第十八話 決意・20/4/5改
大幅改稿のラスト。
元来存在した次の回と統合です
「さて、と」
社長が「不動産に口止ーーお礼金払ってくる」と去って数分。
前に元宮先輩にもらった「認識阻害」の呪術のかかった木の葉を片手にアパートの(違法)改築を終えた俺は、ユノが買ってきてくれた缶ジュースを片手に休憩していた。
「お疲れ様、と言っておこうかな?」
「何で上から目線なんだよ」
「実際偉いからだよ!」
えっへん、とない胸を張られても。
「なにか失礼な意図を感じた」
「気のせいだ。というか、お前の発言がそもそも根拠がないんだよ。年功序列って知ってるか?」
「ゲンザブロウが『腐り果てた旧世代の慣習』って呼んでたもののこと?」
あの狸、余計な知識教えやがって・・・。
まぁ、時々起こる強権的な使われ方については、俺もどうかと思うけど。
「でも、私は年上だからってゲンザブロウのことを敬うべき人間とは思わないよ?」
「だとしてもだ。年功序列はともかく、今回の件に関してなんの働きもしてないお前が偉いってのは、おかしいんだよ」
「私の世界の王様たちは軒並み仕事してないし、御柱も仕事してなくても偉いよ?」
「王様は見えないところで大事な仕事をしているし、お前のとこの爺さんが暇なのは仕事をしないんじゃなくて、仕事がない。単にハブられてるからだ」
あの爺、普段何してんだろ。
「御柱が仕事してないのは部下の天使さんや神官に押し付けているからだし、うちの世界の王様たちはいつ謁見に行っても、お妃様以外の女の子侍らせてお酒飲んでるよ?」
「なおさらだめじゃねぇか!」
というか、こいつの世界本当に大丈夫か。
前に事情は聴いた覚えがあるが……。どうもまともじゃないっていうか、なんていうか。
革命が起きる前ってのは、こういう状態なんじゃないかと思わせるさまである。
「なぁ、ユノ。お前の世界って本当に大丈夫なのか?」
「うーんと、真面目な話?」
言った瞬間、空気が冷え込むのを感じた。
前に一回見てるから少しマシだが、コイツの真顔って相変わらず怖いな。
微妙に震えつつも俺は言葉を返す。
「半分くらいは真面目な話だ」
「そう。それで?」
「ユノはさ、自分が日本で暮らすことで向こうの世界から遠ざかっていくことが怖くなったりしないのか?」
それは疑念であった。
ゴディタニナはユノを『研修』という名目で送り出した。
けれど、初めて会った日にユノの言っていたことを全て事実とするならば、五年・十年後に彼女の神殿が今のと同じようにあるのかは定かではない。それほどに彼女の世界は荒れている。
彼女がこの世界に住むという段階に至って、彼女がそれを許容できるのか。
それだけは聞いておかねばと思っていた。
「そのことは私も考えてはいたよ」
返事は早かった。
「もう少し言えば、結論もすでに出てる」
一呼吸おいて彼女は続けた。
「私は、この世界に住むよ。たとえ次戻った時に御柱が誰かに倒されていたとしても」
その言葉に感じる決意は言いようの軽さに反して随分はっきりとしたものだった。
「御柱がそっちの方がいい、と思ってやったことなら神官である私が文句を言う訳にもいかないし。それに、この世界のご飯は美味しいしね」
どうにも茶化された感もあるが。彼女がいいというならそれでもいいのだろうか。
「まぁ、お前がいいって言うなら良いんだけどさ。後悔はしてほしくないと思ったんだよ……」
「シンジは、そこそこ程度に優しいね?」
「そこそこってなんだよ」
「そこそこはそこそこだよ」
どうにも長続きしない真面目な空気の余韻を感じながら、俺は温くなり始めた缶ジュースをすすった。
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