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魔物専門掃除屋『D & C』の日常  作者: クロード
『You Only Live Once/It's AMAZING "BLUFF" SHOW!!』
33/38

その1

Side シオン & クリス

 掃除屋『D & C』は魔物関連の建造物の撤去を生業としているが、時には依頼物が魔物によって作られた物ではない場合もある。見た目が明らかに魔物っぽかったり、何故か耐魔術のコーティングがされていたりと様々だ。

 一見、素人目には分からないがこの道のエキスパートである——クリスとソフィアが見れば一発で魔物か人為的にされたかは分かる。彼女ら曰く「作りが甘い」「魔力を感じる」とのこと。

 ちなみにリューナクと、もちろんシオンには、その違いはよく分からない。素人だ。2年もやってるのに。


 とはいえ依頼が少なくて困っている掃除屋にとっては断る意味もないので、来た依頼は仮に魔物が作った物でなくともそこまで大きい物でなければ受ける事にしている。


「……またこれか」


 そして、今日も今日とてもそんな魔物とは関係ない建物の破壊にシオンとクリスは赴いていた。リューナクとソフィアは珍しく同時に入った別の現場に行ったため不在である。


「なーんか最近多いわよね。この変なの」


 彼らの目的である、芸術的価値がありそうなこの妙な形のオブジェは最近、この王都周辺に一晩にして現れる事件?が頻発していた。

 邪魔だし不気味なので壊して欲しいという依頼は今月でもう4回目。依頼が多いのは喜ばしいことなのだが何だか不思議だ。


 前々々回は無駄に大きい恐らくドラゴンらしき造形。翼は全て銃器で顔の代わりに大量のケーブルがいくつも生えているが、全体的なシルエットはまだドラゴンだ。辛うじて。

 前々回は大きい動物に見える造形。ただし顔が2つあり、足に至っては10本ある。

 前回は成人男性よりも少し大きい人型と思われる造形。しかし、上半身や手足が180度捩れていた。


 そして今回は完全な人の造形だ。一糸纏わぬ生まれたままの姿(流石に陰部は無い)で、指を前に出して、ドヤ顔ではあるがが至って普通の男性のオブジェだ。こういうものは大抵スタイルのいいものなのだが、2人の眼前のそれはかなりだらしない体型をしている。そんなものが王都の門のど真ん中に立っていた。誇らしげに。


「今回のはえらく普通だな。地味まである」


「殴りたい顔してるけどね」


 これでも結構異常なのだが、前のものが全て常軌を逸した異常さだったせいか、はたまた段々と段階を踏むように比較的普通な物にランクダウンしていったせいか、2人とも感覚が麻痺していたので特にツッコむ事なく作業を始めた。


 こう言った物は大概闇市に持って行ったら二足三文ではあるが売れるのだが、このオブジェはどの店でも何故か買取拒否を食らう。つまりゴミだ。

 しかもご丁寧に魔術耐性があるので物理破壊が必要なゴミだ。これらは石材で出来ているので

 、近場の既に使われなくなった採石場での爆破処理がラクだ。ピッケルでぶち壊しても良いが無駄にリアルなので通報されかねない。


 なので、これをそこまで運ばなくてはいけない。普通は結構イヤな物なのだが、やっぱり前の奴に比べれば小さくマシなので特に言及はない。せいぜい「めんどくさ」くらい。


「あー、やっぱコイツらかー……」


 持って来たに馬車に乗せるため、布を掛けようとしたシオンが呟く。


 そこにはオブジェの後頭部に当たる部分にスプレー缶で雑に描かれた『Y.O.L.O!』の文字があった。


 Y.O.L.O————You Only Live Once。人生は一度きり。それから転じて、だから楽しもう! という意味のスラング。

 最近の謎のオブジェには全てこの文字が何処かにスプレーで塗られていた。


「作者のサインなんかな、コレ?」


「だとしたら迷惑な奴ね。いや、私達に取っては金ヅルか?」


 少し悩んだが答えが出るはずも無く、布を被せて荷馬車に放り込む。その際にクリスはシオンに側から見ればそう見えないよう自然な動きで耳打ちをする。


「誰か見張ってる」


 そして、シオンの返事を待つ事なく、彼女は御者台に乗り込んだ。


「ほら、アンタも早く乗りなさい。置いてかれても良いなら別だけど」


「うぇいうぇいー」


 それに次いで彼も荷馬車に乗り込んだ。特に先程の耳打ちの内容を気にする事なく、布に巻かれたオブジェを椅子がわりにして。


「なー、クリスー。昨日さー、珍しく自分で紅茶入れたんだけどさー、色は出てたけど薄かったんよー、何でだと思う?」


 馬車に揺られて採石場に向かう最中、シオンがクリスに投げかける。


「何でって、アンタちゃんと蒸らした? ちゃんと出方を見て、待たないとそうなんのよ」


「へー、ちなみにどんくらい?」


「んー、アンタなら3分くらいかしら?」


 いつものやり取りのように見えるが、これはかつての『D & C』から使われてた掃除屋式の暗号。いわゆる隠語だ。

 紅茶の茶葉を対象に見なす事で、雑談スタイルで気付かれず情報を共有する。


 今回の場合はちゃんと出方を見て、待つ。つまり、先には動かず相手次第という事らしい。

 そして3分。それは人数を指していた。つまり、3人。人数的不利だが、クリス的には出方を伺ってもイケる戦力のようだ。


「つーか、普段からソフィアさんに頼りきりだからそんな簡単な事も出来ないのよバーカ」


「何だとこのヤロウ!!」


 ちなみにこの会話に意味はない。普段からソフィアに頼り切りのシオンへのちょっとした遊び心。お茶目なまな板である。


 そのまま特に何事も無く馬車は採石場にたどり着く。とはいえ、クリスの警戒はまだ解けていない。というより、途中からシオンですら誰かの視線に気付いていた。2人くらいは。


「さて、ちゃっちゃとボンして帰るわよ」


「うぇーい」


 2人は適当に採石場の広い所にオブジェを運び、適当に爆弾をセットする。まさにその時————、


「ちょっと待ったァァァ!!」


 誰かの雄叫びが採石場に轟いた。

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