第6回 馬鹿が参拝した。
平「あっ、あそこから行けるんじゃねえかあ?」
佐「あーあの細い道か?」
朝「どーせこのままじゃ渋滞だし、行ってみるか。」
此処は島根県出雲市。出雲大社まであと数キロと言う地点で、とうとう渋滞がピクリとも動かなくなった。この期に及んでわかった事だったが、何と出雲大社は今年、
【六十年に一度の式年遷宮】
だったのである。
我らが地元には伊勢神宮があり、そこは二十年に一度の式年遷宮を行っていた。
が、こっちは六十年である。愛知県ではあまり報道されなかったうえに今回ほとんど予備知識を入れていかなかったことが完全に裏目に出て、さらにこの日は三連休の真ん中の日曜日。
出雲大社を、島根県を舐めきった姿勢でやって来たこの3人を島根さんはついに許すことなく、我々を最後まで苦しめたのである。
渋滞の列を毛穴パックの角栓のようにプリっと抜け出して、裏道を走り始めるブリット。
運転を替わった平松のスマホと佐野の地図のダブルマッピング作戦(大きめの地図を佐野が、細かいルートのナビを平松のスマホで行う非常に優れたハイブリッドな・・・まあいいや)で抜け道を探し、とりあえず浜山公園と言う大きなスポーツ公園に到着。ここで全員の爆弾処理を完了する。
つまりトイレだ。
ここはサッカー場や野球場、陸上競技場などがある広い公園で、この日もそこかしこでスポーツ大会やら試合が催されていた。
さて、ここからどうするか。ひとまずワイナリーへ行ってみるか、それともここから歩くか…。
出雲に入った時点では9時半過ぎだったのが、もう11時を過ぎている。
とりあえずワイナリーまで行ってみよう、という事で話がまとまる。
もしダメなら先に給油と昼飯をとって、そこから考える…といういつもの体たらく。
浜山公園からワイナリー、そして出雲大社はすぐ近く。
そこに至るまでの道のりを地図でたどる。ワイナリーがあるだけあってブドウ畑も結構ある。この日は陽射しが強く、窓を開けていれば心地よいが渋滞の中では排気ガスが少々きつい。
長閑だが狭い道路をちんたら進んで、どうにかワイナリーの駐車場が見える位置まで来た。
この時点でダメだと悟るが、結構入っていく車が居る。
ガードマンが立っていても全くこの状況を捌き切れておらず、業を煮やした自動車が数台、彼をスルーして駐車場に割り込む始末。
コレじゃだめだ、とそのまま通過して、いったん市街地へ出て給油に向かう。
ちなみに出雲そばの店も何処も彼処も超満員。
結局昼食抜きで給油、その後再び浜山公園に戻って作戦会議。
見ると浜山公園のすぐ近くに私鉄の駅がある。
そこから電車に乗ってみるのはどうだという意見が出る。
浜山公園の最寄駅から出雲大社までわずか1駅。
歩こうぜ!と思うがいかんせん全員が背広姿。
写真が無いのでわかりづらいけど、実はそうなのである。
意味はない。毎回そうなのだ。
とりあえず駅まで行ってみる。
のんきな秋晴れの田舎道をトコトコ歩く。
距離は短いが急こう配や曲がりくねった路地が続く。
駅に着くと、ローカル線の無人駅に有り得ないぐらいの乗客が。
そして運よく遅れてきた電車を見て、潔く徒歩を決め込んだ佐野。
電車は古い南海電鉄の一両ぽっちの可愛い車両。
そこに、インドの満員電車並みにみっちみちに詰まった乗客たち。
こんな所にこんなデブ(佐野さんは170センチ98キロ)が乗り込むのを考えただけで気が引ける。
今どき珍しく車掌さん(しかも可愛い女性)が乗り込んでいて、
「乗りませんか?いいですか?」
と聞いてくれた。この可愛い車掌さんに、いや電車に乗りたいのは山々だが丁重にお断りする。
運転手さんといい親切そうな方々だったし、こんな時じゃなきゃゆっくり乗ってみたいものだった。
さて徒歩で出雲大社を目指す。
歩くと結構あるようだけど、まあ歩けない距離ではない。
4キロぐらいかな。三遠南信自動車道には4キロのトンネルがある。
佐野家から朝倉家までだって4キロ歩けば着く。
朝「あ、それなら出雲大社行ったほうが良いな。」
佐「なんだとぅコノヤロー!」
山肌に沿った道路に着くと、渋滞渋滞&渋滞。
また徒歩で向かう人も結構いて心強い。
市内に随分あった駅伝の幟や白バイ、中継車なんかも増えてきた。
そして人の流れも濃く、緩慢になってくる。
自動車と人間の一際の混雑が遠巻きに見えてきて、そこが出雲大社だった。
遂に辿り着いた。
さあ、お参りだ。
つづく。