の中ではほとんど常識でも子供にとってはあまり馴染みがない時代になっていたのだ。それはそうだ、ゲームもアニメも映画も恐竜は放送されていないのだ。そもそもの恐竜ブームはジュラシックパークが主なもので、それにしたって類似の恐竜映画がどれもこれもB級で数が少なかったのもありせいぜい数年くらいしかブームになっていないのだ。


 そのせいで恐竜は知っていてもその名前までは知らないのが世間では普通であった。


 「フム...。デハナカムラトイウショウネンヲオトリニスルノハダメダ。ソノチシキハコチラニトッテユウエキニナリウルカノウセイガアル。オトリハソノショウネンイガイデキメタマエ」


 そのセリフに動揺する生徒達。それはそうだ、俺が囮から外れれば他の人間が囮になる。それはつまり、自分がなるかもしれないわけで...そんな状態で決められるわけもなく無常にも一時間は過ぎていった。

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