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事件は資料室で起きています

こんにちは、皆さん。

私は今、資料室で先輩に頼まれた資料を集めています。


資料室は小さい倉庫みたいな部屋なのですが、床から天井まである本棚が十数列並べられていて、その本棚には過去の資料やら、参考文献やらがギッシリと詰め込まれているんです。


ちょっとしたミニ図書館みたいな感じなのですが、ここから資料を探すのはなかなか骨が折れます。



あ、頼まれていた資料の1つを発見。

だけど、ぐぬぬぬ。資料が高い位置にあるため背伸びしても届きません。

仕方ないですね。素直に踏み台を使いましょう。



自力のみで資料を取るのを諦め、部屋の端に置かれた踏み台を取りに行こうとした時です。

資料室のドアノブがガチャっと回って、ドアの奥からお馴染みの三白眼な総長が顔を出し。こちらに向かって歩いてきました。



「なんだアンズ、こんな場所にいたのか。ニックが探してたぞ」

「え、そうなんですか。知らせてくれてありがとうございます。もう少しで資料が集まるので、集まったら戻りますね」

「あと揃えねぇとなのはどれだ?」

「え?」

「いいから、そのメモ寄越せ。どうせ俺は午前中はもう暇なんだ。手伝ってやるよ」



私の手から強引にメモを奪った総長は、「私が先輩から頼まれた資料をメモした紙」と私が既に集めた資料を見比べ、テキパキと足りない資料を集めていきます。


それにしても総長、仕事が早いです。まるで資料の場所を全部覚えているかのようです。いつもしかめっ面で極悪人相の総長ですが、仕事は丁寧で早いんですよね。こういったところは本当に尊敬しています。



「と、後はお前の後ろのヤツだけだな」



どうやら私が総長の仕事ぶりに感心している間に、残る資料は1つになったようです。

さすが総長。仕事ができる男ですね。


そして最後に残された資料の1つは、私がさっき取ろうとした物で。


段々と総長が近づいてきたと思ったら、私の目の前で立ち止まり。私の真上の資料をとろうとしてくれているのですが…。



き、距離が近いです!



私の顔の横に左手をつき、右手を私の真上に伸ばしています。



こ、これはいわゆる「壁ドン」に近い体勢ではないでしょうか。

距離が近すぎて…わわわ、ドキドキしてきました。

心臓の音が総長に聞こえてしまいそうです。



ちなみに私は身長が167cmあり、この世界の女性としては平均より少しだけ高い感じです。それに対して総長は172cmくらい。この世界の男性平均からしたら少し低めです。



なので私と総長が密着すると、総長の息が私の耳にかかって…



かあぁ、と私の顔が赤くなりました。

悲しい事に私は日本でもほとんど恋愛経験がなく、男性との触れ合いに慣れていないんです。

異性にこんなに近づかれたら嫌でも意識してしまいます。


顔を赤くして俯いた私に総長の声が………正確には「総長の心の声」が聞こえてきます。




『今までは顔を見るだけで満足してたんだがな』




というか、総長、資料はまだなんですか!?

さっきまですごい早さで集めてましたよね。なのになんで急にゆっくりになるんですか。早く資料をとって離れてください。私の心臓がもたないです。




『そんな顔されたら、我慢できねぇな』




そんな顔ってどんな顔ですか。からかってないで早くどけてください。

って、きゃあぁぁあ!!!

総長が突然右手で私の横髪に触れ、垂れていた後れ毛を耳にかけました。




『これで顔がよく見える』




って、耳!耳に触れたままなのよくないです。

親指の腹で耳たぶをすりすりと撫でるのヤメてください。

総長が触れているところだけ熱を持ったように熱くなります。




『そろそろ………もう少し攻めてもいい頃合だな』




な!?もう少し攻めてもいい頃合ってなんなんですか!?

今までも充分攻めてましたよね!?これ以上は私耐えられないんですけど!!




「おい、アンズ」




呼ばれておずおずと顔を上げると、瞳に確かな熱を灯した三白眼が間近にあり。

さっきまで耳に触れていた手がゆっくりと頬をなぞりながら下がっていき、人差し指と親指で顎を少しだけあげられたかと思うと、親指でそのまま唇を撫でられて。



こ、これはまずいです!緊急事態です!総長、本当にこれ以上はダメです!!



混乱しまくりな私を無視して、総長の顔が段々と私の顔に近づいて…












「あ、アンズさん、見つけたっす!」




と思ったら、ニックさんがガチャリとドアノブを回して資料室までやってきました。



「あ、なんだクラム長官も一緒だったんですね。って、そんな場所に倒れて何してるんすか?」



ナイスなタイミングで現れたニックさんに驚いて、思わず総長の胸を両手で思いっきり押しちゃいました。

倒れた総長からドス黒く禍々しい空気が這い出てきていますが、私はきっと悪くないはず。



「テメェ、ニック。ワザとだな?ワザとなんだろ、あぁ゛!?」

「え?何の事っすか?………って、ヒイィィッ!!なんでそんなに俺を睨むんすか、ヤメっ!長官ヤメテください、死ぬ!俺が死んじゃいますうううぅぅぅぅ」



哀れすぎるニックさんが不機嫌モード全開な総長から首根っこを捕まれ、ズルズルと資料室から引きずられながら出ていきました。

スミマセン、ニックさん。あなたの尊い犠牲は忘れません。今度何か差し入れするから許してください。

それにしても、



………た、助かったぁ。



残された私はまだドキドキと激しい動悸がする胸を抑えながら、その場にへたり込んでしまったのですが。



こ、腰が抜けて動けません!



総長 「ニック、これ今日中に終わらせとけよ」(←大量の書類)

ニック「ヒイィ!さっきから何なんすか!絶対にコレ今日では終わらない量っすよね!?」

総長 「ツベコベ言わずさっさとやれ!」

ニック「パワハラ反対いぃぃぃ」

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