こんなの残業に入りません
皆さん、こんばんは。
本日、私アンズは職場で残業しています。
が、別に残業がイヤというワケではありません。日本でも異世界でも社畜体質なせいか、残業があってもさほど苦痛ではないんですよね。
それに、こちらの世界では残業といっても1〜2時間程度です。基本の就業時間が17時なので、遅くとも19時くらいには帰れます。日本で下手したら泊まり込みで残業していた私からしたら、こんなの残業に入りません。
と、残業自体は別に構わないのですが、どうも最近、私が残業するといるんですよ。
誰がいるって、例のあの人です。
「おい、仕事は終わったのか?」
はい、泣く子も秒で黙る鬼総長様です。
なぜかここ最近、私が残業すると必ず総長も居残り。私が終わったタイミングで総長も仕事を終え。そして当然のように…
「ほら、だったらさっさと帰るぞ」
一緒に帰るように誘われ…というかもう一緒に帰る事が決定事項になっており。家まで総長に送ってもらうという流れになっています。
「あ、あの長官。長官と私の家は逆方向ですし、送ってもらうのは悪いです」
「あぁ?俺が好きでやってんだから、お前は気にしなくていぃんだよ」
や、気にしますよ。普通気にしますよね?
それにですね、おそらく、多分、総長は私に好意を抱いているワケで。そんな総長に甘えるのは何か違う気がするんです。
せめて告白とかしてくれたら、こちらも断るなりOKするなりで次のステップに進めるワケですが、それもありませんし…。
それに好意といっても色々な意味の好意があるワケですから。もしかしたら総長からしたら恋愛関係の好意ではなく、…たとえば、ほら、ただ単に「身体が好きなだけ」とかそういった好意もあるかもしれませんし(いや、そんな好意があるのかどうかよくわかりませんが)。
だからですね、もしかしたら総長も別に私の事はどうでもよくて、私を気遣ってくれるのは…そういった下心があるんじゃないかって勘繰っちゃうんです。「へへへっ…姉ちゃん、送ってやったんだから身体で礼をしな」的な(注意 アンズの偏ったヤクザイメージです)。
いえ、総長が女性に対して無理やりどうこうするなんて思ってはいないのですが。それでも、男女の関係というのは、いつなんどき何が起こるかわかりませんからね。警戒するに越したことはありません。
うん。やはりここは強めに断りをいれるべきですね!
「長官!あ、あのですね!私は…」
『最近、衛兵連中がここら辺に不審者が出るって言ってたからな。何か起こってからじゃ遅ぇ。アンズは異世界に来て頼れるヤツいねぇんだし、上司の俺が守ってやんないとな』
………総長。(トクゥン)*アンズの心のトキメキ音
私、バカだ。総長は純粋に部下である私を心配してくれていただけなのに。総長の優しさを疑うなんて。
うん、そうだよ。総長はいつも私に優しかったじゃない。顔は怖いけどいっぱい優しくしてくれて、仕事でミスしてもフォローしてくれて…。いつだって私を温かく見守ってくれてたじゃない。
よし、総長にお礼を言おう。今日のことも、今までの事もお礼を言って、そして家まで送ってもらおう。それに私、総長だったら…
『それに、アンズをお持ち帰りできるワンチャンあるかもだしな』
「長官、私1人で帰れるから送りは結構です!」
アンズ 「結局、総長に家まで送ってもらいました」
ワンチャンはもちろんない!