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5話 作戦会議

「お早う御座います」

「お早う……あらクラシオン」

「はい」

「貴方、良い事あった?」

「え?」


 思いの外、顔色がいいらしい。

 笑顔で鼻歌までしてるとか。

 いやだわ、鼻歌まで歌っているなんて。

 十中八九、スプレのオープニングに間違いない。


「エヴィターとなんかあったの?」

「旦那様と……」


 その通りだ。

 この二人はラングではないけれど、テレビのクラシオンは大切な友人に、自身が戦士であることを明かしていた。

 ここは私も話をし、ラングという使命を負った戦士であることを伝えよう。


「少し長くなりますが、いいですか?」

「? ええ」

「ええ、もちろん」


 講義後、不思議そうに首を傾げる二人を、学園中庭に連れて、お茶を片手に話すことにした。

 一話から話すわけにはいかないから、先生の時と同じく粗筋を、そこに少し細かい話を加える形にして。


「魔法戦士……魔術師ではなくて? 魔法剣士でもなくて?」

「ええ、魔法戦士です」

「スプレ、スプリミ……」

「はい、二期に渡り放映されました。映画にもなって、シリーズの中でも人気で!」

「癒しの戦士、クラシオン、ね……名前同じなの」

「私ですから」


 神妙な顔をして考えに考えた二人は、目を合わせて、その後肩の力を抜いた。


「やめね、やめ」

「考えすぎても仕方ないわ」

「え……」


 どきりとするも、次の言葉に私は心底安心した。


「クラシオンが言うんだもの。本当のことでしょう?」

「!」

「貴方が嘘つくわけない。てことは転生前の、その前世の記憶ってのも、本当なんでしょうね」

「二人とも!」


 仕方のない事とはいえ、旦那様に冷遇されたのが、気持ち的に割と響いていたので、二人の反応が凄く嬉しかった。

 信じてもらえた。これだけで、こんなにも心がはねるなんて。


「てかエヴィターが敵って笑える」

「それは洗脳されてるだけで」

「いいじゃない、あんたたち結婚してから、ずっとすれ違いでしょ?」

「え、ええ…」


 二人は私と旦那様の関係も良く知っている。

 その上で、二人はこれは良いきっかけになると言った。


「いい機会だと思うわ。話し合うことに繋げられるもの」

「それにリンらしいし」

「私?」

「そうよ。小さい頃から破天荒。今の品行方正ぶりなんてどこへやら、中庭で跳び蹴りの練習してた令嬢なんて、貴方ぐらいよ」

「ああ……」


 懐かしい話だ。

 小さい頃は外で遊ぶのが好きで、魔法を使っては走り回っていた。

 もしかしたら私はその時から、自身が戦士だとわかっていたのかもしれない。

 一人、修業をしてただなんて。

 けれど、その積み重ねこそ、戦士として戦うに必要な要素だわ。


「で? 仲間でも探すの?」

「いいえ、すぐにでも旦那様を救うわ」

「まあ確かに、どこにいるかわからない味方探すのも大変だもんね」

「戦って救うのよね?」

「ええ、それがラングにおける助け方で……」


 そうとなれば、早い方がよいかしら?

 旦那様の洗脳は確定的なことだったけれど、理性も少し残るのが見えた。

 その僅かに見える理性がある今こそが、チャンスというものでは?

 立ち上がる。

 二人が不思議そうに見上げた。


「今から旦那様の元へ行くわ!」

「今?」

「まあもう、講義も実技もないから丁度いいけど」

「鉄は熱いうちに打てと言います! 今から王城へ! すぐに!」


 なら私達もと二人が立ち上がった。


「私は帰る先だし」

「私は俄然面白そうだから」


 笑う二人。優しいのね。私のことを考えて、そう言ってくれている。

 なら、私は使命の通り、旦那様を救う第一歩を踏み出すわ。


「行きましょう」


 三人揃って馬車に乗り込んだ。

 目的地は勿論、王城。


「この時間なら、騎士は王城敷地内の訓練場に集まってる頃だわ」

「ではそちらに旦那様が」

「始終いるわけではないでしょうけど、ここからせめるのがいいでしょうね。私が定期的な視察を理由に行くには丁度いいし」


 騎士団長で現役魔法剣士である旦那様は、内務の仕事もありつつ、団員の指示や管理も当然含まれている。

 特段大きな戦争はないものの、軍力を保持してる以上、その質を高め続けるのが仕事。


「クラメント公爵への取次ぎは、私から申し出れば問題はないでしょう」

「ありがとう、カミラ」

「騎士団員には退出して頂く?」

「ええ」


 カミラが王城内の騎士団員訓練場を急遽視察する形をとって、そこから私が旦那様に面会の申し入れをする。

 そこで旦那様と対峙し、戦って癒すという流れだ。


「戦うって言うけど、リンの手足でやれるの?」

「ええ、身体強化の魔法を使うの」

「エヴィターと戦うねえ」

「アンヘリカ、クラシオンは学園で実技トップよ」

「まあそうなんだけど」


 ありがたいことに次席を頂いている。

 実技に関しては割と自信もあるし、なにより前世の記憶はばっちり入ってて、後はアニメ通りに動くだけ。

 そう、戦い方は全部スプレとスプリミが教えてくれている。


「アンヘリカ、旦那様と戦いが終わったら、光を当ててくれないかしら?」


 紙に簡単に書いて伝えると、アンヘリカはうんうん頷いて快諾してくれた。


「構わないわよ。クラシオンに当てればいいの?」

「ええ、私に」


 馬車の中、三人集まって作戦会議だ。

 王族御用達の馬車を使わせてもらうのは、立場としてどうかという所もあるのだけど、そこはやはりカミラの好意。


「じゃ、作戦通りで」

「はい」

「ええ」

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。



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