第2節 編表少女は外の遊びに憧れる
「今日、平日だし、たまの不良行為もありだと思うん」
「まぁ、私たちに学校に行く義務もないから確かにそれはできるけど」
そもそも現状、学校も最低限のマナーや集団行動等を学ぶ場所としての機能が大きく、基本的にはインプット教育のようなデータ系の教育が主流である。
「だから、どこか行こ」
「どこかって言っても、あなた、人混み無理でしょ?」
「…………あれは恐怖の対象」
リストは人混みが苦手である。人混みというか、沢山人がいる場所は苦手で、所謂人に酔うのである。
それ故に、リストはあまり外での遊びを行わず、基本はインドアな趣味をこなしている。 とは言っても、彼女はドールの中でもかなり博識な部類に入る。
最初に生まれたドールということで、その後に生まれたドール達の成長過程などをハカセの隣で見てきたり、ハカセ自身の知識を自分の知識として吸収したりと他のドールよりもそういった経験が豊富である。
だから引きこもりという訳では無い。サイファを迎えに行く時くらいは仕方なく出ている、と言った感じなだけである。
「ならほんとに人の少ないところを選ばないとね」
「んと、ゲームセンターとか」
「あぁ、あそこは確かに人は少ないかもね」
ゲームセンターは、はっきり言えばレトロゲームが置いてある場所となる。VR技術の発展により、フルダイブマシーンの小型化が進んだ昨今においてゲームセンターまで足を運ぶ理由はほとんど無くなった。
つまり、ゲームセンターに置いてあるようなゲームは家に居ながらでもプレイ可能な時代である。 そうなると、ゲームセンターに行く人は必然的に少なくなる。
とも平日となればほとんど人はいない。そしてインドア趣味のリストとしてもゲームセンターは遊び場としては良い選択肢である。
「ここから近くのゲームセンターを探しましょ」
「検索。近くのゲームセンター」
空中にデジタル画面が表示され、周辺の地図と近くのゲームセンターの情報が表示される。これはSADの賜物であった。
小型デバイス「SAD (Smart Advance Deviceの略)」固定式画面を排斥し、空中へと映し出すことで様々な情報を広く表示することを可能としたデバイスである。AR機能の延長にあり、画面の操作は空中にある画面に触れることで出来る。
「あー、そんな歩かないね」
「そうね……じゃあ、行きましょ」
「……待って」
「何よ」
歩き始めたサイファを止めるリスト。いつの間にか雨は上がっていて傘はもう必要が無い。 リストは手を差し出した。
「……?」
「手、繋ご。はぐれちゃわないように」
「……あぁ、そういうこと。分かったわ」
サイファはその手を優しく取った。リストはその手を握り返し、笑う。 そのまま2人はゲームセンターへと向かって歩き出したのだった。