28.邂逅
大変、お待たせいたしました。
それから5日後。
ルクスは捜索部隊の出発式に参加するため、王宮前の広場に来ていた。
「あ、ルクス様~~!!」
ルクスが王宮前広場に着くと、エンラが駆け寄ってきた。
白いコートに白いブーツの対氷龍装備が陽光に映えてまぶしく見える。
「嬉しいです、ルクス様と同じ部隊になれて!」
と、頬を上気させているエンラ。
「あぁ。ユニバル様が、そう図らってくださったんだ」
ルクスは自分の腕章を眺めた。そこには炎を吐く獏が刺しゅうされている。
それは“先行部隊”のマークだ。
公募によって集められた冒険者や評議会に所属する騎士が中心となっていて、斥候を行うのが主な任務だ。
火族が中心の本隊とは離れてしまうが、炎を使えないルクスにとっては、こちらにいるほうが気楽だった。
(何より、先行部隊にいれば、義姉上に一秒でも早く会えるかもしれない!)
そう思うと、知らず心が躍った。
「そろそろ、出発式が始まりそうッスね」
とエンラが言ったとき、
ズガアァァアアン!
突然何かが撃ち抜かれる音がして、大きく地面も揺れた。
「な、なんスか!?」
叫ぶエンラを、ルクスは覆いかぶさるようにして庇う。
そうしながら音の方角を見ると、王城の尖塔の一つが撃ち砕かれているのが見えた。
「攻撃?どこからだ!?」
すると青い光が一筋、空を切り裂いて再び王城を貫いた。
そちらの方角に目を凝らすと、何か巨大な黒い塊が宙に浮かびながら、こちらに飛んでくるのがわかった。
(あれが攻撃してきているのか!)
ルクスは剣を抜くとそちらへと走り出した。
「あ、待ってくださいっス!」
エンラが慌ててその後を追いかける。
逃げ惑う人々をかき分けて、ルクスは城の中へと駆け込んだ。
敵は王族を狙っていると考えられたからだ。
玉座の間の入口にたどり着くと、玉座の後ろの屋根が轟音とともに崩れ始めていた。
「陛下、ご無事ですか!」
ルクスが声を掛ける間もなく、王や王妃、その臣下たちは這うようにして入口の方へと逃げてくるところだった。
「た、助けてくれ!」
ルクスに縋りついてきた王に、
「早くお逃げください。ここは私が敵を食い止めます!」
と言い残すと、ルクスは広間に飛び込んだ。
ちょうど、崩れた屋根の穴から、例の黒い塊がゆっくりと降りてくるところだった。
それは巨人だった。
黒くごつごつとした表皮は金属のような鈍い光を放ち、手足は短く太い。
隆々とした上半身には小山のような頭部が乗っていて、大きな口からは氷の牙が覗き、赤黒く濁った二つの眼玉からは異様な光が放たれている。
その巨人の肩には一人の女が座っていた。
ほっそりとした身体は、全身が青い光を放つ鱗のようなものに覆われているが、太腿や肩から胸元にかけては大胆に青白い肌が覗いている。
長い銀髪を揺らし、青白く細い顔には大きな仮面をつけていて、その向こうの瞳は妖しく輝いていた。
(こいつらも古代氷龍だろうか?)
そう思いながら剣を構えるルクスの姿を目にとめると、謎の女は途端に笑みを浮かべた。
そして、こう言った。
「あら、ルクス!久しぶりね!」
「……え?」
ルクスは自分の耳を疑った。
(今の声は?)
聞き覚えのある、忘れるはずのない懐かしい声。
ルクスは途端に背筋が凍った。
「そんな……!」
そんなはずはない、と言いたかった。
だが舌は張り付いたように動かなかった。
ルクスの反応を見た女は悪戯っぽく笑うと、自分の仮面に手をかけて外した。
「!!」
目の前の光景が信じられなかった。
そこにいたのは、ルクスの命の恩人。
ルクスが全てを投げうっても捜そうと誓った大切な人。
「ちょっと見ない間に大きくなったわね、ルクス」
「あ、義姉上……!」
義弟の声に、リューズ=ハーベルライトは濃いルージュをひいた唇を開いて笑った。




