#4
ところ変わって職員室。ジョンソンが自分の机に向かって、先程の生徒達の経歴や情報が載った顔写真付きの資料を見ていた。
そこにジョンソンの隣に座っていた女性教員が、
「スポーツ大会の男女混合マイルリレーのメンバーは決まったんですか?」
彼が持っている資料に目を向けて尋ねる。
「・・・・・・そうですね、400m走は過酷なレースでもありますから、スピードだけでなく持久力もある生徒でなくては」
真面目な表情を女性教員に向けるジョンソン。
「400m走って、そんなにキツイ競技なんですか?」
「ええ。・・・・・・レース後に倒れて呼吸困難に陥ったり、嘔吐するのも珍しくありません」
そして、より一層真剣な顔で、
「陸上競技で最もきつい種目だと思っています」
ジョンソンは彼女に続けた。
その頃、佑と歩美が晴翔をスカウトしに行っていた。最初は佑だけで晴翔を説得していたのだが、散々陸上部を馬鹿にされているだけだった。
「陸上なんて走るだけで、大した事ないじゃないか」
しかし、晴翔が陸上部への罵倒の途中、
「・・・・・・今の言葉、聞き捨てならないわね」
怒気をはらんだ声で歩美が晴翔の前に現れる。
「誰だよ、アンタ?」
「私は二年の千早歩美。陸上部のキャプテンよ。七隈君、あなたを陸上部にスカウトに来たわ」
そう言いながら、歩美は眼鏡を外した。更に美しさに磨きが掛かった歩美の顔を見た晴翔の脳天から足にかけて、一筋の稲妻が突き抜けた。
「あ・・・・・・貴女が、千早キャプテン? う、美しい・・・・・・」
どうやら晴翔は歩美の素顔に一目惚れしたようだ。
「・・・・・・え?」
「千早先輩、一目惚れしました! 俺と付き合って下さい!」
「え・・・・・・えぇぇぇぇ‼」
頭を下げながら右手を差し出す晴翔の突然の告白に驚きを隠せない歩美は、素っ頓狂な声を上げた。