第3節 暗号少女は百合が好き
「思ってた以上に騒がしいのね」
「んー、まぁ、リスト的には想定内かな。お店の中はゲームだけって考えたらこんなもんだと思うんですし」
2人は無事、ゲームセンターに到着した。ピカピカと光る画面、ガヤガヤ響くゲームの音……昔と変わらぬゲームセンターの姿がそこにあった。
「流石に普段の背丈だと目立つからちょっと体格変更したけど、怪しまれないかな?」
「正直、必要ないと思うけど……ドールのことなんて世間一般的には常識なんだし」
「けど、ゲームやるにはある程度の身長がないと困る」
2人は小学生くらいの体格から高校生くらいの体格に変わっていた。服に関しては身体に合わせて形を変える素材(ハカセの発明のひとつ。一生着られるがコンセプト)で作られているため体格に合わせた大きさに変わっていた。
「で、リストは何やるの?」
「そうだねー……とりあえずクイズゲーかな」
「クイズ……?」
周りを見渡してある程度の見当をつけたリストはてくてくとそちらへと歩いていく。サイファはその後ろを着いて歩く。
はっきり言えばサイファもインドア派ではあるのだが、文学少女的側面が強い。 もちろん、誘われればゲームなどもするが、他のドールとの関わりに積極的に参加する方ではなかったし、基本は一人で出来る読書を好む傾向があった。
それだけではなく、自分で文章をしたためたりもするのだが、それはサイファだけの秘密である……あ、これ、私、後で何言われるか分からないやつだ……消しとこうかな?
「これこれ」
「へぇ……色んなジャンルのクイズに挑戦して高得点を目指すゲーム、ね。対戦モードもあるのね」
「ん? 対戦やってみる?」
「いいわよ、やりましょ。博識なリストに勝てるかは分からないけど」
「別に博識でもないん。 ただ他のドールより早く産まれてその分知識を蓄えてるだけだから普通なんですし」
「多分、リスト並みの知識を今後持つようになるのって色んな文献読み漁ってるクロニくらいなもんよ」
「そうかなー? リストはそうは思わないけど…… まぁ、リストもカバーできないジャンルとかあるから、文学とかそこまで詳しくないし、ライフスタイルとかよく分からないんですし」
「とりあえず、始めましょ」
「ん」
SADを筐体にかざすとエントリー画面へと移行した。 SADはICカード的な扱いもできるし、ほとんど完全キャッシュレスへと移行している現代のお財布としても機能していた。
リストは自宅でこのゲームをプレイしていたらしく、既にデータが存在していたが、無論サイファは初めてのプレイなのでデータの登録画面へと切り替わった。
リストのプレイヤーネームを確認すると「ハマチ」と表示されていた。
「なんでハマチなのよ……」
「魚の名前がマイブームだったん」
「そうなのね……?」
少し考えた末にリリィと打ち込んだ。
「百合……?」
「深い意味は無いわ、白が好きなだけよ」
「ん……? つまり、サイファはパネルが好きなの?」
「何でそうなるのよ!」
「や、パネルって白だし」
「そういう意味じゃないわよ……」
パネルとは登録番号4番のパネルの事である。髪が白くだらっとした感じの少女だが基本的には喋らず、SADに文字を表示して会話をする。 次回のお話のメインとなるドールなので詳しくはその時に。
「まぁ、登録も終わったし始めよっか」
「ええ、勝負よ」
こうしてリストとサイファの勝負が始まった。