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王女様の200歳の誕生日  作者: 木原式部
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 ジョニーは20歳で魔法学校を卒業した。

 本来なら22歳で卒業なのだが、あまりにも優秀だったため、20歳で全ての学科を終わらせてしまったのだった。

 ライラも卒業式に出席したが、20歳のジョニーはすっかり大人の男性へと変わってしまっていた。

 もちろん、初めて会った時の面影は残っているが、子どもっぽさがすっかり抜けて、美しさが洗練されたような気がする。

 来賓席で式の見ていたライラは、威厳を保った表情をしながら、ジョニーの姿を目で追ってしまっていた。

 そして、ため息をついた。

 ジョニーが魔法学校を卒業してしまえば、どんなに学校を訪れてもジョニーにはもう会えない。

 もしかすると、自分はもうジョニーに二度と会えなくなるかもしれない……。



 でも、ライラがジョニーと会える日は、意外と早く訪れた。

 ジョニーが優秀だったため、魔法学校を卒業するとすぐにヴィンデ王国の専属の魔法使いとして推薦されたのだった。

 国専属の魔法使いとなれば「Master」(マスター)の称号を与えられ、王国の行事や儀式に呼ばれることも多くなる。

ジョニーと会えるだけでなく、直接会話できる機会も出て来るかもしれない。

 ライラは近いうちにまたジョニーに会えるかと思うと、何かしらの国の行事や儀式がやってくるのが楽しみになった。

(――でも、会えたとしても、あの時みたいに二人きりで話したりリンゴを食べたりなんてできないけど)

 ライラはそう思うと、またため息をつくのだった。


 自分は王女なのだから、それなりに権力もある。ジョニーを城に呼びつけて会うこともできなくない。

 別に王族の人間と一般市民が会ったり話したりするのは禁じられていないし、もっと言えば付き合ったり結婚したりすることもできる。

 でも、自分が王女としてジョニーを誘えば、例え自分に興味がなくても誘いに乗って来ざるを得ないだろう。

 ライラはそれがいやだった。

 ライラはあくまでも、ジョニーとは対等な立場で会ったり会話したりしたかった。

 自分がジョニーを探しに行って、偶然木の上にいたジョニーと遭遇した時のように……。

 神さまがいるなら、いつかまた、あんな機会を与えてはくれないのだろうか、とライラは時々空を見上げては考えてみるのだった。




 その後、ライラは国の行事や儀式でジョニーと会うことはあっても、話すことはなかった。

 王女であるライラは国の儀式や行事の時には、父親の王の玉座の近くにたたずんでいる。

 ジョニーはいくら国専属の魔法使いとは言え、玉座よりも遠い場所にいる。

そして、たくさんの人の中に紛れた状態でいる。

 ライラはそんなたくさんの中に紛れた状態でも、なぜか一目でジョニーがどこにいるのかすぐにわかるのだった。

 そして、儀式や行事に集中しなければ……と思いながら無意識にジョニーの方ばかり見てしまう。


 ライラはふと、このまま遠い場所からジョニーが年老いて、やがて寿命が尽きてしまうのを見ていなくてはいけないのだろうか、と思った。

 そして、今までの人生で一度も感じたことがないような虚無感に襲われるのだった。

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