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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革〜』  作者: くろめがね


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40/105

第40話 授業禁止令

40話です。

12月14日改稿

封筒を読み終えた僕を、

子どもたちと大人たちの視線が包んでいた。


誰も声を出さない。

だが、その沈黙は祈りのそれではない。


――判断を待つ沈黙だ。


「……先生」


ミナが恐る恐る聞いた。


「なんて……書いてあったの?」


リオの声は、怒りを抑えきれていない。


「教団……何をしてきた」


僕は紙を丁寧に折り、

あえてすぐには答えなかった。


視線が集まり、

空気が張りつめる。


「――授業を“禁止”するそうです」


ざわっ、と音が立った。


「なんで!?」

「先生は何も悪いことしてねぇ!」

「教団は……そんなに怖いのか……?」


怒り、困惑、不安。

感情が一気に噴き出す。


僕はチョークを地面に置いた。


(ここが分岐点だ)


このまま授業を続ければ、

司祭は“祈り室”を武器として使うだろう。


誰か一人を連れていくだけで、

街全体を黙らせられる。


だが、ここで引けば――

せっかく生まれた「考える芽」は枯れる。


沈黙が、元の沈黙に戻る。


リオが僕の肩を掴んだ。


「先生……!

 やめんのか?

 教団の言う通りにするのかよ!」


その手は震えていた。


僕は、ゆっくり首を横に振る。


「授業は――続けるよ」


一瞬、広場が静まり返る。


次の瞬間、

希望に似たざわめきが広がった。


「……ほんと?」

「でも……誰かが連れていかれる……」


ミナの声は涙を含んでいた。


僕は立ち上がり、

子どもたちではなく、

大人たちのほうを見た。


「だから、やり方を変えます」


ざわっ、と空気が動く。


「これまでの授業は、

 “集まる”こと自体が目印になっていた」


僕は地面に、円を描いた。


「人が集まれば、

 教団は“集会”と呼べる。

 祈り室を正当化できる」


円を、指で消す。


「――だから、集まりません」


人々が息を呑む。


「授業は分散します」


「小屋の裏、井戸のそば、倉庫の影。

 一度に教えるのは、二人か三人だけ」


ミナが目を丸くした。


「……そんなの、授業って言えるの?」


「言えます」


僕は即答した。


「教団が恐れているのは、

 “知識”じゃない。

 横につながる思考です」


「だから“集団教育”は弾圧できる。

 でも――」


僕は、はっきり言った。


「“個人が考えること”までは、

 管理できない」


リオが、ニヤッと笑った。


「つまり……

 あいつらを出し抜くってことだな」


「そう」


僕はうなずいた。


「教団が街を沈黙させたいなら、

 僕は街を“静かに動かす”」


広場の空気が、確かに変わった。


誰かが、ぽつりと呟く。


「……先生は……

 本当に、先生だな」


「子どもを守るって、

 こういうことか……」


「……負けたくねぇよな」


その声を聞いた瞬間、

僕は確信した。


(街は、まだ折れていない)


それこそが――

司祭にとって、最大の誤算だ。


僕はチョークを拾い上げる。


「今日の授業は、ここまで」


子どもたちがうなずく。


「でも――

 明日から、“静かな授業”を始めます」


ミナが、涙を拭いて笑った。

リオは拳を握りしめた。


そのとき。


遠くで、塔の鐘が鳴った。


低く、重く、

決断を告げる音。


(……来るな)


教団は、もう引かない。

次は、もっと露骨な手を打ってくる。


それでも――

街は、動き始めた。


沈黙ではなく、

思考として。


誤字脱字はお許しください。

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