番外編③ 何言ってるんすかアンズさん!ホント何言ってるんすかぁぁぁ!?
「あれ、ニックさん。こんな場所で何やってるの?」
あ、アンズさん。なんでアンズさんがこんな場所にいるのかわからないけどラッキー。アンズさんなら長官を止めれるかもしれない!
ってダメだぁぁぁぁ!!!
今の惨状(クロム長官が男達を這いつくばらせてイキイキと痛ぶっている)をアンズさんが見たら絶対にショック受けるっすよ。それで2人が破局になったら………俺が長官から殺されるぅぅぅ!
「あ、アンズさん、奇遇っすね。アンズさんこそこんな場所になんの用っすか?」
アンズさんの視界から長官を遮るように移動しつつ話かけたんすけど、
「私はシルヴィアさんに言われて………あれ?向こうにいるのクレイ長官じゃない?って、周りの人達何で倒れてるの!?」
あぁぁぁぁ、アンズさんに気づかれたっす。しかも長官の方に走って行ってる!ダメっす、今そっちは長官のスキルで重力増してるから、鍛えられた騎士ならともかく普通のアンズさんが入ったらマジ危険っすよぉぉぉ。
「よぉ、アンズじゃねぇか、どうした?」
と思ったけど、さすが長官。すでにアンズさんの気配を察知してスキルを解いていたみたいです。
とはいえ、今の状況は非常にマズイです。
血みどろで失禁しながら倒れてる男達。そして1人だけ平気な顔して立ってる長官の右手やブーツ、顔には男達を痛ぶった際についた返り血。
ってか、この状況で何で長官はいつも通りの態度なんすか。もっと焦ってくださいよぉぉ。
「ク、クレイ長官………まさかクレイ長官がこの人達を?」
ほら、アンズさん真っ青になって震えているじゃないですか。
やばい。今日が原因で2人が破局したら俺の命がやばい。
「アンズ、お前には知られたくなかったんだが………」
残りの自分の寿命を思いガクブルしている俺をよそに、長官がアンズさんの方に歩み寄って行きました。
長官、ダメっす。いくらアンズさんが長官を好きでも嬉々として敵を痛ぶって遊ぶドS鬼畜って知られたらドン引きされて幻滅されるっすよぉぉぉ。破局待ったなしですよぉぉぉ。
「実はコイツらは陛下の暗殺計画を立てていてな」
へ?
「計画に気づいた俺とニックでバカなマネは止めるようにちょっと説得してたんだよ」
「クレイ長官、そうだったんですね」
いやいや、この状況でよくそんな嘘思いつきますね、長官。ってか、アンズさんもよくそんな嘘信じますね。
どう見てもちょっと説得してたような状況じゃないでしょ、これ。どちらかというと弱者を力技で恐喝しまくった後でしょ。しかも、やりすぎ感が出まくってるでしょ。
つーか、クラム長官はいつも眉ひとつ動かさず流れるように嘘吐くからある意味尊敬っすよ。そういえば、普段からアンズさんに対して嘘………というか不都合な事は隠してますよね。よくバレないよなぁ。一度クロム長官の心の中を覗いてみたいっすね。
「この人達、陛下の暗殺を企てていたなんて、これからどうなるんですか?」
「普通、王族暗殺は計画するだけで極刑だ。さらに本人だけではなく女子供関係なく一族郎党みな何らかの処罰を受ける」
「そんな!」
あー、この設定でまだ話を続けるんすね。これどうやって話を締めくくるつもりですか、長官。
アンズさん、一族郎党皆処罰と聞いて泣きそうな顔してますよ。
「だが、計画に気づいたのは俺たちだけだ。コイツらも深く反省しているようだし………」
「クレイ長官」
「この事は俺達の胸の内にしまっておこうと思ってる」
「ふふ………やっぱりクレイ長官は優しいですね」
いやいやいやいや、何いい感じにまとめようとしてるんすか、長官!
それにアンズさん、この人全然優しくないからね。悪魔だからね。ちょっと気づいて!長官の手や足や顔に血がついてるでしょ、それ全部返り血つーか、長官が男達を痛ぶった痕だからね。長官自体は全くの無傷で男達だけ一方的に痛ぶられていたからね。
「だからアンズもこの事は秘密してくれるか?」
「クレイ長官が望むなら」
「よし、いい子だ」
ちょっ、ちょっとぉぉぉ、長官。何こんな場所でイチャついてるんすか。血がついてない方の左手でアンズさんの頬撫でてる場合じゃないでしょ。アンズさんも何頬さすられてトロ顔してるんすか。目が完全にハートになってますよ。
ってか、這いつくばってる男達もさっきとは違う意味で死んだ魚のような目になってるじゃないですかぁ。
痛ぶられた後にイチャイチャ劇場見せつけられるってどんな罰ゲームですか。
完全に茶番なんすけどぉぉぉ!
