糸
みんな、裸足で逃げ出す。
僕は訳がわからぬまま、そこに突っ立っている。
真っ直ぐ進んで行くだけの迷路に何度も迷い込む。私は時間を掛けて進むのだが、途中で振り出しへと戻されてゆく。目の前が暗闇に覆われた、ゴールのない、迷路。人生そのものかのよう。
人間じゃないようにすれば良い。
人間よ、全て機械だと信じ込むのだ。
彼、彼女、皆、機械。
あらゆる欠点が私を邪魔してくる。
怖いだの、わからないだの、同じような事を言う。私のせいにしようとも、私は、あなたの写し鏡でしかない。紐で操られた人間が、私を支配するのは嘲笑の域を超える。乾いた音がカラカラと静寂の音に浸透してゆくようだ。どうしようもない、遣る瀬無い気持ちに追随していくような、不幸がまた不幸を呼んでいるのだ。少し、横になりたい。同じことを繰り返す狢は、狢同士、争っている。それが人間という、行為なのか。私は誰も相手にはしてくれない。だって、機械なんだもの。機械という場所を提供してくれたのは、誰だ。私という存在も消えようかという状況。
あなたは人間。
人間はあなた。
私は機械。
機械は私。
奴隷制度が私を邪魔だと言う。
私はあなたではない。
良くも悪くも、接点が無い。
虚仮威しに引っかかるのは、人間様か。
この世に生まれて何を想うのか。
前世に置いてきたのは、忘れ物。
来世に待つは、あなた自身。
道化の糸よ、消えてなくなれ。
また明日。
さよなら、と私はベランダから飛び降りた。