第七話 うまい食事と入信ノルマ(未達成)
感想等もらえると嬉しいです。
追記。『ライトノベル作法研究所』というサイトで似たようなタイトルの大手様が居らっしゃることを指摘され、全く知らなかったのですが訴えられるのも怖いので誰か一緒にタイトル考えてくださいませんか?いい案があれば感想等に書いてもらえると嬉しいです。
「で、二人がどうしてああも仲良くなってたのか、聞かせてもらおうか」
やけにニヤニヤした調子で先輩は刺身をひと切れ口に運ぶ。
まだあきらめていなかったのか……。これは面倒なことになるかもしれないぞ……。と警戒していたのだが、
「私がボケだったからね!」
と、ノリノリでご飯をかき込みながらーー橋が使いづらいらしくスプーンを使っているーーユノが言ったことでイジリは回避された。
下世話狸、討ち取ったり。
「チッ!マジで恋愛感情絡まないボケとツッコミかよ!」
と、途端に先輩は白けた顔になる。
「だからそう言ったじゃないですか……」
俺はお茶を一口すすり、安堵のため息をつく。
ここでユノが元宮先輩のノリに合わせて惚れた腫れたのボケをかまして来たら、はっ倒してやろうかと思っていたが、そうならなくてよかった。
「にしても、結構明るい性格だったんだな?ユノちゃん」
「へへへ、シンジにも言われました」
「言われました、っつーかお前はゴディタニナ様の前とそれ以外で変化が激しすぎるだろ」
微笑む彼女に半ば責めるように言って、たくわんを一口ポリポリとかじる。
「でも、向こうだと同じノリで接することができる相手って神殿内部でも少なくて、困ってたのも事実よ?」
一応これでも偉い方なのだ!と彼女は胸を張って言う。
「偉い方、って巫女いうと……、巫女の長とかか?」
「まあそんなとこ。正しく言うと巫女長補佐、かな」
上から二番目と言うことだろうか。
「ちなみに仕事内容は?」
「向こうでは霊を降ろしたり、人々の願いを御柱に届けているの」
「願い、ねえ…」
あの不愛想な男神が人の願いをかなえるところがうまく想像できず、思わず苦笑した。
「笑うんじゃないよ、河野。しかし巫女長補佐か……。これは敬語を使わずに失礼しました、というべきかな?」
言って、先輩は焼き鮭を一口。
「苦しゅうない苦しゅうない。……じゃなくて!気にしなくていいよ。うちの神殿だってそう大したもんじゃないんだし……」
いやいや、主神の神殿が大したことないってのは有り得ねえだろうよ。
さっきも思ったが、どうもユノが語る『ゴディタニナ神殿』像は怪しい。
「でも実際、神職って忙しいだろ?何で補佐なんて微妙な立場のお前がお供で来てるんだ?」
普通そう言うのは一番偉い人、つまり巫女長がやるものと思っていた俺はきんぴらを一口。
「なんか御柱に指名されたんだよね。可愛いからかな?」
ウゼエ、文句なしに可愛いだけにウゼエ。首をかしげるんじゃない、あざといから。
「でもまあ、巫女長様も結構年いってるし、見知らぬ国に連れて行くのは難しいと判断したのかもね」
や、温泉はむしろ老人向けだから。そういう判断だったのだとしたらゴディタニナの事前調査が足りなかったと言うことなのだろう。
「しかし、二人も大変よね。こっちは信仰が薄いって聞いてたけどここまでとは思わなかったわ」
ん?どゆこと?
「何きょとんとした顔してるの?シンジやゲンザブロウも何かの神職なんでしょ?それで、神殿にお金がないから副業でこういう仕事やってるのかと思ってたんだけど……」
首をかしげた彼女が継いだ言葉に俺と先輩はようやく合点がいって違う違うと首を振った。
「いや、俺達は神職じゃない、野良の魔法使いのようなもんだよ」
「僕の場合、どっちかって言うと魔物なんだけどね……」
「へ!?」
帰ってきた言葉に、ユノは目を丸くした。
狸は魔物っちゃ魔物だけど……。異世界とは文化的背景も違うし脅威度も違うんだから。
「いや、先輩の場合はややこしいから置いといて……」
「箱使うか?」
「いりませんよ!」
葉っぱはしまってください。
狸は魔物に入るのか、なんて話をし出したらとっ散らかって仕方がない。
「へえ、そうなんだ……。二人ともどっかの神殿に属していたりはしないのね?」
と、ユノが意味深に笑って、部屋の隅に置いてあった彼女の鞄を取り寄せる。
「じゃあ、二人とも手を出して?」
「「は、はあ」」
突然過ぎる要求にとりあえず従う地球組二人。部屋の隅の鞄から判子のような物を出したユノはやおらそれに力を籠めると
「えいっ!」
俺たちの手めがけて精一杯に振り下ろそうとする。
「まてぇい!」
「何する気じゃぁい!」
咄嗟に手を引いてそろって睨むと、
「冗談よ、冗談」
と、微笑みが返ってくる。
「いや冗談じゃねえよな!」
しかし、俺にはどう考えてもそれが冗談には思えない。というか、冗談だとしてもあの勢いで判子が当たったら普通に痛いわ。
「ホントよ、ホントに冗談よ?」
確かにかつて俺が居た世界でも手に刺青のような物を入れて信仰の証としている人々はいたし、それが魔力を持っている物なら信徒としての証明になるかもしれない。
かもしれないがしかし
「その術式見るからにヤベえよな!明らかに奴隷契約にしか見えねえんだけど!」
俺のチートスキル『魔法解析』で見た彼女の持つ判子の術式はどう見ても『誓いの証』系ではなく隷属させる目的の術式。
「今月の入信ノルマ、取り逃がした……。あと少しで信徒にできたのに」
しかもユノのつぶやきもとても不穏。つか、そんな乱暴な宗教勧誘があってたまるか!
「おまえ、絶対一般人相手にそれ使うなよ!普通に外道の所業だかんな!」
「してないしてない。ちょっと犯罪奴隷とか別の宗教の信者とかが居た時に路地裏に連れ込んで押すだけだから」
「十分アウトだ!」
むしろ何なら自分とこの信者に押すより罪深いわ。
「ハッハッハ、お前ら芸人として売り出せそうなくらい息ぴったりだなあ」
と、同じ目にあったのにあっさり避けてケロッとしている先輩。
「ほら、シンジもおおらかなゲンザブロウを見習ったらどうなの?」
「加害者の台詞じゃねえだろうよ!」
割と真面目にヤバい宗教なんじゃないだろうか、ゴディタニナ神殿。
「そういきり立つな、河野。落ち着け落ち着け」
「何か先輩の冷静さ見てたら、しょうもない気分になってきました……」
妙に疲れた俺は自分のご飯に再び向き直った。
換装等もらえると嬉しいです。
追記。『ライトノベル作法研究所』というサイトで似たようなタイトルの大手様が居らっしゃることを指摘され、全く知らなかったのですが訴えられるのも怖いので誰か一緒にタイトル考えてくださいませんか?いい案があれば感想等に書いてもらえると嬉しいです。