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異世界転生した日

主人公の名前はあえていれない方がいいかなと入れてないです。次の話では名前がつきます。

「おー!兄ちゃん今日も来とったんかー?」


なかなかの広さがある湖のほとりで聞き知った老人の声が話しかけてくる。


「あっ、どうも」

「お前さんここ最近昼間っからここでなにしとるんじゃー?仕事しとらんのか?」

随分と不躾な質問をされ心の中で眉根を寄せる

「あ、自分はあれですよ夜勤なんすよ、仕事。」

「あー!だから昼間はここさいんのかぁ!暇なら釣りでも教えっぞ!」

「あ~…。大丈夫です。おじさん見てるだけで楽しいんで…。」


たのしいのか~?と首をかしげながら老人は再び自分の釣り場に戻っていく。

老人が十分に離れたのを見計らいなるべく肩を上下させないように静かにため息をつく。

夜勤だなんて嘘なのだ、自分が毎日ここに来るのはここが唯一安らげる場所だからだ。

高校を卒業してすぐに就職したが社会の厳しさに耐えられず挫折、高校の頃はあれだけ出たがっていた故郷に戻り、今ではアルバイトもせずに日がな一日ゲームをするか、こうして湖の前で暇を持て余しているのだ。


「おーい兄ちゃん、そういやぁさ!」


またも老人が話しかけてくる。いつの間にか釣り道具も片づけており、もう帰るところのようだ。


「へぇ…。なんすか?」

「最近な、ここいらで小学生ぐらいのガキンチョたちが秘密基地だの作ってんだ。それだけならええが、そいつらそこでもしかしたら動物虐待だのしてるかもしれねえっつう話なんだわ、もしなんか見つけだらすぐ学校さ連絡しろってさ」


ほい、これ電話番号。と老人が重要なお知らせと書かれた紙を手渡してくる。


「へぇ~。随分な悪ガキなんすね。なんか見つけたら電話しますよ」

「おー!頼むぞ兄ちゃん!」


言葉とは裏腹に自分の中に怒りが湧き上がっているのを感じる。動物虐待をしているかもしれないというのは不確定情報だがそういう予想がされているということは何かしらの証拠があるのだろう。見つけたら成敗してやろうとすこし意気込んでいた。

しかしだからといって今すぐここから立ち上がって探してやろうという気にもならなかった。


(人間として小さいよなぁ…。俺って…。)


そんな事を思い自己嫌悪に陥りながら去っていく老人の背中を見守る。

その時。


「…ぃ!…の…っちまったぜ!…の…やろうぜ!」


嫌な予感がする。


(…ッ!聞いた直後に…嘘だろ)


声が聞こえた方の草むらに入っていく


「おーい!誰か居るのか!」

「…だれかきたぞ!やべーって!にげよーぜ!」

「おい!誰かいるんだな!」


再び声がした方向に走って向かうとそこには木の枝や古びたカーテンなどで作られた粗雑な秘密基地があった。

しかし作った当人たちはすでに一人としておらず一人残らず逃げ去っていた。


「逃げたんかよ…。」


そう独り言ちながらその場を去ろうとしたその時、人気のない秘密基地から物音がした。いや、何かの鳴き声だ。

少し確認するのを躊躇ったが意を決して恐る恐る中を確かめる。

心拍音が耳まで聞こえるかのような緊張感に襲われるが、きっと気のせいだと自分に言い聞かせながら粗雑な秘密基地の布をめくる。すると…。

そこにはわずかに震え、か細い鳴き声を上げるだけの血だらけの猫が横たわっていた。

一瞬、頭に血が上り逃げ出したガキ共を捕まえて同じ目に合わせ自分達がしたことを思い知らせてやろうと考えたが、それを行動に移すことなく、深呼吸をして頭を振る。


「ふ―――ッ。人間が…恨めしいだろうな。だけど俺はお前の敵討ちもしてやれないんだよ、謝って許されることでもないだろうが…ごめんな」


その言葉の意味を知ってか知らずか、猫は息を引き取った。

その後、自分がいつも座っている湖のほとりに墓を作り、小さな墓の前で合掌する。

すると。湖の水が不自然な動きで飛び出し、飲み込まれてしまった。


(―――っ!?!!)


水の流れは強く必死にもがくが抗えず湖の底に沈んでゆく


(くそっ!なにが!なんで俺が!?)


それでもあきらめず水中でもがくが既に息は限界を迎えており、意識が遠ざかっていく。


(クソったれめ…やっぱあの猫の為にガキどもに制裁してやるべきだったかな…。)


そんなことを思いながら

俺は、息を引き取った…。






―――起きてください―――


誰だ。


―――私は貴方が見ていた者―――


俺が見てた?


―――そしてあなたを見ていた者―――


俺を…?


―――さあ目を開けるのです―――


突如、視界が開けた。


「はっ!?ここは?!」


随分と静かな場所だ、しかし周囲は決して暗くはなく青い空間に無数の光が差していた。


「目を覚ましましたか。」


声が聞こえた方を振り返ると、そこには自分が見たこともない大きなクジラが泳いでいた。


「…えっ?あんた誰…?」


つい思ったことを口にしてしまう


「私はディオス・セタシアン。貴方を異世界へ呼び降ろさんとするものです。」

「ディオス・セタっ…えっ?異世界?」

「はい、私は異世界よりあの湖を通して貴方を見ていました。」

「えっ…じゃあ俺を湖に引きずり込んだのもアンタなの…?」

「それは違います。貴方を湖に引きずり込んだのは貴方が埋めた猫の怨念です。」

「えぇ…。」

「よほど人間が憎かったのでしょう。幼い人間に弄ばれ、子を失った彼女は最後の最後で情けを掛けられたのが悔しかったのです。」


非常に気分が沈んだ。良かれと思い埋葬したがあの猫にとっては屈辱だったらしい。


「余計なお世話…俺の自己満足に過ぎなかったって事か…。それじゃあ俺はどうなったんだ?」

「貴方は亡くなりました。しかしあの猫は本来そちらの世界にいないはずの存在でありました。故にこちらの不手際で命を落とした貴方には転生先の決定権を与えるという運びになったのです。」

「転生先…?好きな世界に転生できるってこと…?」

「そうです。貴方が居た世界ではありえなかった生き物がいる世界や、貴方が居る世界よりも独自の技術が進化した世界など様々な世界がありますよ。」


いきなりの提案であったが、いきなり水中に引き込まれたり異様にでかいクジラが話しかけたりとすでに頭が混乱していたからか素直に転生先の希望を思考する。


「うぅん…。それじゃあ、ま、魔法…?とかがあって…俺でも、なんか、ゆっくり旅をして生きていける世界…?とか…。」

「その願い…。聞き入れました。」


こちらの曖昧な表現で彼女に言わんとしていることが伝わっているか心配だったが彼女はあっさりの快諾した。

すると大きなクジラはその大きな口を開けて自分を飲み込もうとした。


「うぉおあああああああああ!!!!!??」


驚き、走って逃げようとするもスケール的に逃げ切れるわけもなくあえなく飲み込まれてしまった…。


のんびり連載しますねー

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