表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/36

番外編④ テメェら、随分楽しそうな話してんなァ

「聞いてくださいよぉ、クラム長官ってばまた俺に関節技かけてきたんすよぉぉ。ちょっと仕事でミスしたからって酷くないっすかぁぁぁ」



食堂でシルヴィアさん、エスメちゃんと一緒に昼食を食べていたらニックさんが泣きついてきました。


ニックさんが総長から関節技をかけられるのは日常茶飯事なのであまり気にしていなかったのですが、本人は気にしていたようです。



「むしろさー、毎日ミスするニックの方が酷いと思うんだけどー」

「クラム長官は真面目な部下には関節技かけたりしないわよ?」



エスメちゃんとシルヴィアさんが総長を援護します。

はい、私もそう思います。それに総長がニックさん以外の部下に関節技かけてるの見たことないですし。総長的にはニックさんとじゃれている………というかニックさんで遊んでいるだけでしょう。



「でも、みんなだってミスする事くらいあるでしょぉぉ」

「そりゃぁ、私たちも人間だからね」

「ニック程じゃないけどー、間違うことはあるよねー」



ニックさんの問いかけに2人がうんうんと頷きます。

その通りです。仕事で失敗した事がない人なんていないでしょう。誰だってミスはあるものです。そこを乗り越え、同じ失敗をしないように頭を使い工夫して人は成長していくのです。



「でしょでしょ?そん時のクラム長官の反応ってどうなんすか?絶対に俺と差があると思うんですけど。ぶっちゃけ、クラム長官って俺以外を怒る事ってあるんすか?」

「私だって長官から怒られた事あるよー。例えばねー………」




【仕事をミスした場合 エスメの証言】


長官って、1回目のミスは許してくれるよねー。私前に計算を間違って規定より多めに税金を徴収しちゃった事があったのねー。

それでミスが分かった時にさー、税金を高く払わされた人はめちゃめっちゃ怒ったんだけど、クラム長官が私の代わりに出て謝ってくれてねー。私申し訳なくって長官に謝りに行ったんだけどー



「お前はもう十分反省してんだろ。俺から言う事はねぇから、次から気をつけろよ」



ってな感じで慰めてくれたよー。

でね、その数週間後に私また同じミスをしたんだけどー、その時も長官が怒った人に対して頭を下げてくれてー。また私が長官のところに謝りに行ったらさー。

今度は周りを押し潰しそうなくらい重苦しい空気をまとった長官がいてー、凶暴な熊でも瞬殺できそうな視線で睨まれてー、地面にめりこんでそうな低い声で言われたのー。



「エスメ、次同じ事やってみろ………海に沈めるぞ」




―――正直、死ぬかと思った byエスメ





「あぁぁ、分かるっすぅぅ!長官に睨まれたらビビっちゃいますよね。それだけで心臓止まりそうになりますよねえぇぇ!」

「クロム長官は同じミス2回続けてしたら厳しくなるからね」

「そうなんですよー、でも睨みが怖すぎて絶対に同じ失敗できないって思っちゃうんですよねー」

「そういうシルヴィア姉さんはどうなんすか?」



【仕事をミスした場合 シルヴィアの証言】


私はそもそも普段はミスなんてしないんだけど、どうしても体調が悪くなる時があるのよ。そんな時は凡ミスを連発しちゃうのよね。そんな時に長官は………



「体調悪りぃんだろ?今日はもう帰れよ」

「このくらい大丈夫よ」

「バカ、お前子供がいんだろ?母親が具合悪りぃの続いたら誰が家庭を支えんだよ。ガキのためにも帰って休め。ほら、後は俺がやっとくから」



ってな感じでいつも私の分の仕事もやってくれるのよねぇ。本当よくできた上司だわ。

ただ、同じ凡ミス連発でも、私が大好きな小説「昼楽園~誰にも言えない秘密の関係~(シルヴィアの愛読書。ドロドロ修羅場満載なロマンス小説)の新刊発売日にウキウキしすぎてミスを連発した時は………



「おいシルヴィア。いい大人が小説の新刊に浮かれて凡ミス連発つーのはどういう了見だ?しかもその小説、不倫がテーマの過激なヤツじゃねぇか。テメェのガキは自分の母親が不倫小説を読み漁って、しかも新刊が楽しみすぎてまともに仕事もできねぇアマって知ったらどう思うだろうなァ?お前はそんなんでガキに恥ずかしくねぇのか?」




