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革命的第11話

やぁ同志諸君


久しぶりに赤いお話のこうしんだぞ!


赤くない鉄砲のお話も鋭意執筆中なのでそちらもよろしければどうぞ

 アラン平原の戦いにおいてバアル騎士団は大きな敗北を喫した。

 バアル騎士団はその後、ヴァスドン関所までの後退を余儀なくされたのに対して赤軍は勢いにのり、ヴァスドン関所までの街道を制圧し、その沿道にある村々の人民を吸収して勢力をさらに拡大させた。



「同志ヘスラー。プロパガンダの調子はどうかね?」

「かねがね順調です。先の会戦から農民たちの多くが加わってきました」

 ズルワルドで得られた印刷機と大量の資金により、大量の情報を大量にばら撒くことができるようになった。そして先のアラン平原での戦いにより、正規軍より我ら赤軍が勝っていることが民衆に広まるようになった。

 しかし、これは諸刃の剣だ。反戦的なポスターが貼られればこっちの体制も厳しくなる。

「では引き続き、検閲を頼む。ケニノよ。バアル領外での宣伝活動はどうなっている?」

「はい、同志セルゲイ。昨日にズルワルドを出発しました。ビラの他にゴルシコフ銃とカートリッジも持たせてあります。我らケリトアザ赤軍の中でも優秀なものをえりすぐった猛者ばかりです」

