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忍び寄る異変

 同時刻 ハンター組合


 本部長ウィンストンは、いつも通りに書類に目を通しながら獲物の持ち込みを待った。副業として在籍している解体班4人も、テーブルを囲み今か今かと談笑しながら待機中だ。

 解体班4人は、ウルラントの精肉店従業員のみで構成されている。それぞれ勤務店は違うが、彼らの目的に共通してあるのは『経験』だ。昼を少し過ぎた頃には、精肉各店の解体はひと段落する。その後は一部従業員を除いて勤務終了だ。そんな勤務終了組の中に、独立を志す者達がいる。それが彼らだ。

 彼らの独立に必要なのは肉に関する幅広い知識と経験──何をおいてもそれらが最重要だ。

 しかしながら、いち精肉店に養鶏場・養豚場・牛舎から1日あたり持ち込まれ処理する肉の量は多くはない。一人頭の担当量は従業員が多ければ多いほど少なくなり、労働時間もまた短く、そして給金も減る。独立できるほどの腕と資金に至るなど遠い話だ。

 だからこそ彼らはここにいる。単なる副業以上に、己が夢に至る為の確かな足掛かりの為に。

 勤務する店は違えども同じ夢を持つ者同士、話は自然と弾む。彼らにとって本業の勤務先よりも、このチームの方が居心地がよかった。


 しかし今日はどうも……遅い。いつもならば既に数匹は持ち込まれており、ゆっくりと、それでいて丁寧に慎重に解体しているところだが……。


「妙ですね……」

「ああ、いくらなんでもおかしい」


 ウィンストンのつぶやきに、解体班長の三つ目若ハゲが同意、合わせて他の3人も頷く。


「おう、戻ったぜ」


 ドアを開けて入ってきたのは、背丈が低いドワーフ族の髭面ハンターだ。よしきた、と、解体班全員が立ち上がるが、髭面の両手を見て、落胆のため息とともに静かに腰を下ろす。


「ふむ、あなたが空振りとは珍しいですね」


 髭面の男の手には、何も入っていないであろう潰れた革袋があっただけだった。誰が見ても、どう見ても、小鳥の一匹すら入っていない。


「ああ、収穫なしだ。これじゃ酒代にもなりやしねぇ」


 どさりと、空いたテーブルの椅子に腰を下ろす。髭面の男の機嫌は悪い、いや、腑に落ちないといった表情だ。


 続いてがチャリとドアが開き入ってきたのは、男臭いハンター組合で紅一点のリレーラだった。


「ただいまー……はぁ……」

「おかえりなさい。……まさか、あなたも空振りですか?」

「そのまさかよぅ……」


 リレーラの右手にはやはり潰れた空っぽであろう革袋、左手には試験的に持たされたクロスボウ。腰の矢筒の中身は1本も減っていない、つまり、一切の獲物に遭遇できなかったことを示す。


「…………」


 ウィンストンの額に一筋の汗が伝う。


「なーんにもいないのよ、なーんにも。息遣いも聞こえないし」


 リレーラの聴力が桁外れに高い事はハンター組合内で有名だ。その聴力を以って獲物の正確な位置を割り出し、投石で威嚇、飛び出したところを投げナイフで、いや、今はクロスボウで仕留めるというスタイルだ。逃げようにも彼女の脚力からは逃れることはできない。彼女が出入りするようになってから今日まで、収穫なしの日はただの一度もなかった。


「お嬢、今日のポイントはどこだったんでぇ?」

「南東のエルッケ。ヒゲさんは?」

「北、サーゴレだ。あとヒゲさんはやめろや」


 この事態にウィンストンはさらに頭を悩ませる。南東のエルッケ森も、北のサーゴレ森も、そのどちらもがそれなりに広く、獲物は豊富に生息している。この2箇所で狩りを行って空振りになるのは、子供か新人だけだからだ。


