第3回 空腹男早朝絶叫
中国自動車道は単調な道のりであった。
午前5時、中国道・社PAにてトイレ休憩。
此処を抜ければ岡山県まであと少し。
運転手交替で平松、助手席には相変わらずのテンションで喋りたくる佐野。
大阪の団地や、中国道の道路沿いにある家の灯りを見ては、そこに暮らす人々の営みに思いを馳せる。
佐「いまあいつ(明かりの点いた窓を指して)、どんなDVD見てんのかな。団地かな。」
平「また団地かよ!」
佐「俺は団地フェチなんだ!」
昼でも夜でも、そこにたたずむ団地の風情に興奮するらしい。
知らない街、普通にしてたら絶対に来ないような普通の街。
そのワクワク感といったらない。
岡山に入り、さらにしばらく西へ。
岡山県と言えば、この時より3年ぐらい前の「四国上陸」の時に2号線で来て、坂出から瀬戸大橋を渡ったのであった。
あの時はすでに昼を過ぎていて、明るい瀬戸内海と晴れ渡る空を見ながら走ったものだった。
逆を言えば、あの時分に国道を何時間も走って岡山に辿り着いていたのに対して、5時間そこそこで岡山に入ってしまったという事でもある。
なーんで若かりし3人は高速道路を使わなかったのか。まあ、そういう趣味であるとしか言いようもない。四国上陸の模様は、またいつか改めて。
そうこうしている間に、夜が明けてきた。
西行きの旅の利点と言えば、朝陽がまぶしくない事だ。
東の空がうっすらと白んでゆくのを眺めながら、さらに進む。
落合ジャンクションから米子自動車道に入るため、そろそろ青看板にも注意し始める。
ちなみに我が地元ではこの道路上の看板の事をアオカンと略すのだが、皆さんの地域ではいかがだろうか。高速道路だから色合い的には緑なのだが、緑も昔は青と呼んだので、アオカンで良いのだろうとウチのオカンも言っていた。
落合ジャンクションのすぐ手前まで来るころには、すっかり夜も明けていた。
一晩中走り続けてた平松は空腹を覚え、どこかで朝飯を取りたいと言い出した。
手元の地図には、美作追分PAが落合ジャンクションの手前にあると書いてある。そこへ行ってみよう、自販機のホットドッグぐらいにはありつけるかも…。
すいーっと車を滑り込ませた平松は絶句していた。ホントに駐車場とトイレと自販機ぐらいしかないのだ。
佐「まあ、パーキングってんだし嘘は言ってないわな。」
平「そんなのアリかよーーーーー!」
腹ペコ男の絶叫が、晴れの国の暁を貫いた。
つづく。