特殊部隊スペッツナズによる敵戦線奥深くの破壊工作任務は重要だ。上手くすれば後方から敵を挟撃できる」

 私はケニノに命じて少数の特殊部隊を編成させた。その目的は敵の後方における破壊工作だ。

 ファシストの線路を爆破したり、要人の暗殺などを行うなどの特殊な任務をイギリスがしていたという。

 それを参考に私はケリトアザ赤軍の中から優秀な人材を選び、ケニノの指揮下においた。

 任務は戦線奥深くの破壊工作や要人の暗殺、反体制派のデモの誘発などだ。

「セルゲイさん、それよりも資金がつきそうなんですが……」

「アウレ! どういうことだ!?」

「どうにも、こうも、ポスターやビラの大量生産に銃や火薬の製造――硝石の購入とかで工房の資産がつきそうなんです。どうしますか?」

 うーん。資金が回収できなければ赤軍の補給物資は干上がってしまう。やはり早めにヴァスドンを攻略して資金を接収しなければならないだろう。

 まぁ落ち着いて内政ができるようになれば税金を取り立てればいい。それまではなんとしても耐え忍ばなければならない。

 最悪、軍票を作ればいいだけのことだが……。

「同志ケニノ。悪いがヴァスドンの偵察に向かってくれ。同志アウレは兵站の準備が出来次第、全軍をもって出撃し、ヴァスドンを包囲するんだ」



 ヴァスドンは堅城だ。

 細い谷間を横切るように伸びた城壁により王都に通じる街道を完全に塞いでいる。

 ヴァスドンはその地理的要因から包囲するのが困難だ。ヴァスドンを包囲するには街道の反対側からも攻めなくてはならない。

 しかし谷を横切るヴァスドンは包囲するとなれば険しい山道を踏破するか、別の街道を使って迂回するしかない。

 城壁も石造りの重厚な設計だ。投石器を設置しようにも街道の幅が狭いので数をそろえた展開も難しい。おまけに投石器に用いられそうな岩は撤去されている。

 地理的にも守られたこの関所は要塞といってもいい規模の守備隊を抱えている。

 そのヴァスドン関所では篭城の準備が始まっていた。

 周辺の村々から麦や肉、果物を大量に徴発しようとしていた。

 しかし、街道を制圧した赤軍の散発的な攻撃や村の離散が起こり、上手い具合に物資を確保できないでいた。バアルはこのことに憤慨していた。

「どういうことだ!? 麦くらいどうして集められない!!」

 ヴァスドン関所の会議室。憤慨したバアルを前に参謀は顔を青くしていた。

「それが……強制的に物資を徴発することに農奴たちが反発しております。無理に徴発を行えば一揆軍につく恐れもありますので得策では無いと思われます」

「……仕方が無い。では徴発をやめて購入を――」

「それが、農奴共は我々を敵視して徴発も金による購入も渋っています。購入については市場の三倍もの値段を請求しています」

「ふざけるな!! そいつらも一揆に加担しているではないか!? 村長の首を刎ねてもいい!! さっさと物資を集めるのだ!!」

「しかし、そのような事を行えば農奴は必ず我らから離反します。我々が農奴に対する虐殺を行ったというビラをあいつらは読んでいますし、反発が強まれば――」

「農奴の虐殺だと?」

「はい。罪もない農奴の娘を切り殺したと」

 ふざけるな。おそらく流言飛語だ。農奴たちにありもしない噂で怒りを駆り立てさせている。

 しかし、篭城するためには物資がいる。

 再度の攻勢をかけるには我がバアル騎士団の兵力は足りない。

 魔王軍と戦っている南方軍集団から兵力を転用するか? いや、すでに南方軍集団はかなりの数の兵を中央軍集団に引き抜かれている。

 クソ。ユルムリルのやつめ。次の円卓会議では覚えておけよ。

「王都からの増援は?」

「早馬を送りましたが、まだなんの返事も……」

 物資の確保もままならならず、このまま篭城を迎えるのか? 幸い、一揆風情がヴァスドンを包囲することは出来ないだろうから、後方から物資を運びこむことはできるだろう。

 しかし、一番危惧しなければならないのは敵に魔法が仕えるものがいるという事だ。それも複数いるようだ。

 あの焔の魔法を何とかしない限り、我々に勝機はない。

「弓矢の準備はどうか? あの魔法で被害を受けていないのは弓兵だ。おそらくあの距離では魔法が使えないと見た。弓を大量に準備し、敵に射掛けるのだ」

 ヴァスドン関所の兵力は千人弱だ。先の戦いを思えば兵力が足らないだろう。

 熟練した魔導士一人で千の軍勢と渡り合う戦力といわれる。出来れば王都から義勇軍が欲しい。なんとしても敵が来る前に王都に向かった使いが援軍を引き連れて欲しい。



 それから三日後。ケリトアザ赤軍はヴァスドン関所の南面に布陣を始めた。色々な場所で赤い旗が踊っている。

 風に乗って王侯貴族を侮辱するような声が届く。

 終いには『降伏すれば自由が待つ』と大きく書かれた看板が立てられた。

「バアル様! これでは舐められっぱなしです。城門を開き、我らバアル騎士団の威光を――」

「駄目だ中隊長……」

 確かにバアル騎士団を持って吶喊すれば敵は恐れるだろう。しかし、バアル騎士団は先の戦いで疲弊してまだ再建の見通しさえ立っていない。それに王都からの返事が一向にない。

「中隊長よ。一揆のやからには攻城塔も投石器もないというではないか。それではこのヴァスドンは落ちない。今は援軍を待つ――」

 落雷のような音が聞こえた。大きな振動だ。窓の外を見れば城壁から煙が上がっていた。

「な、なんだ!?」

 天気は晴朗だ。雷が落ちるはずは無い。あ、また落雷の音だ。

「うあ! あ! あれは見張り台のほうか!?」

 見張り台が大きく傾いて崩れ落ちた。断続的に聞こえる雷の声と爆発はしだいに城壁から関所内に起こったり、城門付近を破壊させた。

「な、何が起こっている!? ま、まさか敵の魔導士が……」

 ふと空を見上げると黒い塊がこちらに向かってきていた。反射的に頭を抱える。黒い塊は隣の部屋に落ちた。激しい揺れと衝撃が襲ってきた。

「くッ!」

「バアル様! お怪我は!?」

「かすり傷だ……」

 しかし、おかしい。この関所には要塞並みの防御用結界が張られて魔道攻撃を無力化するはずなのに……考えられるとすれば魔力で石や岩を撃ちだしているかだ。そうか。あの黒い塊はこれ以外に考えられない。

 だが、投石器に使えそうな岩はすでに撤去させている。一体、何を打ち込んでいるのだ!?

 その時、部屋の扉を打ち破るように参謀が入ってきた。

「バアル様! 敵の攻勢です! どうかご後退の決議を!」

「後退!? 撤退するというのか? この関所は天然の要塞だ。それよりも矢を射かけよ!」

「バアル様! 敵は弓の射程外から攻撃してきます! 打ち返せません! それに先ほどの攻撃で魔方陣が崩れて結界が破れました。もはや我々は魔術的防護を受けれません。こうなってしまえば勝ち目はありません! ですから城を出てください。バアル様!」

「ならん! ならんぞ!! 騎士たるもの前線で戦わなければならん!」

「バアル様がおられなければ騎士団の再建も領地もどうなされるのですか!? さぁ、ここは私に任せてお逃げください!!」

 いいたいことは山積みにあった。しかし、参謀の死を覚悟した目を見れば、答えなければならなかった。

「すまない。援軍をつれてすぐに戻る。私の関所を敵に奪われるな!!」

「御衣に!!」

 私は騎士長を連れて部屋を出た。振り返って長年、私に仕えてくれた参謀の顔を見たかった。しかし、それは成らない。

 参謀が泣いているから、私はその顔を見ては成らない。騎士が泣く時、それは他人に見られては成らないのだ。



「よいではないか。同志ケニノ。親方に礼を言ってくれ」

「それにしても、すごい威力ですね」

 形こそ徹甲弾のように紡錘形をしているがただの鉄の固まりに過ぎないので着弾した爆風で殺傷力を挙げることは出来ないが、攻城兵器としては中々の威力がある。しかし、命中率は期待できない。

