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革命的第5話


「農奴共! 集まれ! 賢くもバアル家当主のヘイムリヤ・バアル様からの勅令であるぞ!!」

 何事かと村人が協会の前に集まる。アウレはまた税金があがるのかと肩を落とした。

 教会の前につくと剣士と神父が村人に集まるよう指示を出していた。

 神父の手には立派な羊皮紙を掲げられている。

 前にいた神父はアウレたち農奴なんかに字を教えてくれた。そのおかげかアウレは簡単な文章なら読めた。

 しかし、その神父が流行り病で死んだあとにきた神父は領主の使いのような人間で、教会の中で説法を説いたことが一度も無い。

「この村の村長であるケヒン村長はヘイムリヤ・バアル様に謀反をたくらんでいたことを自供した! よってケヒン村長は一月後、ヴァスドン関所にて公開処刑を行うことになった! また! 謀反を企てた村は罰として租税を重く取り立てることになっている。しっかり反省――」

「ふざけるな! ケヒンさんが謀反を考えるわけないだろ!」

「でたらめだ! 無理やり自供させたんだろ!?」

「ええい! 黙れ農奴共! 貴様らは永遠と麦を育てればよいのだ! そもそもバアル家の土地で麦が作れることをありがたいと――」

「ふざけんな! この土地は俺たちのご先祖様が開墾されたんだ!」

「これ以上重い税は払えない!! 冬が越せないぞ!!」

「黙れ黙れ!! 農奴共がこの私にはむかうというのか!? やれ! 見せしめだ!!」

 神父と共に村に来ていた剣士が剣を抜く。神父がうなずくのを見ると剣士は手近な娘に切りかかった。

 アウレは娘をひっぱって助けようとした、遅かった。

 鮮血が飛び散る。あぁ医者がいないこの村ではもう駄目だろう。いや、医者がいてももう手遅れだ。出血がひどい。

「わかったか! 自分たちの立場をわきまえ、ぐあああ!」

 神父の腹に矢が生えていた。

「ふざけんな! こっちは虫けらじゃないんだ! 粛清だ! 俺たちから不当に搾取する貴族階級を粛清するんだ!!」

「へ、へスラー!?」

  振り返れば弩を持ったへスラーがいた。みんなもそうだ、そうだと石や鍬を持ち出してきた。

「おい、やめ……」



 止めた時には遅かった。役人を俺たちは殺してしまった。

 そして一番最悪だったのが剣士を逃がしてしまったことだ。このままだと騎士団がくる。

 間違いなく終わりだ。

「どうするんだヘスラー。このままだと――」

「わかってる。わかってる。わかってるよ……」

 ヘスラーだけじゃない。村の全員が今は冷静になっていた。

 セルゲインさんのせいだ。セルゲイさんがみんなをあおるようなことをするから普段はどんなに税が重くなっても抗議の声なんて上げやしない。俺たちは農奴だ。それ以外の生き方を知らないんだ。だから、おとなしく麦を作っていなければならないのに……もうお終いだ。みんな、村人みんな皆殺しにされる。

「そ、そうだ! セルゲイさんが武器を作るっていってただろ? 裏山に小屋を建ててそこに草に糞尿をいれたろ? あれを使おう」

「あれは完成までに1・2年かかるって……」

「で、でもセルゲイさん言ってたろ? 『しょうせき』を作れって。家畜小屋の土とか集めて煮て灰をそこにいれたやつ! あれなら――」

「無理だ。あんなのでどうやって騎士団を相手にするんだ。セルゲイさんは、悪魔だったんだ」

 そうだ、あの人は悪魔だったのだ。俺たちを破滅させるために使わされたのだ。こんなことなら村に案内しなければよかった。



「同志諸君! 待たせたな!!」

 俺たちをあおった主が帰ってきた。いや、ただ帰ってきただけではない。セルゲイさんの後ろには荷車や男たち、女たちもいた。全部で50人はいるのか?