 そこへ、またドアが開きハンターが入ってくる。


「うぃーす、おやっさん、ごめん、全滅ダメ」


 死んだ魚の目をしたブロンド髪の猫耳天然パーマハンターがヤケクソ気味に言い放った。


「天パ、お前もダメだったのかよ」

「え、何、おたくらも?リレやんマジ?」

「マジよ~……まいったわ」


 この魚の目天パ、弓を片手に獲物を鳥に絞って幼少から狩りを続けている、若いながらも組合の古強者だ。捕れなかった日は、初めて狩りにでた日だけ。彼が居なくなればウルラント住民の口に鳥肉が入らなくなるとも噂されている。そんな彼にとって今回の収穫ゼロはハンター人生2度目の経験だった。


「もうさーなんつーかさー、ありゃおかしい。巣あったんで覗いてみたらよー、親鳥が卵も巣も放棄していなくなってんでやんの。信じらんねー……」


 沈黙がハンター組合を支配する。三者三様であるが、皆が何も狩れていない、否、獲物すら見ていない。異常事態が発生していることは誰の目から見ても明らかだった。

 その後に入ってくるハンターらも手ぶらで帰還という有様で、この日持ち込まれた獲物は全くの0、ネズミ1匹すらなかった。


 帰還したハンター達はテーブルに地図を広げて囲み、各々の狩場を当てはめ、消去法で獲物がいる場所を割り出そうとする。専業であろうと副業であろうと、共通するのは自分の生活に関わる一大事だということだ。普段はソロで動く彼らだが、この異常事態、仮初であるが一致団結して凌ごうという意思がある。


「近場は全滅だなー。カーノルまで足を伸ばさないとダメなんじゃね?」

「天パの旦那ぁ、そりゃ難しい話ですぜ。リレーラちゃんならともかく、俺ら副業組じゃ時間がかかりすぎて論外。廃業して新しい仕事先を見つける方が現実的ってもんですよ」

「私でもこの距離はゴメンよぅ。カーノルからここまでの距離じゃ、そんなに多く持ち帰れない。足は早くても力はないし、持って帰れても赤字よ?」

「参ったな……」


 ハンターたちの表情は皆暗かった。腕の善し悪しではなく、獲物がいないという根本的な問題でありどうしようもなかった。


「これは、早急に報告しなければなりませんね……」


 ウィンストンは真新しい紙を広げ、羽ペンにインクを付け、紙面に走らせる。報告先は無論、シルベイクァン=バルフィリアス領主代行宛だ。


 ハンター組会の仕事は、獲物を狩り、解体し、肉や毛皮を市場へ流すだけではない。周辺狩場の生態調査もまた、彼らの役割だ。狩りすぎて獲物がいなくなるということがないよう、場合によっては数が増えるまで禁猟区とする権限も持つ。最もこの周辺に限っては、その権限を用いた記録は5年前に1度きりだ。

 副業が多いこの業界だが、食卓に並ぶ肉のおよそ3割を組合が市場に流している。今後も今日のような事態が続けば、肉の価格が種類問わず連鎖的に跳ね上がることは容易に想像できた。


 問題なのは、何者かが狩り尽くしたのか、あるいは、何らかの驚異から逃げ出したのかわからないということだ。


 前者の場合で、犯人が大型野生動物の類の場合、対象を狩った後に禁猟区へ指定し、以後、生態系の回復まで観察を続けることで一応の解決にはなる。はぐれハンターの犯行の場合でも、流通した肉を逆にたどり捕縛し、その後に禁猟区になるだろう。


 後者の場合……複数の驚異になるであろう存在が同時に現れたのか、驚異が単体であるのか、いずれにせよ単なる大型野生動物が相手とはけた違いに面倒だ。最悪、組合だけでは持て余しかねない。


(どうにも……嫌な予感がしてなりませんねぇ……)


 隔てられた複数の狩場に影響を及ぼすほどの存在が何処かに居る。ワイルドベアを凌ぐ、かつて同業者から耳にした黒色のワイルドベアか、それを凌駕する未知の存在か。総合的に判断した結果、ハンター組合だけで収まるとは思えなかった。


