自意識過剰はよくないです
先日、強面総長から頭ぽんぽんをされた後に心の声………
『さァて………これから、どうやってアンズを落とすかなァ』
が聞こえてしまったのですが。
これはアレです。確かこの世界に召喚される前に女神様が言っていた言葉
「あら、ごめーん。間違って聖女と一緒に一般人も召喚しちゃった。代わりに“あなたに好意を持っている人の心の声が聞こえるスキル”あげるから許して(テヘペロ)」
から考えるに“私に好意を持った人の心の声が聞こえるスキル”のせいに違いありません。
つまり、それは、あの泣く子も秒で黙る鬼総長が私の事を………(ゴクリ)。
いやいや、自意識過剰はよくないです。
総長が私の事を好きになるなんてあり得ません。
だって、あの総長ですよ?
この前も嬉々とした悪人顔で、脱税した貴族をしょっぴいてましたし。
文字通りズルズルと引きずられて連れてこられた貴族はブルブルと怯えながら「牢屋にでも何でも入るから助けてくれーッ!コイツと一緒にだけはしないでくれーッ!!」って泣いて懇願してましたし(一体総長は何をやったんでしょうね)。
街を歩いているだけで毎回のように衛兵(警察みたいなもの)から職務質問されそうになり、だけどジロリとひと睨みするだけで衛兵の方が「ヒイィ!」と青ざめて走り去って行きますし(どうみても悪の親玉です。むしろ魔王です)。
それに、なんとなく総長は女性関係には不自由していないイメージといいますか、綺麗でボン・キュッ・ボンなお姉さん系の愛人を高級マンションに囲って、ガウンにワインで寛いでいるイメージなんです(注 アンズの偏ったヤクザイメージ)。
そんな総長がわざわざ私のような枯れたアラサーを相手にするとは思えません。
そりゃあ、私の事情を知っているのは長官だけですし、意外に面倒見が良い総長は私にもよくしてくれますけど。
例えば先日、夕ご飯に誘われた際も………
「ほっぺにメシがついてるぞ。ったく、まだガキだな」
とか言われながら頬を撫でられ、ついていたご飯粒をそのままペロリと食べられましたけど………
―――ん?
ちょっと待ってください。普通の上司と部下にしては距離感がおかしいような………。普通の上司って部下のほっぺについていたご飯粒食べたりしますっけ?日本にいたときは上司どころか友達にだってされたことないですよ。というか、少女漫画でしか見た事がないような。
そういえば、外食後に家まで送ってもらった時も、ふらついた私を支えてくれて………
「おい、危ねぇだろ。ほら、転ばないように俺の手握っとけよ」
と言われ、そのまま2人で手を繋いで帰ったような………。
―――んん?
あれ?普通の上司と部下っていくら飲みすぎたからって手を繋いで歩きます?距離感がおかしくないですか?いえ、でもコレは優しい総長が私を心配してくれただけで………
「おい、アンズどうした?さっきから百面相して。熱でもあんのか?」
いけない。今は仕事中でした。
仕事中にこんな事考えたらダメですね。
集中しないと。
私が目の前の書類に集中しようとしたら、総長がこちらにスタスタと歩いてきまして。
どんどん近づいてきて、私のすぐ横で立ち止まりまして。
「ちょっとデコ貸せ」
私の両頬を両手で挟み、さらに額と総長の額をピタリとくっつけてきました。
ま、間近に総長の顔が!
あ、総長って意外にまつ毛長いですね。
なんて思ってる場合じゃありません。
そんなに接近されたら私の心臓が爆発しちゃいます!
『別にコイツに熱がないのは分かってんだが。………照れてる顔がたまんねぇな』
な、なんてこと考えているんですか!
熱が無いと分かっているなら今すぐ離れてください!
って、手が!
両頬に触れている総長の手の親指が、私の頬をゆっくりと撫でて。
同時に人差し指で耳の後ろをすりすりと………!
そ、その触り方なんだかイヤラシイです。
それに総長の息が私の唇にかかって。
なんだか、このままキスされちゃいそうです。
ダ…ダメです、総長!
ここは職場です。こんなみんなの前でキスなんて!
私が思わずギュッと両目を閉じると………
「よし、熱はねぇみたいだな。だけどシンドかったら先に言えよ?」
総長がしれっと私から離れて、自分のデスクに戻って行ったのですが。
周りの同僚は騒然としてますし。一部の人は大変生温かい目でこちらを見ていますし。
総長、一体この状況をどうしたらいいんですか!?
というか、身体が熱くなってますます仕事に集中できなくなったじゃないですか!!
こんな感じで続いていきますが、大丈夫でしょうか?
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