衝動
私とは関係ありませんから
むかつく、むかつくむかつくむかつくむかつくむかつく。
仮に私が悪いとしよう。否、私が悪いのだろう。
だが、親もいなくなり二人暮らしの兄妹で、家で顔を合わせれば文句ばかり言う。むかつくむかつくむかつく。
呑気にリビングで居眠りをしている。今なら、この首の後ろにハサミが包丁を刺せば、やれるのではないか?
悲鳴はどうだろう?血は?後片付けは?明日から妹は仕事があるが無断欠勤して大丈夫か?
完全犯罪は難しいぞ……遺体を片付けるにしても、ばれずに出来るか…無理そうだ。だが、毎日毎日の理不尽を私は耐えられるか?もう嫌だ。殴ってやりたい。嗚呼、殴りたい。
殴れば言うことを聞くだろうか?私の奴隷になるのか?殴りたい、殴りたい殴りたい。
いや、殴ったところで大人しくなったとて、逃げられたり、その事実がばれれば私は終わりだ。
穏便にかつ、安全にかつ、ばれない妹を大人しくする方法は無いのか?
神にでも祈るか?私が万能になるか?私が諦めるか…
嗚呼、殴りたい。殺したい。
妹が目を覚ました。その表情がいらつく。
水を飲んでいる。コップを割ってやろうか。コップを壊したい、壊したい壊したい。
いらつく、むかつく、どうしようか。
私はニコニコ笑ってみた。無理に笑ってみた。顔と心がバラバラでイライラが溜まる。目の前をくるりとみる。アイロンにドライバーに掃除機がある。どれも良さそうだ。頭数の中でそれらを持ち上げ振り下ろしてみた。感触がある。じわりじわり。
楽しい想像だ。赤い色、赤い色赤い色。思ったより吹き出さない血。じとりじとり染みる。
楽しいなあ、楽しいなあ楽しいなあ。嗚呼、こんな想像をしていたらきっと私は大丈夫だろう。
たった二人な兄妹だ。一緒に暮らす兄妹だ。大丈夫、大丈夫大丈夫。………だよね?
事実関係はありませんから