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私は、本当は………

今回でラストです。

よろしくお願いします。


無情にもニックさんに総長の自宅に置いて行かれた私ですが。純粋に総長の体調が心配ですし、高熱で寝込んでいる総長を放置したままにはしておけません。


私が勝手に寝室に入っていいものか少し不安に思いつつ、そっと寝室を覗いて見ると、ベッドで眠る総長の姿が。様子を見るために恐る恐る総長に近づいて、顔を覗き込んでみます。



あ、いつの間にか髪が降ろされていて、いつもより若く見えますね。息が少し荒いです。こんな風に弱った総長を見るのは初めてなので、不謹慎ですがちょっと新鮮です。いつもは顰めっ面しつつも余裕綽々な態度ですものね。


それにしても熱で蒸気した頬ってなんだか色っぽいですね。それに少し開いた唇がおセクシーといいますか、私、前にこの唇とキスしたんですよね………



って、病人相手に何を考えているんですか、私は!



これもニックさんが変なこと言うからですね。総長と2人きりで置き去りにされちゃいましたし、次に会った時に思いっきり文句を言わなくては。


あぁ、スミマセン、総長。病気で寝込んでいる総長に対して淫らなこと考えてスミマセン。これは決して総長を襲うつもりではなく、ニックさんが変なことを言ったからで




「アンズ」





「ひゃ、ひゃい!」


総長の声に卑猥な考えが気付かれてしまったのかと震えてしまった私ですが、総長は目を瞑ったまま。


ふー、どうやら寝言のようですね。



「アンズ………行くな………」



総長がうなされながら辛そうな表情で私の名前を呼んでいます。

きっと私がこの前総長を傷つけてしまったから。


こんな時なのに、総長は苦しんでいるのに、馬鹿な事を考えている場合じゃないですね。



―――パチン!



自分で自分の両頬を叩き気合いを入れます。

よし、総長、待っていてください!



勝手に物を借りるのは申し訳ないですが、緊急事態なので仕方ありません。

洗面所からタオルを借りて冷水で濡れタオルを作り、総長の額を冷やします。

本当は脇の下や太ももの付け根も冷やした方がいいのでしょうが、洋服やベッドを濡らしちゃいそうですしね。


それから、ベッドの隣にひざまづいて、うなされていた総長の手をそっと私の両手で包み込みました。


総長の心の声が聞こえなくなった今、総長はもう私のことなんて好きでも何でもない事は分かっています。

でも、今だけ。今だけはこうさせてください。


総長が元気になったらこの手も離しますから………





***





あれ、私、いつの間に寝ちゃってたんだろ。


カーテンの隙間から漏れ出る光の眩しさで沈んでいた意識を浮上させた私ですが、寝起きは頭がぼーっとして考えがまとまりません。


確か昨日は高熱を出した総長の看病をしていて。夜中まで濡れタオルを交換していた事は覚えているのですが、その後は………うーん、記憶がありません。どうやら看病しながらそのまま寝落ちしちゃったみたいですね。


って、そうだ!総長はもう大丈夫でしょうか!?


ばっと上体を起こして総長を見ると



「起きたか。アンズ、おはよーさん」



すでに総長が起きていました。見た感じ、蒸気した頬も荒かった息もおさまり、元の体調に戻ったようです。



「長官!体調はどうですか?」

「心配かけたな。もう大丈夫だ」

「良かったです」

「アンズが看病してくれたんだろ。ありがとな」



言いながら、総長が繋いだままだった私の左手をぎゅっと握りました。


って、そうでした。昨日から手を繋いだままでした!


