第2節 時報少女は紅茶が好き
「ふぅ、落ち着きますねぇ……」
まったりとした昼下がり、獣耳少女タイムは1人、研究所の休憩室でお茶を楽しんでいた。
ドールとして働き始めてまだ一ヶ月程度の彼女はそこまで仕事が忙しいという訳でもなく、割とオフも多い。
そのため、おやつを食べつつ紅茶でブレイクタイムを楽しむ姿を目撃することは少なくなかった。
今日のおやつはスコーンである。なんともお茶似合う素晴らしい食べ物だ、そんなことを思いながらタイムは現在時を確認する。15時23分08秒……時報もしばらくなく、ゆっくりとできる時間がしばらく続きそうだ…………と思った矢先、パタパタと、休憩室へと入ってくる影があった。
「うん……? こんな時間にここに人が来るのは少し珍しいですね。誰でしょうか?」
「あ……あのっ」
そう、ご想像の通り、そこに現れたのはプラネであった。 が、なんというか、服は乱れ、髪はボサボサで、明らかに今起きました、といった様子のプラネは第一声を発してから、言葉を探すように目を忙しなく動かしている。
「え、えっと……貴方は?」
「あ、ぷ、プラネです…… その、タイム、です、よね?」
「え? はい、タイムですよ。最近来たばかりなので、まだ皆さんのことを全員覚えられてなくて、申し訳ないですね…… で、プラネさん、なんの用事でしょうか?」
その問いかけに、プラネはまた押し黙ってしまう。朝受けた刺激のせいか、いつものプラネ状態であるプラネは、正直、タイムを誘う言葉が全くと言っていいほど口から出てこなかった。
頭の中ではいくつかの候補があり、それを口に出すだけなのだが、その「口に出すだけ」が彼女にとってはとてもハードルが高く、焦りからか額に汗が滲んでいた。
「ぷ、プラネさん……?」
「ひっ あ、え、えっと……こ、こ…………こん…………」
「こん……?」
「こん……こんきつねはかわいいですねー!」
「え?」
謎のセリフを叫ぶプラネにタイムは動揺を通り越して固まってしまった。 そして同時に、謎のセリフを発してしまったプラネもまた、その場に固まってしまった。
気まずいと言うよりはどちらも動けないというもうどうしようも無い空気が休憩室に流れる。
「……き、きつね、かわ……いいです、よね?」
プラネがやっとの思いで絞り出したセリフがこれである。
タイムは混乱しつつもなんとか質問を飲み込みつつ、少し思案する。
これは多分、本当に聞きたいことではないな、ということ……ならば、どうすればこの子から質問を引き出せるのか……と……
「あ、はい、狐……たしかに可愛いですよね。私の耳型の髪も実は狐の耳を参考にしてまして……」
「そ、そうなんですか!」
そのまままた黙ってしまう2人。話が進まないまま無駄な時間が過ぎていく。
「あ、その、とりあえず座ります? 今、ちょうどお茶してまして」
「え? あ、えっと……その、ご迷惑で、無ければ……」
なんとかお茶の席に誘い、プラネから要件を聞き出すための舞台を整えることに成功したタイム。
一方で、どうやって星を見に行くのに誘うかを思案するプラネ。
2人のお茶会は、プラネが頑張ればすぐに解決する形で幕を開いた。




