プロローグ という名のやや強引なキャラ紹介
初投稿です。感想等もらえると嬉しいです。
2/06追記。すみません。自分で読んでて面白くないので、最初っから書き直しました。旧バージョンは一応カクヨムの方に残しておきます。登場人物はほとんど変わらないのですが、ユノがやって来る部分とかいろいろ内容変わります。明後日くらいまでに五六話まとめて内容入れ替えるので、読者の方にはご迷惑おかけします。
かつて魔王が居た。どこのゲーム会社も一度は作ったことがある、雷とか炎とか使って攻撃してくる世界を滅ぼそうとする奴だった。だから、倒した。長ったらしい名前の女神サマからもらったいかにもおありがたい『見た魔法を完全に分析する』チートをぶん回し、それなりのラブコメとか友情とかある漫画八冊分くらいの内容でまあなんか、倒した。
かつて暴君が居た。魔王が倒れたから勇者を自分の国の軍に組み込めば統一帝国を作ってやりたい放題じゃね、とか頭悪いこと言ってたから適当に努力してその王を倒した。
かつて怒れる竜が居た。地元の人間が困っているというのでこれまた漫画数冊分くらいの冒険をして倒した。かつて暴れまわる悪鬼が居た。政治が乱れるというので倒した。かつて山をも動かす巨人が居た。困ってる人が居るというので倒した。かつて死霊たちの王が居た。倒した。かつて魔獣を率いる大熊の化け物が居た。倒した。倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した。
そうやってざっくり三年くらいの間、、馬鹿みたいに湧き続けるラスボス共をボコり続け、ようやっとすべての元凶らしい『堕ちし神』とやらを倒したころ。
強くなりすぎた俺のまわりには人が近づかなくなっていた。魔王を倒すときに義勇兵として協力してくれた冒険者の皆も、暴君を倒したときのナントカ教のレジスタンスのみんなも俺の元を離れて行った。もちろん、なんかラブコメやったりギャグやったりして仲良くしてくれてた奴らも、一緒にいなくなった。
そうやって高校生のころと同じ寄る辺もない暇人に戻った俺は『じゃあ帰るか』と日本に帰ってくることにした。見送りの人間なんてほとんどいなかったし、むしろ何ならいなくなることを喜ばれている節すらあった。俺も俺でそう大して未練もないからスパっと帰ってきた。帰ってきたのだが……、絶賛後悔中である。
「おい河野! ぼさっとしてんじゃないぞ! 次、13時から関口亭で接待だから。護衛についてこい!」
別に何もチートを使って世界征服をしようとしていたわけじゃない。けれど。
気づけば俺は『藍崎企画』という、なにをするのかも良く判らない妙な名前の会社に入れられ、働いている。いや、先週新人研修が明けたから仕事内容はおおむね覚えたのだが。
ここはとある駅の裏通りの昭和臭漂う貸しオフィスが一室。オフィスと言いつつもどう見ても人一人住めないクラスの狭さを誇る。そんな超弱小企業、それが藍崎企画。んでそんな我々が日々何をして生きてるのかと言えば……。
「うちは高天原の下請けなんだから、ボイコットするのはマジでまずいんだって! 向こうさんだってもうすぐ着くって言ってるし……」
そう、あっちこっちの神々の御用聞き、下請け。ま、有体に言えばファンタジーがらみの何でも屋である。それも、接待とかさせられる方の。マジで『なんでも』やらされる何でも屋。
それが藍崎企画である。
「こないだみたいなおいしい仕事がいいです」
「そうそう都合よく来るかよ、あんないい仕事。大体な、今回もまた一大事なんだぞ!」
「ほんと、こないだの仕事はラッキーだったなぁ……」
「今回だって一大事なんだぞ? 第二種大規模世界に分類されてる『クレール』の主神様が来るって言ってんだ。イザと言うことになっちゃ困るんだよ!」
いい加減引きずるのはみっともないぞ、と先輩はぶつくさ返す。