「皆さん、この件は領主代行へ速やかに報告します。追って皆さんに、周辺狩場の調査を依頼することとなるでしょう。また、追って通達があるまでこの件の箝口令を全員に命じます」

「対応はえーけど、だまってろってなんでだよ?」

「こんな大事件だぞ?」


 ウィンストンの即断にざわつくが、それを沈めたのは気だるそうな魚の目天パだった。


「肉は俺らがパンとイモの次に食ってるもんだろ?んで、よく知らねーけど俺らがとってる肉の量ってのは、一人ひとりが鼻クソな量でも全員集まりゃ相当なモンだ。もし、今この情報が知れ渡っちまえば、明日から肉屋の値札に0が1つ増えんぞ?肉が食えねー分、小麦、イモ、卵、豆、全部にしわ寄せが寄っちまう。今度は肉以外の食いモンが値上がりする。さらにそうすっと……」

「そうすっと、どうなんだよ?」

「さらに値上がりする前に、腹空かせたくねー金もちヤロー、転売ヤローが買い占めていっちまう。魔都1万人に需要があんだぜ?売れねーはずがねぇのよ。何もしねーでも勝手に値が上がって、それでも売れる。問題は金がねー俺らだ。俺らみたいなその日暮らしの金なしヤローどもは、下手打てば飢え死にだ。麦粥すら食えなくなっぞ?」

「っ……」


 戦慄が場を支配した。彼の説明は実際的を得たものだった。5年前、今ほどではないが、森から獲物が減り、家畜の一部に病が流行って肉の供給量が激減した年があった。

 言うまでもなくそんな状況でもアルガードスは何の対策もせず、また、食料の備蓄など一切をしていなかったため、市場は大荒れになった。


 荒れたのは市場だけではなかった。ハンター組合の腕利きが何人も遠出し、肉と毛皮がもたらす金目当てでワイルドベアなどの大物を狩る遠征に出たのだ。だが、戻ってきたハンターの数が半分にも満たなかった。専業の大半がその一件でハンターを辞めている。


 街の治安も荒れた。元々治安の良い時代ではなかったが、こと商店から食料の強奪が相次いで発生、犯人の多くが犯罪奴隷として鉱山に送られた。中には鉱山での食事にありつくため、あえて犯罪を犯す者までいた。


 そもそも、住民の数に対して家畜の数、畑の面積が根本的に足りていない。魔都周辺における作物の異常な生育速度があって、なんとか水際で守られていたのだ。それが崩壊し、一時期履き古した革靴が食品として店頭に並んだことすらあった。靴屋が店を畳み、店主が鍋で革を煮て飢えをしのいだという逸話すらある。


 その暗黒の時代を、ほとんどのハンターが覚えていたのだ。……リレーラに限っては、その当時魔都にはいなかったため例外だが。


「ふぅ……」


 ウィンストンは浅くため息をつくと、書き終えた手紙を丸めて紐で縛り、その上に蝋を垂らして印を押す。その印は弓と3本の矢を象ったもので、ハンター組合からの公式文書であるという証だ。


「そういうわけなのでリレーラさん、この手紙を領主代行へ届けれもらえませんか?」

「へ、私が?なんで?」

「お知り合いがお屋敷におられるのでしょう?今回は緊急です。正規の手順を踏んでいては、手遅れになるかもしれません」


 顔は普段の温厚なままだが、彼の眼差しはまるで鋭い刃のような輝きを持っていた。見る者が見れば彼の現役時代を思い出させるだろう。そこでようやく、リレーラにもこの事態の不味さが理解できた。


「っ……わかりましたっ」


 リレーラはウィンストンへ荷物を預け、手紙を受け取りドアも締めず一目散に駆け出す。開けっ放しにされた先をハンター達は見つめ、髭面のハンターがやれやれといった表情でゆっくりと閉めた。


