第3節 板面少女は計り知れない
『大分古い型の音楽プレイヤー。それ、とりあえず使ってみて』
「う、うん……」
ボードがおっかなびっくりプレイヤーを手に取り全体を見回す。大きめの液晶画面、ボタン等は表面には見当たらないが、側面には小さなボタンが何個か着いていた。
『弄り方は……そうだね、適当にボタン押してもいいよ、壊れたりしないし』
「そう、なの?」
ボードはとりあえず側面にあるボタンを何個か押してみた。すると画面がぱっと明るくなる。
「わっ が、画面が着いたわ!」
『そうそう。いいね、そこのね、ちょっと大きいボタンが電源ボタンね。分かる?』
「こ、これ……かしら?」
ボードが指さしたボタンを見てこくんと頷くパネル。
「つまり、私はさっき電源を入れたってこと?」
『ううん、スリープを解除しただけ。 簡単に説明すると……うーん、あ、コンロかな。私がガス栓開けておいたから、ボードが火をつけたっていえば分かる?』
「ふむふむ。つまり、元栓を閉めるのと開けるのはまたやり方が違うのね?」
『そ。 電源ボタンを軽く押したままにしてみて』
ボードが言われた通りに電源ボタンを長押しすると画面に電源を切りますか?と表示が出てきた。
「む?」
『それ、SADの画面と同じようにはいにタップ……触ってみて』
「うん」
ボードがはいに触れると円を描いた線が出てきて画面がふっと暗転した。
「き、消えたわ!」
『おっけー。じゃあ、次は電源つけてみよ。さっきと同じように長押しして』
「は、はい」
ボードがボタンを長押しすると製品メーカーロゴが画面に表示され注意事項などが表示されていく。
「わっ わっ な、何か出たわ!」
『ん、大丈夫。普通の画面だから』
「そ、そ、そ、そうなの?」
わたわたとしているボードを嗜めるパネル。登録番号的な話をすればパネルの方が姉なのでこの構図は正解なのだが、普段のことを考えるとボードの方が姉っぽいのでちょっと珍しい気もする。
「あ、最初に見た画面になったわ」
『じゃあ、それ、指で触れてそのまま上にしゅってやってみて』
「えい」
ボードが操作すると端末のホーム画面が表示された。昔のスマホのような感じである。
スマートフォンに関しては説明を省きます。今でも使ってる人は少数だけどいるみたい。特に高齢者とか。
『とりあえず、その、音符のアイコン触ってみて』
「これ? あ、再生ボタンとかがあるから、ここで音楽が聴けるのね。ここを、押せばいいのかしら」
再生ボタンをボードが押しても音楽は流れなかった。
「あ、あれ? 音楽、流れないわ」
『さて、なんでだろうね?』
クスクスとパネルが笑う。 涙目になるボード、だが端末を色々と見てふと気がつく。
「あれ? これ、矢印がついてる……」
ボードが発見したのは電源ボタンの近くにあるボタンである。 じーっとそれを見つめていたボードは意を決して上向きの矢印ボタンを長押しした。
『お。正解』
「やっぱり、これが音量を操作する……ぼたん?だったのね」
『そうそう。流石は私の妹、飲み込みが早い』
「そ、そうかしら? ふふ、パネルに言われるとなんだか照れちゃうわ」
『ん。じゃあ、それはあげるね』
「えっ い、いや、でも……」
『どうせ使ってなかったし、大丈夫。気にしないで。普段お世話してもらってるお礼みたいなもの』
「でも……」
「いいからもらって」
凛とした声がボードの耳に届いた。真剣な顔で見つめているパネルの声である。
その声で姉が一歩も譲る気がないのを察したボードはにこりと笑った。
「わかったわ、ありがと、パネル」
『ん』
こうしてパネルの音楽プレイヤー講座は終わりを告げた。
『さて、カラオケ、行きたいんでしょ?』
「え?」
さて、急展開はいきなり始まる……って、4節じゃない!? どういうこと!?
『なんでも思い通りになると思ったら大間違い』
「えっ えっ ぱ、パネル、誰と話してるの?」
『気にしないで』
私が気にするから! ねぇ! 勝手に遠隔で弄るのやめてくれないかな……
『嫌♡』
と言うか、地の文と話すのもやめよう……ボード、ホントに驚いてるから……しかも、これ、ライブの映像をまんま挿入してるし……
『まぁ、けど、あんまりやるとハカセが怒るからこのくらいにしとくね。じゃあ、次回はカラオケ回。私も歌うよ』
ネタバレするのもやめて……