慌てて繋がれた手を離そうとしても、なぜか総長が手に力を入れたままで離してくれません。

ぐぐぐと思いっきり右に引っ張っても、左に引っ張っても、上にあげても、下に下げても握ったまま。全く離してくれる気配がなく。



「長官、手を離してください!」

「あぁ?先に繋いだのはアンズだろ」

「それはそうですが」

「だったら離す必要ねぇだろ」

「でも、ほら!私汗かいてますし、昨日お風呂にも入ってないですから汚いですし」

「別に汚くねぇよ」

「それに、ほら………長官はもう私のこと好きじゃないですよね。好きでもなんともない人から手を握られるのって嫌じゃないですか」



あ、言ってて泣けてきました。

そうです、もう総長は私のことなんて………




「なんで俺がお前を好きじゃなくなるんだよ?」




なぜってそれは、私が総長に酷いことを言って総長を傷つけて、それで総長の心の声が聞こえなくなったからで。


それよりも………あぁ、そうでした。


私は昨日からずっと総長に謝らないとだと思ってたんです。総長はいつも私を気遣ってくれて、誰よりも優しい人で。でも不器用なところもあって。


そんな総長だからこそ、私は総長に惹かれて。いつの間にか、私の中で総長の存在がどんどん大きくなっていって。



これ以上ないくらい好きになっていて。



でも、そんな優しい総長を私は傷つけてしまいました。二度と触れないでくださいだなんて、本当に酷いことを言いました。




「長官、私、長官に酷い事を言いました。ごめんなさい!」




もう嫌われたのかもしれない。もう間に合わないのかもしれない。でも、それでも、こんな状態で2人の関係を終わらせるのは。それだけは嫌です。


最後に正直な気持ちを伝えるチャンスを私にください。



「あぁ?この前の事を言ってるなら気にするな。大方、誰かに何かを吹き込まれたのか、俺とダントン財務大臣の話でも聞いてたんだろ」

「はい、ダントン財務大臣と話しているのを聞いてしまって」

「ちっ………だったら尚更お前がいるのに気づかなかった俺の落ち度だ」



舌打ちをした総長の眉間のシワが深くなり、不機嫌な声音に変わりました。

その変化が、まるで私に対する嫌悪感を示しているようで。

さっき気持ちを伝えようと決心したばかりなのに、急に弱気になってしまいます。




「それで、あの………長官が私の事を見張っているだけだって………頂いたピアスも私を見張るためだって聞いて。………それで長官に、あんな事………二度と触らないで、なんて………言ってしまったんです」



言いながら本当に涙が出てきました。

こんな時に泣いてしまうなんて、めんどくさい女なんかにはなりたくないのに。

でも我慢しても涙が溢れてきて、全然我慢できなくて。



「でも、私は………本当は………そんな事、思ってなくて………私は、本当は………」



言葉が震えて、つっかえつっかえになってしまいます。

きっと私の顔は今、涙と鼻水でぐちゃぐちゃです。こんな顔を総長に見せるのは嫌ですが。

でも、これだけは言わせてください。







「長官の事が好きなんです!」







私の言葉に総長が目を見開き、驚いた顔になっています。

そうですよね、今更私にこんな事を言われても、困ってしまいますよね。



「本当は………触れないでほしいなんて………全然思ってません。むしろ、私は………もっと」



でも、ずっと隠していた言葉を伝えたら、たがか外れたように言葉が止まらなくなって。

総長への思いがとならなくて。




「もっと、長官に深く触って欲し」




言葉の途中で総長の左腕が私の腰に回され、そのままベッドの上に引き上げられ。

驚きの声をあげる間も無く、唇を唇で塞がれてしまい。

私はそれ以上、言葉を続ける事ができませんでした。



な、何をするんですか、総長!?



抵抗をしようとしても、腰に回された左腕でしっかりとホールドされ。

繋いだままだった総長の右手が私の左手首を掴み直し、伸ばした親指で左手のひらの弱い部分をすりすりと擦られ。

口内の敏感な舌までも、総長の太い舌で絡め取られ。


性急な触れ合いにびっくりして総長を見ると。

いつもよりも余裕がない、熱を孕んだ漆黒の瞳がこちらを見ていて。


総長にこんな顔をさせているのが私なのかもしれないと思うと、心の底から微かな喜びが迫り上がってきます。


体中が熱くなって、なのに頭の中がフワフワとなって。もう何も考える事ができなくて。







『好きだ、アンズ』








………え?総長、今なんと?


というか、え?何で総長の心の声が聞こえるんですか!?


やっと唇の拘束が解かれた後にビックリして総長を見ると、先ほどの余裕のない顔から一転し、黒い笑みを浮かべたいつもの総長の姿が。



『どうせ昨日俺の心の声が聞こえなくて、それで俺がお前のことを好きじゃなくなったと思ってたんだろ?昨日はただ高熱で何も考えられなかっただけだ』



あ、そうなんですね。確かに熱があると上手く頭が回りませんもんね。

心の声が聞こえなくなったと思ったのは、私の勘違いだったんですね。

すみません。



『それから、ダントン財務大臣との話だが。お前の監視を別のヤツに任せるつー話がでてきていてだな。だからそうなる前にピアスを贈って、俺が引き続き面倒見れるように交渉してたんだ』



