第3節 図式少女は登壇する
まーたあいだあいたやーつ
「ヒーローショー?」
唐突にマネージャーに呼び出されたグラフは訝しげな表情でマネージャーに聞き返した。
「そうですね、今度開園されるテーマパークで、開演記念イベントのひとつとして、正義の少女グラフのショーをやりたいと、スポンサーの方から……」
「ふぅん…… 舞台の方にはAR装置は完備されてるの?」
あの特撮の売りはAR装置を全面に押し出した直撮りなので、AR装置なしでは正直迫力が足りない。しかも、グラフの攻撃に耐えられる人がドール以外に存在しない……というか、ドールでも耐えられるか分からない。
なので、グラフが全力で演技するにはAR装置は不可欠なのだ。
「そこは安心してください、なんなら最新機種を完全装備らしいです」
「そ、なら受けるわ。シグにも話は通してるの?」
「いえ、それが、何故か連絡がつかなくて…… 」
「えぇ……そこはしっかりしなさいよ、マネージャー……」
「今日中にはお話は聞いてもらうつもりです」
真面目さが服を着て歩いてるようなマネージャーだから、融通が効く方ではない。グラフははぁ……と溜息をつきつつ立ち上がった。
「今日はそれだけなら帰るわよ、シグにはあたしから話通しとくから、SADでイベント会場の情報とか、日程とかその他諸々、送っといてちょうだい」
「あっ は、はい、了解です。お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様」
ペコペコと頭を下げるマネージャーをそのまま置いて、グラフは帰路へと着くのだった。
帰ってきたグラフは自分の部屋へと直行する。
「……帰ったか、盟友」
そしてそんなグラフをシグが出迎えた。まだ昼過ぎだと言うのに何故か部屋の電気が消えていて、カーテンが締め切られている。
グラフはとりあえず、電気をつけてシグに詰寄る。
「あんたね、マネの連絡くらい取りなさいよ」
「嫌よ、日中に外に出ると身体が灰になってしまうもの」
「いや、外に出ろって言ってるんじゃないわよ、連絡くらい取りなさいって言ってるの」
「……あの眷属、私は苦手なのよ」
「だからって無視しない。仕事の打ち合わせとかあるんだから。今日もそうだったし」
「……次の標的は?」
「ヒーローショーよ」
帰っている途中にマネージャーから届いていたデータを表示させる。
さっきグラフが受けた説明が事細かに書かれている文章データと、会場の画像データ、配置されてる設備やらなんやら、色々な物が展開されていく。
「ふ、屋外ステージか、心が踊る」
「あんた、日に当たると灰になるんじゃないの?」
「……我は偉大なる吸血鬼の祖。その程度で灰にはならない」
「…………そう」
設定が若干適当になっているシグを冷ややかな目で見つつ、企画書などに目を通していく。
割といつもの特撮の撮影とやることは変わらない、リテイクがないだけだ。
ということは、かなり練習して身体に動きなんかを叩き込まなければいけない。
グラフは気合いを入れ直すのだった。
そして準備の期間は一瞬で過ぎ去っていき…………ヒーローショーの当日になった。
「…………ふぅ」
「緊張しているの?」
「まぁ、それなりにね。撮影スタッフとは違う、生のお客さんに目の前で見られるってかなりドキドキするわ」
「……ふ、そんな緊張もグラフにとっては刺激だろう」
「んー、実際そうかもね。というか、シグの方こそ大丈夫? 足、かなり震えてるけど」
「だ、大丈夫に決まっているだろう」
そう言ったシグの足はかなりガクガク震えていた。
「そ。 とりあえず深呼吸を何回か繰り返しておきなさいよ、うん」
「言われるまでもない」
「……じゃ、あたしは先に出るわ。今日は頑張りましょ」
「あぁ……」
グラフはきっと顔を引き締めるとそのまま舞台へと出ていった。




