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18.リューズの消息

 ローブの男を倒したあと。

 ルクスたちは屋敷の中に戻っていた。

 

 一つには、バジェリたちの介抱をするため。

 そしてもう一つには、サラの手がかりを探すためだ。


 スピルカやリトミはともかく、バジェリ、シュイウォーといった大男を屋敷のベッドに移すのは、3人がかりでも骨が折れた。


「じゃあ、ギルドに行ってきますね!」


 モスタはそう言って魔法陣に乗った。

 彼は、ギルドから医療スタッフを連れてくることになっている。


 特段、風の狼笛(ろうてき)のメンバーたちはケガをしているわけではなかったが、意識を封じられ、操られていた影響がどう精神や体に影響しているかは分からないため、念のための検査が必要だと思われた。


 バジェリたちのそばにいたい、というエンラを置いて、ルクスはサラとルシーラを探すことにした。


 もう一度地下室に降りてみる。

 ここに来たときは気づかなかったが、埃をかぶった家具のほかに、いろいろなものがあるのが分かった。


 見たこともないような動物の標本。

 どこかの遺跡から掘り出されたらしい彫像。

 大小の歯車が組み合わさった正体不明の機械。


 これらはガレンが集めたものなのだろうか。


 奴は、ユニバルが言っていたような、珍しいものを集めるためには金に糸目をつけない、という類の輩かもしれない。


 そのとき、ドスドスと激しい足音が響いてきた。


「待つっス!待つッスよ、シュイウォー!!」


 エンラの声も聞こえてくる。

 どうやら、シュイウォーを引き留めようとしているらしい。


 間もなく、階段を踏み抜きそうな勢いで、巨漢が下りてきた。

 シュイウォーは、頭に包帯を巻いたままこちらに走ってくる。


 どうやら、ルクスの背後にある魔法陣を使って、外へと行きたいようだ。


「そこをどいてくだされっ!」


 そう大声で言う大男を相手に、ルクスは足だけを狼に変化させた。


「!」

 

 シュイウォーが驚く間もなく、ルクスは狼の脚力を活かして、一瞬で相手の懐に入り、そのみぞおちに拳を入れていた。


「ぐっ……」


 途端に力を失った巨体は地下室の床に転がった。


「ふぅ~やれやれ」


 そこにエンラがやってくる。


「一応、止めておいたよ」


とルクスが言うと、エンラはその場に転がるシュイウォーを見て目を円くしたが、


「あぁ、ルクス様。申し訳ないっス」


 エンラは苦笑しながら大男の傍に寄った。


 

「さっき目が覚めて、『自分は何をしていた?』ってアタシに聞くので、簡単に事情を説明していたら、『なんということか!』って言って顔を青ざめさせながら、部屋を出ていこうとして……ともかく、助かったッス」


「どこへ行こうとしてたんだろう?」


「恐らく、ユニバル様のところッスね」


「!」


「操られていたとはいえ、自分のしでかしたことの重大さに耐えられなくなって出頭しようとしたんスね」


「なるほど……まぁ、気持ちは分かるけどね」


 そのとき、二人の上から別の声が聞こえた。


「ユニバル様に謝りたいのは俺も同じです」

 

 そちらを見ると、バジェリがこちらに降りてこようとしていた。


「バジェリ!」


 階段を駆け下りると、バジェリはルクスの足元に駆け寄った。


「ルクス=ハーベルライト様。まずは、この度の狼藉、心よりお詫び申し上げます!」


 そう言って平伏する男に、ルクスは慌てた。


「あ、いえ……」


 バジェリは顔を上げると、じっとルクスの顔を見た。


「あなた様の義姉(あね)上、リューズ様にも大変お世話になり、またハーベルライト家の方に助けていただくとは……!」


 その言葉に、ルクスは思わず身を乗り出した。


「義姉上のことを知っているのですか?」


 はい、とバジェリは頷いた。


「素敵な方ですね。我ら冒険者に対しても温かく接してくださって。あの夜も、自ら氷龍(ひょうりゅう)の追撃隊に志願されたのです」


 ルクスは沈痛な表情を浮かべる。


「そうみたいですね。でも、それきり行方不明になってしまって……」


 すると、バジェリは


「もしかしたら、ですが。私はリューズ様は生きておいでだと思います」


と言った。


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