………ま、まぁ、茶番ではあるけど、クラム長官もアンズさんとイチャついて怒りが収まったみたいだし、後はコイツらを騎士団にでも差し出せば終了っすね。
「あー、長官。俺コイツら騎士団に連れて行きますね(早くこのバカップル2人から離れたい)」
精神的に非常に疲れたけど、ギリギリみんな壊れてないみたいだし、これで一件落着っすね。
「ちょっと待て、ニック」
って思ったら、長官に止められました。
長官の顔を窺うと………あぁ、めっちゃイキイキしてるぅ。何か悪いこと思いついた時の顔してるぅ。アンズさんがいるのにまだコイツらで遊ぶつもりっすよ、この悪魔。
いやもう十分でしょ、もうコイツらイロイロな意味で心が死んでますよ。もう許してあげてください!
「アンズ、こいつら陛下暗殺計画を立てた事を深く反省していてな。ケジメを付けてぇんだと。何かいい案はねぇか?」
ん?何でアンズさんにそんな事聞いてるんすかね。
「そうですね。でしたら………」
まぁ、でも、アンズさんなら変な案は出さないでしょうし、さっさとアンズさんが考えたケジメのつけ方でも行って今回の件を終わらせたいっすよ。
「小指の先を詰めるというのはどうでしょうか?」
へ?
「私の国(のヤクザ漫画)では、深い反省の意志を表す行為として指を詰めるんです。小指が無くなると剣を握る時に力を入れづらくなりますが、そこは陛下暗殺計画まで立てた罰として潔く受け止めましょう。それに利き腕とは逆の小指なら剣を握るのにも、日常生活にもそこまで支障はないですし、キレイに切り取れば再接合も可能です」(注 アンズの偏ったヤクザ知識)
いやいや、何言ってるんすか、アンズさん!!ホント何言ってるんすかぁぁぁ!?
「ほぉ、それはいい案だな。ナイフならここにあるぜ」
ちょっと長官、ナイフ取り出すのやめてください。倒れてる男達が青ざめて震え出してますよぉぉぉ!
これ放置してたら長官に本当に指を詰められかねません。騎士団の新人の小指がそろって無くなってるとか大問題っすよ。どうにかして止めないと。
「いや、ダメっすよ!そもそもコイツらみんな騎士団の新人なんで。騎士団の新人の小指の先が無いって醜聞にしかならないっすよ。お願いですから、他の方法にしてください。もっと良心的なやつ!」
俺が必死にお願いすると、
「そうですか。それでは指詰めはやめた方がいいですね」
神妙な顔をしたアンズさんが頷いてくれました。
良かった、どうやら指詰めはあきらめてくれたようです。
「でしたら、臓器提供はどうでしょうか?」
はいいぃぃぃ!?!?
「私に国(のヤクザ漫画)では、どうしても返せない借金がある場合、自分の臓器を売って返す習慣があるんです。この国では怪我は治癒魔法で治せますが、病気までは治せませんよね。新鮮な臓器があれば一部の病気なら治療可能になるはずです」
いやいや何言ってるんすか、アンズさん。いやマジで、何言ってるんすかぁぁ!!(2回目)
「ほぅ、いいことを聞いたな。臓器提供なら見た目でも分からねぇし、人助けにもなるから良心的だ。一石二鳥だなァ」
「はい、(ヤクザの)偉い人が人間に腎臓や肺が2つあるのは、いざという時に売るためだって言ってました」
アンズさん、アンタの国の偉い人はどういった倫理観をしてるんすか!それ長官と同じ鬼畜ですよ!!!
ってか、もうアンズさんはそれ以上喋らないでくださいぃぃ。
「よし、なら1人ずつ順に臓器とっていくか。任せろ、料理は得意だから人を刻むのも上手いぜ」
ちょっと長官、這いつくばってる男をナイフで切り刻もうとしないでください。もうそいつら怯えきって全身ガタガタ震えてるじゃないっすかぁぁぁ。
「クレイ長官!臓器は新鮮さが命です。取り出したら氷漬けにするか物質保存の魔法をかけましょう」
ちょっとアンズさん、何長官が解剖すること全肯定してるんすかぁぁ。
ってか、黙って!お願いだからマジでもう黙ってえぇぇぇ!
「ダメっすよ、長官。この国の医療技術そんなに高くないですし、長官も医者じゃないでしょう。臓器取り出そうとしてそいつらが死んじゃったらどうするんすか!?」
俺が一気に捲し立てると、アンズさんがピタリと動きをとめ。
「大丈夫だよ、ニックさん。私の国の(ヤクザの)偉い人が言ってたんだけど………」
そして俺の方を向いて優しい笑顔でニッコリと微笑みました。
「もしウッカリ殺っちゃった時は、コンクリート詰めにして山に埋めるか海に沈めれば証拠隠滅できるんだって」
アンズさぁぁぁぁぁん!!
アンタ一体どんな国で育ったんすかあぁぁぁぁぁぁぁ!
後日、悪魔の恋人はやはり悪魔であり怒らせるとヤバい方法で精神的にも肉体的にも抹殺されるという噂が騎士団内でまことしやかに囁かれることになったんすけど………俺は何も悪くないっす。
アンズ「最近、騎士団の人に怯えられてる気がするんですけど…私何かしましたかね?」
総長 「そうか?気のせいだろ」
ニック「(長官、噂の事知ってるのに………面白がってまたアンズさんに秘密にしてる)」