(情報統制をしても、時間稼ぎにしかならないのですがね……。5年前のような大事にならなければいいのですが……)


 ウィンストンの願いは数日後、儚く散ることとなる。




*




クリナ視点


 ナナクサさんの仕事がお休みの日、太陽がてっぺんまで上がって、少しだけ傾いたころ……。


「いってきまーす」

「おう!」


 お店正面のドアを閉めて、ナナクサさんから受け取ったメモを広げる。そこには簡単な地図が書かれていた。目的地のゆーちゃんの家までの道のりだ。


「えっと、いったん中央広場まで行って、そこから……北?そこから東に?」


 中央広場から北に行くと、魔王城に続く魔王坂への道がある。その道の東西は、大商会の、所謂お金持ちの人の豪邸があったり、遠くに住んでいる領主様達の別荘が並んでいる。簡単に言えば高級住宅街らしいんだけど……行ったことないんだよね。


「もしかしなくても、ゆーちゃんっていいところのお嬢様?」


 思い返すと、ゆーちゃんが着ているお洋服ってすごくかわいくてフリフリしてて、細かいところまで丁寧に仕上がってた……気がする。ナナクサさんのも、シンプルだけど生地の質がお父さんや私の服と比べると明らかに上だった……気がする。な、なんか今更……緊張してきた。


 ね、寝癖とかないよね?服とかも、お気に入りのいいものだし、ちゃんと洗濯したからシミとかないよね?ほつれとかないよね?……うん、たぶん大丈夫。

 と、とにかくですよ、約束しちゃったし、初めてのお友達の家だし……うん、大丈夫大丈夫!!


「っと、急がないと遊ぶ時間が減っちゃう!!」




 なんて意気込んでいたんだけど……。

 地図通りに進んで、その家の、ううん、お屋敷の前に着いて、いろんなのが頭から抜けていった。


「ほへー…………」


 侵入者を阻む鉄柵と鉄門。金属の棒を組み上げて作られていて、門からお屋敷の正面まで石畳の道が伸びている。

 その道を挟むように大きな花壇があって、たくさんのお花が咲いていた。まるで、おとぎ話に出てくる花の道みたい。


「ほ、ほんとにここ、なのかな……」


 それから地図を見直して、3度来た道を戻って確かめて、ここで間違いないっていう結論しか出せなくなった。

 と、お屋敷の扉が開いて誰かが出てくる……ナナクサさんだ。やっぱりここで間違いなかったんだ……。奥にはユーちゃんもいる。


「お、いらっしゃい」


 門の前で止まっていわたたしに気がついて、ゆっくりと近づいて来る。


「え、ええと、おじゃま、しちゃいます」

「あまり固く……は、無理そうだな。ユーディ、クリナ来てるぞー!」


 とことこと出てきたゆーちゃんは、フリルをあしらった水色のエプロンドレスを着ていてすごくかわいかった。うん、やっぱりゆーちゃんはお人形とかぬいぐるみのモデルにぴったりだと思う。……でも、暑くないのかな?今日結構日差しが強いし。


「ん、いらっしゃい」

「い、いらっしゃいました、ですよ」


 うあー、初めてのお友達の家で、それがこんなおっきいお屋敷で、もう頭があっぱらぽっぴです。ぐちゃぐちゃです。


「さて、行ってくる。夕飯の支度に間に合うくらいには戻ってくるつもりだが……」

「ん、わかってる、まかせて」

「ああ」


 ナナクサさんはゆーちゃんの髪にキスをして、歩いて行ってしまった。


「……もぅ」


 なんだかものすごいものを見た気がします。兄妹で……つまりこれは禁断の恋なのでしょうか?