 ここは数を撃ってごまかすしかない。まぁ、実際に敵の城壁を打ち破るだけではなく、城内の兵が大きく混乱するだろう。

「あと1時間は十分に撃ちこむのだ。そしたら作戦を工程二に進めるのだ」

 我々の戦闘教義ドクトリンによれば火力により敵戦力の三分の一を撃破するのが基本だ。

 バグラチオン作戦の時などファシストの火砲が九五〇〇門だったのに対して我々は二万門以上もの火力を投入したのだ。

 双眼鏡をのぞけば退廃した貴族主義の建物は噴煙を上げながら崩れようとしていた。

 敵戦力を殲滅するのはいいが、後々はあれを接収して司令部に使いたいからあまり直撃させたくないという本音はある。

 しかし、私が我慢して貴族が滅ぶのなら私は大歓迎だ。盛大にやれよ、同志。

パン!

 うん? 今、銃声が聞こえたような……。

「同志ケニノ。先ほど銃声が聞こえなかったか?」

「そうですか? 歩兵にはまだ攻撃開始を告げていませんし……聞き間違いでは?」

 そうか。気のせいだったか。

「同志! 同志!」

「今度はヘスラーか。どうした?」

「言われたとおり、トンネルを掘っています。工程としては半分程度です。そこから城門付近に出て、塹壕陣地を作ると成ると、明後日くらいまでかかりますが……」

「時間がかかりすぎる。明日は総攻撃だ。なんとしても明日までに城門付近まで掘り進すめよ!」

 そう、明日は総攻撃だ。それまでに作戦を第二段階に進めよう。



 夜の帳が下りた。私は砲兵隊に攻撃辞めの命令を出す。関所からは赤々とするかがり火の光が漏れている。

 城壁を確認すれば崩れた箇所が複数見える。城門も破壊されているが、木材をかき集めて一応の補修をしてあるようだ。

 夜が明ければまた砲撃を再開させて壊してやろう。

「同志ケニノ。作戦工程の二を発令する」

「わかりました。同志セルゲイ」

 ケニノはメガホンを両手に持って大きな声で叫ぶ。

「兵士の諸君! 任務ご苦労である! あなた方は勇敢に戦った! 我々ケリトアザ解放赤軍はあなた方の勇気をたたえて降伏したものに安全と自由! あったかいスープを飲ませる準備がある! どうか降伏してくれ!」

 詰まるところ、降伏勧告である。こちらもかがり火を焚いてその光で文字が読めるような位置に看板を置く。

 そこには共産主義の素晴らしさ。王侯貴族がしてきた暴虐な出来事。故郷の親について。

 戦況の悪化により王国はヴァスドンを放棄した。様々な看板が並べられる。

「ん? ヘスラーか。塹壕はどうか?」

「トンネルだけなら城門まで通じました。こっちも工程二を行っていますが、降伏を訴える娘が矢を射られそうで危険です!」

「矢よけの板はあるのだろう? なら問題は無い。それに女の声が聞ければ奴等の戦意は落ちるが、その女が私たちが書いた台本を読んでいると知れば効果はない。板で隠しておくのだな」

 様々な降伏勧告が行われた。私は双眼鏡で城壁を伺っていると、暗闇に動くものがあった。

 兵士だ。しかし武器を持っているようには見えないし、おそらく砲撃で崩れた城壁から這ってでも出てきたのだろう。

 それから程なくしてアウレとヘスラーにつれられた敵の守備兵が数人、私の前に連れてこられた。

「セルゲイさん。どうやら関所から逃げてきたそうだ」

「そ、そうだ! オラたちはもう真っ平だ! 元はといえばオラたちは農奴だ。無理やり徴兵されて、城で戦えって……もうたくさんだ。村に帰って麦の世話をしたいんだ。援軍もこないというし、バアル様は関所を脱出されたし……もう戦なんてうんざりだ。どうか、どうかお助けください!!」

 いい調子だ。

実際、貴族側に援軍が来るかなんて知ったことではない。しかし、援軍もなく、貴族側に大儀がなく、故郷を思い出させるような文面は効果がある。

 我が大祖国ソヴィエト連邦のドクトリンでは三分の一を火力で殲滅し三分の一を通信で殲滅すれば、残りの三分の一は自然に崩壊するのだ。


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