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魔物専門掃除屋『D & C』の日常  作者: クロード
『You Only Live Once/It's AMAZING "BLUFF" SHOW!!』
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その6

 突然の魔物の出現に周囲の客や従業員は騒然とする。あの魔物はそれなりに弱いが、それでも丸腰の村人程度なら簡単に殺せるだろう。

 危険な場所と化した食堂から逃げ出そうとしたうちの誰かが叫ぶ————「扉が塞がれている!」「出られない!」


「ソフィア! 」


「大丈夫、もうやっとるよぉ」


 突然の事態にパニックを起こす彼らを尻目に、ソフィアが最初に行ったのは自分達を含むこの場にいる全員への魔術の防壁の展開。彼らの安全の確保だ。


「どれくらい持つ?」


「うーん……ちょっと多いから、3分くらいかねぇ……」


「分かった。なら、『1発』でケリ付けるわ!」


 だが、本当の目的はそれでは無い。


 リューナクはコートのポケットから1発の弾丸を取り出してライフルに装填する。

 それはトリックバレットと呼ばれる魔術を封じた特殊弾。技量ではどうしようもならない場面での狙撃を成功させるための所謂『必殺技』。

 単価が高い事もあり、持っているとちょっと危なくなるとすぐに使いそうなので危ない依頼以外は保管しておきたいが、いつぞやの無縁塚で用意していなかったが為に酷い目にあったので今は必ず数発分は懐に忍ばしている。


「FIRE!!」


 発砲の掛け声と共に放たれた弾丸は無軌道に飛ぶ魔物の1体に命中すると内部から『弾け』、そのまま他の3匹を周囲の物を巻き込んで切り刻んだ。

 今放たれたのはトリックバレット・カマイタチ。風の魔術を封じたそれは命中と同時に風の刃を周囲に撒き散らす弾丸。

 防壁の展開はどちらかといえば魔物からではなく、この風の刃から守るためのもの。


「カマイタチのお味はいかがかしら? 高級品だからじっくり味わいなさいな」


 バラバラになった死骸へ言い放ったリューナクへ拍手が降り注いだ。それは自らを助けてくれた彼女達への賛美か。


「素晴らしいよ、お姉さん方!」


 そんな賛美を掻き消したのはあの怪しい男の声。彼は(恐らく先程の煙に乗じて)いつのまにか姿を消していた。


「でもショーはまだ始まったばかりだ! さぁ、もっと楽しもう!」


 それでも声だけはしっかり聞こえる。魔物を召喚して無関係な人々を危険に晒したというのにやけに楽しそうな神経を逆撫でする楽しそうな声が。


「……ッ! アイツ何処に行った!」


「ボスちゃん、なんだか扉開いとらん?」


 ソフィアの声に扉の方を見る。開かないと誰が言っていたはずの扉は普通に空いていた。そこから普通に逃げたのか。

「あ、あれ? 空いてる!」「いつの間に!?」そう口々に聞こえてくる声の通り、さっきまでは閉まっていたはず。なのに、何故————いや。


「そうじゃない……もしかして、あの声そのものがアイツのブラフで扉は初めから開いていたの?」


 だとするならばあの男は客か従業員の1人として紛れ、「開かない」だの「出られない」だの叫び、この場が混乱に陥る様子を楽しんでいたのだろう。


「だとしたらいい趣味してるわ……一体どんな教育受けてきたのかしら」


「どうしよう、ボスちゃん。追いかける?」


 ソフィアの提案にリューナクは「そうしましょう」と言いそうになったが少し考える。そんな悪趣味な男が即座に現場から離れるか?

 実はまだ誰かのフリをしたままここに居たまま外に出て行ってように見せかけ、自分達が騙されて急いで出て行く姿をニヤニヤと眺めるつもりではないのか?

 それだけならまだいい。だが、その後に続くであろう『ショー』はどうだろう。いきなりこんな場所に魔物を召喚するような人間のイカれたショーが安全なはずがない。

 なら、ここにいる全員が出ていくのを待ってソフィアに探知魔術を使ってもらって誰もいないのを確認してから追いかけるべきか?いや、それは遅すぎる。外に出て行った場合は逃げられてしまう。なら、どうすれば……。


「……ソフィア。私は今から悪いことをするわ」


 少しの逡巡の後、彼女はソフィアに呟く。


「え、えっとぉ?」


 その言葉の意味を彼女が理解する前に、リューナクはライフルを天井に向けて発砲する。


「お、お前らァ! 殺され……あ、えっと、痛い目に会いたくなければ金目の物を出して消えろォォォ!!」


「ぼ、ボスちゃんっ!?」


 そして、その音に反応して視線を向けてきた全員に向けてたどたどしい脅しの言葉を言い放った。


 自分達を助けてくれた救世主が豹変し強盗に変わった事で一度は収まっていた混乱が再燃。

 開いた扉から逃げ出す者。言葉通り金目の物を撒き散らすように出してから逃げ出す者。恐怖のあまり腰が抜けてへたり込む者。喚く言葉は様々だが結果はその3種類。

 リューナクは逃げ出す者達には目もくれず、へたり込み動けない者達の元へ足音高く歩み寄り、額にライフルを突き付けて「か、金目の物がないなら……そ、早々に消えなっ!」と凄む。突き付けられた者達は生命の危機を感じたのか、恐怖も忘れて這うようにして食堂を出て行った。


「これで出禁確定ね。この食堂も、この村も」


 恐らく全員が去ってのを確認してからリューナクは頭を抱える。1番手早く追い出せる方法とはいえ、流石にコレはない! これじゃあ今回の仕事の報酬が貰えないどころか下手したらお尋ね者ではないか!


「平気よボスちゃん。認識阻害の魔術を掛けておいたから、ここから出たみーんなアタシ達の顔を思い出せんよ」


「え、ホントに!? ありがとソフィア! 愛してる!」


 引いてた血の気がソフィアの細かい心遣いにより回復する。なんて気の利く子なのだろうか。


「それよりもボスちゃん? どうしてこんな事したか説明してくれるかい?」


「人払いの為よ。ちょっと強引だけどね? それよりもこの酒場に人が残ってないか探知魔術使ってくれるかしら!」

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