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人形(ドール)たちの成長記録(クロニクルレコード)  作者: 渡口七海
最終章 ハカセレコ編 灰色ノスタルジックメモリー!
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第2節 変化しない日々

研究者になったからと言って、自分のしたい研究がすぐできるわけでもなかった。


知識はあっても、結局は今まで世の中に出回ってきたものばかり。


研究している対象も多少は選べるとはいえ……新人の研究者が選り好みなどしていられない。


きっと何かに使えるはず、そう思って色々な研究に打ち込んだ。


そして俺は気がついたら様々な界隈へのパイプを獲得していた。


案外、努力というものはどこかしらで誰かが見てくれている……そういうことかもしれない。


そして、最終的に俺が行き着いた先は「遺伝子工学」の分野の研究所だった。



「おーい、ハカセー」


「うん?」


パソコンでデータ打ちをしていた俺は顔を上げて声の主を見る。


俺に声を掛けたのは東堂佐助(とうどうさすけ)。大学時代から、微妙に縁のある男だった。


「メシにしようぜ。それともまだ一段落しねぇ?」


「いや、別に切り上げられるから問題ない。どうせデータ打ちなんていつでも出来るしな」


「そうか、じゃあ、先に食堂で待ってるわ」


俺は席から立ち上がり白衣を椅子にかけた。


俺が今やってる研究は脳関係の遺伝子を使って患部不明でも自動修復するような細胞を作る研究だった。


結果としてはまだかなり微妙ではある。


というか、一応成功はしてるんだが、外傷を治す程度のことしか出来ない……つまるところ、内臓までは自動修復の手が回らないってことだ。


とは言っても、これを応用すれば老化した見た目を若い頃へと戻すことも可能だろう。


なんなら、ある程度なら年齢の詐称は可能かもしれない。


まぁ、臨床実験まではこぎ着けていないので、机上の空論ではあるんだが。


そんなことを考えていたら食堂に着いた。


「おーい、こっちだ」


「おう」


昼時をすぎて人がまばらになっている食堂で佐助を見つけるのは簡単だった。


席につき、注文を済ませるとそれほど待つことなく料理が到着した。


コスト削減のためこの辺りは全て自動化されているので、所謂社員食堂的な半セルフサービスのようなカウンターはない。


席につき、注文をして食べ終えたら出ていけば勝手に片付けされる。


「で、どうよ、研究の方は」


「ん? んー、まぁ、そこそこって感じか。進展はないんだけどな」


俺は注文したパスタを食べながら答える。


実際、研究は順調とは言い難いが、少しずつ前へと進んでいた。


「けど、劇的な進展がない限りはなぁ」


「妹さんのため……だっけ?」


「……ああ」


眠ったままの妹。


それを治すための技術を開発する為だけに研究を続けてきた。


努力は惜しまないし、出来る限りのことはしてきたが、それでも結果は全く奮わない。


歯がゆい状況ではある。


が、それをどうにか出来るような劇的な変化は今のところは何も起こる気配は無いのだった。


「……戻るわ」


「了解、まぁ、なんだ……頑張りすぎて倒れたりすんなよ」


「今のところ倒れたことは無いから安心してくれ」


「あんまり安心できねぇ返答だなぁ……」


苦笑いする佐助を置いて食堂を後にした。

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