革命的第2話
セルゲイ・ゴルシコフ
仕事熱心(意味深)なソ連の政治将校。
ソ連科学アカデミーで化学を修学していたが、第二次世界大戦により学校を中退して軍隊に志願する。
仕事熱心(大事なことなのでry
「かくめい……?」
農夫――いや同志アウレと共にアウレの村に私は身を寄せることにした。
「そうだ。同志アウレ。現行の政治体制では人民は貧困にあえぐだけだ。王や貴族共を処刑して人民が政治を行うのだ!」
「せ、セルゲイさん! そんな大声で王様や貴族様の悪口を言ってはいけません! 捕らえられてしまいます!」
この世界の農奴――彼しかあったことは無いが、革命の意思が足りない。自分たちが王侯貴族から搾取されるだけの家畜に成り下がっているのに決起して体制を変えようとしない。
「それに魔王を倒すのになんで王様たちを……殺められるのでしょうか?」
殺める、というくだりを小声で話すアウレには怯えが見えた。ここは根本的な話をしなければならないだろう。
「いいか同志アウレ。同志の生活はなぜ苦しいのだ?」
「それは……税が重いからです」
「ではなぜ重い税を払う?」
同志アウレは顔を伏せてつぶやく様にしゃべった。だからどうしてそんなに陰気なオーラを出しているんだ。
「私が農奴だからです」
「では農奴を辞めればいいではないか」
アウレに苦笑が起こる。そう、アウレたち農奴は例え貴族の荘園から逃げ出しても農奴なのだ。
たとえ逃げ出したとしても彼らは農奴以外の生活を知らないのだろう。
つまり農奴としての生きかたしか知らないのだ。アウレが言ったようにここの農奴には学がない。
学がなければ商売はできない。ただ単に麦を育て挽いて領主に収める以外の生活が出来ないのだ。
そのため農奴をやめることなど出来るはずがないのだ。
ただし、今の政治体制のままなら、の話だ。
「貴族主義者どもを粛清して新しい政治を作るのだ。人民による人民のための政治だ。」
「しゅくせー?」
「お前たち農奴を苦しめる現況を(物理的に)なくすのだ! つまり圧政からの解放だ。全ての権力を評議会に集めるのだ」
アウレは少し困ったような顔をしながらうなずいている。
うん。完全に共産主義を理解してないね。農奴だったんだから学もないんだね。シカタナイネ。
「まずは教育をすべきか……いや、そんな悠長なことをしている暇はない。やはり武器と兵士を集めて貴族共を粛清するしかないか」
「セルゲイさん、つまりあなた様は貴族様をどうするおつもりなんですか?」
「簡単に言うと貴族や地主と言った富に飢えたろくでなしを抹消するのだ」
我ながらに簡潔な物言いである。前の世界の時もそうだったが命令とかは簡潔であるほどよい。
例えば突撃しろとか。
「そそそそ、それってつまり一揆を起こせってことですか!?」
「何をそんなに青くなっているのだ?」
一揆とは人聞きが悪い。これは革命や解放である。そもそも一揆だと田舎臭いだろ。
「一揆の首謀者は火あぶりの刑になるんですよ!! 一揆を起こした領地にはさらに重い税が課せられるんですよ!!」
「それは革命が失敗した時だろ? そういうものだ」
革命を前に消された同志たちのことを思うと忍びない。あの狂ったドイツや日本人たちは赤狩りと称して同志の命を奪っていった。
ま、最終的に大祖国ソビエトが世界を共産主義に染めるから問題ないけどね。やったね同志!!
「それよりもあなた様の"じゅう"で魔王を倒してこの戦争を終わらせてください。あなた様は伝説にある異界の勇者様ですですから――」
「勇者? 私はただの政治将校だ。それにさっきも質問したがお前たちはなぜ苦しいのか? お前の答えはつまり魔物が原因ではない」
アウレはポカンと口をだらしなくあけた顔で立ち止まってしまった。同志が歩かないとアウレの村に行くことができない。だから私も立ち止まる。
「魔物が原因ではない……とは?」
「そもそもあの魔物はそんなに村を襲撃するのか?」
「いいえ。そんなには来ませんが……こっちに迷ってくるようです。月に二回か三回くらいです」
数を聞くと先ほどのように一匹、多くて五匹程度で村人でも大人数で相手をすれば倒せるとのことだ。
「つまりお前たちは魔物の被害をそんなに受けていない。もしくは軽微だ。ではなぜ苦しい?」
「それは……租税が重いから……です?」
「つまりお前たちから重税をかけて私腹を凝らす堕落した貴族がお前たちを苦しめているんだ!!」
貴族様の悪口はいけないとアウレは口に指をあてて声を小さくする。
「税が重いのは戦のためです。仕方の無いことです。だから貴族様が悪いのではなく戦をしてくる魔物が悪くて……戦が早く終われば暮らしもずっと楽になるはずです」
「あまーい!!」
へブッと声を残してアウレの体が宙に浮いた。見たか! これぞ反革命分子を矯正するための革命的パンチだ。
「戦争が終わったとて税が軽くなる保障はないんだぞ!! それに国防を勤める軍がちゃんと機能していれば魔物を退治して戦争も終わるだろう。それが出来ずに税だけを吸い上げるとは本当に許せない!! 同志アウレ! 私は非常に怒っている。全てのツケを支払うのは王や貴族でもない。農夫なのだ!! 奴等はなんの苦労もなしに飯にありつけているんだ。私はそれが許せないのだ。血税を湯水のように使う貴族共が憎いのだ。だから今こそ――」
「アウレー!! 大変だ! アウレ!」
今まで向かっていた方向から声がした。私もアウレも何事かと空気が変わってしまった。
「……ここだ! どうしたへスラー!?」
「アウレ! 大変なんだ!! 領主様の使いが村長を捕らえに来たんだ!!」
俺とアウレは鋭く視線を交じらせた。
「セルゲイさんがしゅくせーをするからお役人が――」
「いや、まだ何もしてないぞ!?」
誤解しないで欲しいのですが、私は共産主義者ではありません。
マルクス主義が~とか言われてもさすが同志!物知りですね!くらいしか言えません。
NO共産主義者YES共産趣味者。