先週の『勇者を召喚しては己を倒させようとする強くなりすぎた魔王を倒してください』という依頼は良かったなぁ。社長が広告用の動画撮るからって、派手な戦闘とかっこつけたセリフまでも言わせてもらえて、すごい楽しかった。
「って言うか、クレールの主神って、どなたでしたっけ?」
俺はもう一度ため息をつくと、やけに寝心地のいいデスクに泣く泣くお別れを言って起き上がる。
十二畳半の狭いオフィスの隅にあるロッカーから入社したときにもらった黒いジャケットに着替えつつ、オフィスの真ん中へと振り向いた。
部屋の中には俺が先程まで寝ていたものを含めデスクが三つとソファが一台。あとは冷蔵庫とかエアコンとかテレビとかに観葉植物っぽい鉢一つと壁際のロッカー。だいぶ簡素な部屋である。
俺が話しかけた先輩はと言うと、懐から青々とした木の葉を取り出し自分の頭に乗せ……
「って、先輩!化かしの術はダメですよ。上位の神族相手だとバレるって言ってたじゃないですか」
ボワン、と言う音とともに彼が出しかけていた白い煙を俺はパタパタと右手で煽ってかき消した。渋々と言って様子で先輩はチョッキを脱いで自分のスーツをロッカーから取り出す。
「よく覚えたな。ハッハッハ」
葉を懐に収めながら笑う小太りの低身長。彼は元宮源三郎と言う名の、化け狸である。
俺をこの会社にスカウトした張本人にして職場の先輩であり、また実のところ俺が召喚される前からの数少ない知り合いでもある。
「横着はダメですからね?先輩」
化け狸とは知らなったとはいえ中学時代からの付き合いのある先輩の彼のおかげで俺がこの職場になじめたのは事実だが、昔から変わらぬ横着気質はどうにかならないものか。
「新入そうそうお説教とはいいご身分だな?」
「先輩が横着なのは中学の頃からずっとじゃないですか。社会人になったってのにそういうとこサボってると、絶対損しますよ」
「そうよ元宮君。接待業、もとい接客業なんだから服装で横着しちゃダメよ!」
横から口を挟んだ美人さんこそは我らが社長。金髪をポニーテールにまとめた彼女の名前は藍崎熾音。ルーマニアだかどこだったかを祖とする魔法使いの一族にして、
「私の祖先はルーマニアじゃなくてリトアニアね」
御覧の通り読心能力の持ち主でもある。本人は否定するのだが、そうとしか思えない。
「あと、河野君も。今日の営業先の名前くらいちゃんと覚えてなさい! ゴディタニナ様ね」
そう言ってパサリとホチキスでとじられた資料を渡してくれる。ああ、何日か前にもらったまま部屋の隅っこにほかりっぱなしにしてあったなあ、なんて思いつつざっと目を通す。
「河野君! 資料はもらったらほからずにちゃんと読むように」
やはり心を読んでるじゃないか!
「もう少しわかりやすい名前にしてくださいよ、ゴディタニナ様って何ですか。翻訳ミスかなんかで生まれた名前じゃないんですか?」
面妖な名前である。と言うかシンプルに発音しにくい。きっと魚人族かなんか、地球人類とは顎の形の異なる連中のあがめている神だろう。ぼやきながらもタイを締めた俺は資料の最後のページをチラリと見て声をあげる。
「じーさんじゃないですか!」
『ニナ』で終わる名前は女神のことが多いから油断した。どう見てもひげ面のじいさんである。美人な女神様を接待とかだったらまだマシだったのに。
「すねるな、河野。資料の続きは車で読め!」
と、俺が資料を見ている間に着替えたのだろう元宮先輩がポケットから車のカギを取り出しつつ事務所のドアを開けた。
2/06追記。すみません。自分で読んでて面白くないので、最初っから書き直しました。旧バージョンは一応カクヨムの方に残しておきます。登場人物はほとんど変わらないのですが、ユノがやって来る部分とかいろいろ内容変わります。明後日くらいまでに五六話まとめて内容入れ替えるので、読者の方にはご迷惑おかけします。