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両の手へ
秋空に届かぬ両の手へ
じっくりと軟膏を塗ってやり
だれもいない倉庫にさびしさを
振りまく正午の陽射し
信号待ち虫かごをまじまじみつ
児童らが命を知る過程
(それはもう)叫びも許されるぐらい
平等に積もる時雨である
母が子守唄代わりに口ずさみし
夜曲もいつしか忘れ
一瞬の油断で列車に轢かれちまった
ねこじゃらしへ 《追悼》
気がつけば南窓に
懺悔室ひとつ映されており
国道に雨と燈あかりと車と
電柱に咲く花のにおい
何もない部屋にぽっかりと
浮くぎんいろの蛍光灯
そういえば二十年もこの国で
丹頂鶴に会わずいる
我が言葉 聞く者居らず故
血を流すはただひとり