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異世界

異世界だけど生物は地球産なので景色はあんまり変わりません。


目が覚めると山の中だった。今までのは空腹による幻覚ではないかと思ったが、周囲の景色がちがっている。

笹のような植物が一面に生えていて、周囲を見回すために立ち上がると左足に痛みが走った。


「いてて、何だケガはそのままか。」


三角巾で固定してはあるが、これで歩くのは大変だ。神様じゃなくてヘルパーは直してくれなかったのか。


『直してもよかったのですが、自己の一貫性の為にはケガも含めて前のままの方がよろしいかと判断しました。』


頭の中で声がした。やはり夢ではなかった。自己の一貫性というのはケガが治っていたりすると自分がコピーじゃないかという疑いがでるからかな。子供のころのケガのあとが残っていないから自分はコピー人間の方なんだと気がついてしまう話とかあったような。


『左足に手をあててて直るように思考して下さい。』


言われるままに手を当てる。傷む部分に手を当てると少し痛みがやわらぐ、これは不思議な力とかではなく手の体温などによるもので、手当てという言葉もそこから来ているというのを何かで聞いたことがある。

手を当てたまま直るように考える、といってもどうすればいいのか。


「治れ、治れ、治れ。」


とりあえず口にだして言ってみる。

そうすると何か痛みが治まってきた。足首を固定している三角巾を外して軽く動かしてみると問題なさそうだ。


『癒し手と呼ばれている力です。』


こんな魔法というかインチキ心霊治療みたいなものがこの世界にはあるのか。実際に直っているのだからインチキではないけど。


『魔法ではなく本人の治る力を助けているので、しばらくはあまり無理をしないように。』


なるほど、これで歩くことはできる。だが。


「おなかがへって、力が出ない。」


ケガだけでなく空腹もそのままだったのだ。


『それも対応してあります。満たし手と呼ばれている力です。』


食べ物でも出てくるのかな。


『その通りです。両手を器のようにして食べ物が出るように思考してください。』


「出ろ、出ろ、出ろ。」


今度も声に出してみると器のようにした両手のくぼみがどろっとした液体で満たされた。

口に近づけて臭いをかいでから飲み込む。臭いはほとんどなくうっすらと柑橘系の香りがして、味は甘みと薄い塩味がした。SFに出てくる宇宙食みたいな印象だ。


『500mlで標準的なスペースマンの基礎代謝をまかなう栄養があります。』


いきなりスペースマンってなんだと思ったけど、これも僕の記憶のせいか。昔読んだ本でコップに入ったどろりとして宇宙食が出てくるのがあった。

見た目は少し気持ち悪いが、栄養はあるらしい。手のひらがべたべたになったが、これはなめてきれいにする。


『水も出せます。』


早く言ってくれ。ためしに水が出るようにイメージすると水が出てきたので、軽く手を洗う。便利なものだ。


『イメージによって水分を減らした固形の食物を出すことも可能です。』


ますます便利だ。他にも何かあるのかな。


『これで終わりです。この2つの力を使ってなるべく多くの人を助けることがわたしの希望です。』


人助けか。まあ僕も助けてもらったわけだし、少しは世のために何かするのも恩返しみたいなものか。

そういえば言葉は通じるのかな。これも昔のアメリカSFだと他の星でも英語が通じたりするのだけど。


『英語は通じません。もちろん日本語も。』


それじゃあ異世界の異言語をいちから覚えなければいけないのか。これもSFや冒険小説だと主人公は簡単に言葉を覚える能力があったりするのだけど、そういう力は無いのかなあ。


『そういう力はありませんが、別のがあります。』


別のというと何だろう。


『銀河パトロールの隊員のように、思考によって意思を伝えることが可能です。』


そうきたか。昔読んだ本で、銀河パトロールの隊員は腕に付けている身分証の腕輪の力で別の星の住人ともテレパシーみたいなもので意思の疎通が出来るというのがあった。


『今のわたしとあなたも厳密には日本語ではなく、銀河パトロール隊員の力のようなもので会話していることになります。』


そうなんだ、別に銀河パトロールの隊員になりたくはないけど言葉を覚える必要が無いのは便利だな。

実は言葉を覚える必要が無いわけではなく後で苦労することになるのだが、それはまた後の話。


『最後になりますが、30分ほど下ると山道に出ます。左に曲がってしばらく進むと村がありあます。それでは良いライフを。』



最後と言った言葉のとおり、この後は何度呼びかけてもヘルパーからの応答はなかった。


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