「ゆ、ゆーちゃん、ナナクサさんと、どういう関係……なの?」

「んぅ?……大切な恋人」

「ふぁっ!?きょ兄妹なのに……?」

「兄妹じゃないよ?」

「え、あ、そ、そうだったんだ……」


 ゆーちゃんがナナにぃって呼んでるから、てっきり……。これ、私以外にも勘違いしてる人いるよね、多分……。


「上がって。ナナにぃがおやつ用意してったから、一緒に食べよ」

「あ、う、うん」


 ナ、ナナクサさんのおやつ……ごくり……。


 今まで食べたことがあるのは、イチゴジャムとクッキーだけだけど、もしかして、それ以上の、ほっぺた落ちそうなのが出てきちゃうの?ああ、だめだめ、気をしっかり、骨抜きにならないよう……に?あれ?


「ゆーちゃん、その手首どうしたの?」


 ゆーちゃんの手首、エプロンドレスの裾でギリギリ隠れるくらいのところに、なんだか跡が付いていた。……縄模様?


「っ……なんでもない、から……」


 手首を隠すゆーちゃんはさっきよりも顔が真っ赤。なんていうか……なんだか妙に色っぽく見えた。




「ん~~~……あまい……とろけるっ」

「ん、ふわふわ」


 ゆーちゃんのお部屋(ナナクサさんと同じ部屋みたい)でかすてらっていうふわふわした甘い黄色いお菓子を、フォークで小さく分けて食べる。


 これは一気に食べるのはもったいないですよ。クッキーよりも甘くて、たくさん砂糖が使われているはずなのに、上品な甘さに仕上がっている。そしてこの柔らかいふわふわの食感が、噛むたびに広がる卵の味と砂糖の味がたまらない、たまりません。


「前から思ってたんだけど、ゆーちゃんのお洋服って、どこの針子さんが作ったの?」


 ゆーちゃんが来ているお洋服は特徴的なデザインで、それでいて可愛らしい仕上がりになっている。こう、お洋服は専門外だけど、それでも可愛いもの、綺麗なものは気になるのわけです。


「リラちゃんのお手製」

「リラちゃん?」

「ん、妹みたいな子。……今日は出かけていていないけど」


 ゆーちゃんより小さな子がこれを?今までゆーちゃんが着ていたのも?

 縫い物、特に服を縫うのは大変。時間も手間も、私が作ってるぬいぐるみのと比べるまでもないくらい。ちゃんと縫わないと解れちゃうし、縫い目の間隔も同じにしないと見栄えが悪くなってしまいます。

 ゆーちゃんのお洋服はどれも正確、完璧ってくらいの出来だった。熟練の針子さん顔負けの技量……だと思う。


「デザイン決めて、採寸はかって、材料決めて、夜にはできちゃう」

「……うそでしょ?」


 全部やるのに数日かかるのに、それをたった1日で?それもこの完成度のを?

 思い返せば、私が作り始めたぬいぐるみ達も、元を正せばそのリラちゃんが始めたことだったはず……。あの時妹って言ってたから、ほかにいないなら同一人物ってことよね。術士のナナクサさんとゆーちゃんがいて、縫い物のありえない技量持ちの妹さんがいて……もしかしてここって、とんでもないところだったりする?


 私がそれを確信したのは、領主代行様がお庭で剣の素振りを始め、すぐに執事みたいな細いおじいさんにイヤイヤ引っ張られていくのを窓から見た時だった。そこでようやく、このお屋敷が誰の持ち物なのかを理解して、飛びかけた意識をかすてらでなんとかつなぎ止めたのです……。


「ところでナナクサさんはどこに行ったの?」


 今日は露店お休みって言ってたはず。ということはお買い物?でも籠も何も持っていなかったし……。


「ん、魔王城の地下迷宮」


 ……え?


 魔王城、先代の魔王様が崩御して今は誰もいないって言っても、簡単に入れる場所じゃないはずなんだけど……。しかも地下に迷宮?


「な、ナナクサさんって何者?」

「ナナにぃは、悪くて変な魔法使い」


 クスッとゆーちゃんは笑って答えた。そして私は考えるのをやめた。

お読み頂き有難うございました。

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