貘(ばく)
テレビには駅構内が映し出され、壁や床には赤い血が飛び散っていた。
モザイクがかかっているのは死体だろう。
「今回の貘はデカイぞ、なんせ12人も喰らっている」
所長は腕を組みそう言う。
「12人も…」
漣は食い入るようにブラウン管を見つめている。
貘は蟻くらいに小さいモノだ。それが小さい生き物を喰らい、喰らった生き物の大きさに合わせ体もでかくなる。
食べるモノによっては知恵もつくから厄介だ。
体が育てば力もつく、犠牲者が多ければ多いほど戦う側は不利になる。
だから小さい内に抹消するのが渡辺率いるチームの仕事だ。
「連れて行くメンバーを選ぶ、漣に斗真、それにたかお…そして私だ」
「え~、所長私は?」
ユリコは渡辺所長が選ぶメンバーには選ばれず不満げに手を挙げる。
「ユリコはココに居て貰わないと…シールドが持たないかも知れないだろ?」
「しけとお!私も博多行きたい!ラーメン食べたいの!所長どうせ中洲行く気でしょ?」
「えっ?所長、キャバクラ行くんっすか?俺も行きたい!」
と斗真は目を輝かす。
「斗真のエロ」
「はあ?キャバクラが何でエロいんだよ?綺麗なお姉さんにお酒注いで貰って、お喋りするだけだろ?」
斗真は中洲イコール、キャバクラと思っているらしい。
「ばかねえ斗真、えっ」
ユリコはエッチなと言う前に所長に口を塞がれる。
「えっ?えっ何?」
斗真はえっの後が気になるようだ。
所長は話をそらすように咳ばらいをする。
「所長、連れて行ってもいいんじゃないですか?」
漣が笑いながら言う。
「ユリコがシールドを張ってるんだから、離れたら…もしかしたら貘が襲撃してくるかも知れないだろ?」
「そう簡単に壊れないですよ」
漣の説得により、ユリコもメンバーに加えられた。
校庭にヘリが待機しており、渡辺達は現場へと向かった。