なるほど、そうでしたか。

まぁ、私に監視がつくのは異世界人なので仕方がないですしね。

ピアスは私の監視という意味と、あと総長が私を自分の場所に引き止めるための意味があったんですね。

うわー、私ったら勘違いばかりして恥ずかしいですね。



………と。

ここ最近の悩みは一気に解決したのですが、新しい疑問がでてきましたね。

そろそろ突っ込んでいいでしょうか。






「なんで長官が心の声で私に話しかけてくるんですか!?」





一体何が起こっているのでしょうか。

私の理解の範囲を超えていて、頭が混乱しちゃいます。



「なんでって、俺がお前のスキルを知ってるからだ」

「はい?」

「覚えてねぇのか?お前が最初にこの世界に召喚された時、鑑定でスキルの確認されたろ。お前が徴税課に来た時点でスキルの内容も聞かされてる。まぁ、徴税課内で知ってるのは俺だけだがな」



………あ。

そういえばそんな事をされたような。

すっかり忘れていました。



「でも、長官。私に心の声聞かれるの嫌じゃないんですか?」

「別に。本当に知られたくねぇ事はアンズの前では考えないようにしてたしな」



な、なるほど。

納得できたような、納得できないような。



「それにお前、思ってる事が全部顔に出るだろ?俺が考えてること聞いて顔を赤くしたり青くしたりするのがおもし………可愛いくてイイって思ってるぜ」



ちょっと待ってください、総長。

今、面白いって言いかけましたよね?

やっぱり私をオモチャにしていたって事ですか?



「だからつい、今までお前の反応を見て遊ん………からかっちまってた。悪かったな」



総長、私で遊ぶのもからかうのもどっちもアウトです。言い直す意味がないですよ。

そして絶対に悪かったとか思ってないですよね。

ニヤニヤと黒い笑みを浮かべながら謝られても全く誠意が伝わってきません。



「やっぱり長官はイジワルです」



私がジト目で睨みつけると、クククと笑いながら言葉を続けました。



「そりゃ光栄だな。………さてと、せっかくアンズから熱烈な告白も聞けた事だし。このままお前で遊び続けるのも面白れぇんだが、そろそろケジメつけねぇとな」



右手を伸ばして頬をそっと触れられ。

いつになく真摯な瞳で見つめられ。

心臓がドキリと高鳴ります。




「俺はもういい歳だし、次の女が最後の女だと思ってる。それこそ俺の残りの人生ラストまで付き合ってもらうつもりだ。俺はこんな重てぇ男なんだか」




あぁ、期待で胸が膨らみます。

もう無理だと思ったのに。

あきらめないといけないのかと思ったのに。

胸の奥がジンと温まり、先程とは異なる温かくて優しい涙が込み上げてきます。





「アンズ、それでも俺の女になってくれるか?」





言いながら、総長に目尻の涙を親指でなぜられ。

嬉しさでまた涙が溢れてきちゃいます。




「はい」




総長の右手の上に私の右手を重ね、手のひらに頬を擦り寄せると。

総長が一瞬嬉しそうに目を細め。それからぎゅっと強く抱きしめられました。


抱きしめられながら、ゆっくりと頭を撫でられ。

心の中がくすぐったい気持ちと心地良さで満たされて。

ほんわかと温かくなって。




『あー、温けぇ。ダメだ、このまま離したくねぇ』




私もです、総長。

あぁ、幸せってこんな事を言うんですね。

このまま私もずっと総長と身体をくっつけて、抱き合っていたいです。





『いっそこのまま押し倒して、ベッドから出れなくなるまで責め立てるか』





って、な、なんて事を考えているんですか、総長!?

物騒な心の声に慌てて体を離して、総長を見ると。

いつものドス黒い笑みを浮かべた総長がこちらを見ていて。




「って、俺は考えてるワケだが、どうだ?」





なるほど。いつもこんな感じで私で遊んでいたんですね。

あぁ、総長の背後に悪魔の黒い翼と尻尾が見えます。

もしかして私、とんでもなく悪い男に捕まってしまったんじゃないでしょうか。




「長官!心の声で私をからかわないでください!」






終わりました!

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました(*^^*)


ラストの展開が一部シリアスもどきになってスミマセン。

最後まで明るいギャグで面白おかしく書ける人が羨ましいです。


今後は様子を見つつ需要がありそうでしたら後日談をアップしようかと思います。

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