「せ、セルゲイさん!! あんた、どこに行っていた……ってクサ! 臭いよセルゲイさん!!」

「武器を手に入れた。これで革命が起こせるぞ!! あとべつに私が臭いのではなく積積荷が臭いのであって――」

「そ、それよりもあんたのせいだ!」

「ど、どうしたというのだ同志ヘスラー!?」

 ヘスラーは泣くように騎士団がくることをさけんだ。村人たちが全員出てきた。みんなセルゲイさんをにらんでいる。

「そうか……」

「そうかじゃない。お前のせいだ。お前のせいで、俺の妹は……俺はそれが許せなかった。だから役人を俺は弩で撃ってしまった……」

 そうだ。あの剣士が切った娘。あれはヘスラーの妹だ。ヘスラーと違って気立てがよくて、しぐさが可愛らしい少女だった。

「同志諸君。聞いてくれ。同志ヘスラーの妹が貴族主義者に殺された。このままでは全員殺される!」

「そうだ! あんたのせいでな!!」

「同志ヘスラー」

「なんだよ!」

「よくやった!!」

 セルゲイさんは泣いていた。大の大人がボロボロ泣いていた。

「みんな! 同志ヘスラーは我々に先駆けて立ち上がった! よくやってくれた!! 本当によくやってくれた! 次は我々の番だ!! 時は満ちた! 人民の血税の上に胡坐をかく貴族主義者を滅ぼすのだ!! 今こそ立ち上がれ全国のプロレターリアよ!!」



 それからは地獄のように忙しかった。俺たちはまず、『しょーたい』と呼ばれる8人程度のグループに年齢別に分かれて、グループのリーダーを決めた。

 8歳から15歳、16から20歳、21から50歳、それ以上の年齢。セルゲイさんが連れてきた人たちもすでに『しょーたい』に分かれていた。

 そのセルゲイさんが連れてきた人から武器をもらった。しかし、その武器は剣や弓でなかった。

「……なんですか、この筒は?」

 そう、筒としかいえない。木の台座に金属の筒が固定されている。木の台座は細長くて、筒が途切れた後は婉曲を描いている。筒の後端には曲がった金具がついている。金具には何かをはさむような溝がついている。

 金具を押すと、ちょうど筒にあいた穴に入るようだ。

「銃だ」

「じゅう……? セルゲイさんも持ってる……あれですか? 形がだいぶ違う……」

「私のよりだいぶ原始的だからな。本当ならミニエー銃のようなものが欲しかったが、技術的に無理そうだからやめた。引き金の機構は複雑になるだろうから廃止、ハンマーもバネを組み込まないといけないから省略して手動で引き起こしたりしなければ――」

 なにを言っているのかわからないが、俺たちはこれで戦うのか? すごく不安だ。まだ鉈や狩猟で使う弩のほうが有効な気がする。

「同志セルゲイ。編成が終わりました。小隊長も決まり、集まってもらってます」

「よし、作戦会議だ。奇数の小隊は練兵を、偶数の小隊は火薬の精製を行うように」

 セルゲイさんが何をいっているのかわからなかったが、ただ、殺されるだけではなくなったようだ。



 それから俺たちはかやくという黒い粉を作っり、れんぺいを行ったり、ざんごうというものを掘った。気がつくと役人を殺して3日を迎えていた。

「騎士団だ! 騎士団がズルワルドに入った!! 宿を接収してるから明日には攻めてくる!!」

「よし! まずは初陣だな」

 セルゲイさんは相変わらず悪魔のような顔で笑った。


少し同志セルゲイの銃について。


マスケット銃のようなストックがついた火縄銃(ストックがついてるほうが安定するんじゃね? という発想)。

引き金は省略されており、ハンマーを手動で動かすことで着火させる。

もののけ姫のエボシ様が使ってた石火矢のようなものとお考えください。

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