―――心がボキボキに折れたわ byシルヴィア




「あぁ、分かるっすぅぅ。クロム長官のイヤミって心をえぐりますよねえ。もう鬼姑かって程詰ってきますよねえぇぇ!」

「そういえば私もー、前にネチネチとイヤミ言われたことありましたー」

「でも、お陰で二度と仕事中は小説の事を考えないって誓ったわ」


「ところでさっきから黙ってますけど、アンズさんはどうっすか?」

「えぇ、私!?」

「バカねー、ニック。アンズさんはミスなんてしないじゃんー」

「いえ、そんな事ありません。私だってミスした事ありますよ」




【仕事をミスした場合 アンズの証言】


えーと、直近でミスしたのは………えぇっと、そう!あれは確か数ヶ月前に書類を書き間違えて徴税課だけではなく財務課にまでご迷惑をかけ、クレイ長官が色々な場所に頭を下げてくれた時でした。私、ものすごく落ち込んだんですけど、その時クレイ長官が………



「なんつー顔してんだよ。部下がミスするのは想定内。それをどうにかするのが上司である俺の仕事なんだから、いつまでも気にしてんじゃねぇよ。ほら、飲みに行くぞ」



と飲みに誘ってくれて。それで月夜亭でお酒を奢ってもらったんです。しかも私そこでも飲みすぎて悪酔いしちゃって、長官に家まで送ってもらったんですよ。その後の記憶が曖昧なんですけど、翌朝、起きたらなぜか………




「お、アンズ起きたか。おはよーさん」




―――クレイ長官が私の家に泊まっていました  by アンズ




「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


「ちょっと、なんでみんな無言なんですか!」


しかも3人とも苦虫を噛み潰したような顔しないでくださいよ。私だって話した後に「あ、これ言わない方がいいヤツだ」って気づいたんですよ。居た堪れないんですよ。ここは何かふざけたコメントとかして流す場面だと思うのですが。



「うん、まぁ、長官ですしねー」

「若いっていいわねぇ」

「そっすね(←死んだ魚の目)………あっ、そうそう!お酒と言えば、アンズさんはクラム長官が酔ってるとこ見たことありますか?」



なんか話を逸らされた感じがしますが、まぁいいでしょう。私もさっきの話題を蒸し返されたくないですしね。



「そういえばクレイ長官が酔ったところって見た事ないですね。若い子みたいな変な飲み方しませんし、そもそも長官ってお酒が強いから私の方が先に酔っちゃいますもん」


私が言うと、ニックさんが締まりのない顔でニヤリと口の両端をあげました。


「今度どうにかして酔わせてみてくださいよ。前に騎士団との合同飲み会で一度だけ長官が酔った事があったんすけど、マジウケるっすよ」

「そういえばそんな事もあったわねぇ」

「えー、私も見たことないですー」

「エスメちゃんが入ってくる前だったからねぇ」

「そうそう、長官普段はいつも顰めっ面なのに限界まで酔っ払ったらっすね、想像できないくらい違う感じになるんすよ。それがですね………」



プププと笑いながら言葉を続けようとしたニックさんですが………





「テメェら、随分楽しそうな話してんなァ。俺も混ぜろよ」





背後から聞こえてきた重低音の声で言葉を遮られてしまいました。はい、不機嫌マックスな総長です。



「ニック、テメェは仕事でミスはするは、口は軽りぃは教育の仕方を間違ったようだなァ」

「クラム長官、すんません、これには事情があってっすねぇぇぇ」

「お前がそうなったのも俺の責任だよなァ。仕方ねぇ、責任をもって再教育してやるよ」

「え!?再教育ってアレっすか、まさか血みどろになる感じの再教育っすか!?」

「それはテメぇ次第だろ、さぁて、今から楽しい楽しい再教育の時間だぜぇ」

「ひいいいいいいぃぃぃぃ!」



涙目で必死に謝るニックさんですが、総長にそんなことが通じるはずもなく。

首根っこを片手で捕まれズルズルと引きずられて行っちゃいました。



「ニックさん、大丈夫でしょうか」

「アレで頑丈だし、大丈夫ですよー」

「長官も加減は知っているし死にはしないでしょう」



そうですね、きっとニックさんは大丈夫です。

今、遠くの方で鈍い音と断末魔が聞こえた気がしますが、気のせいのはず。事故でも起きて牛か何かが潰れたのでしょう。

………ニックさん、頑張って生きて戻ってきてください。




それにしても総長が酔った姿、ですかぁ。

う~ん、気になりますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