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不思議な現象が起きました

こんにちは。

異世界に巻き込まれ召喚された上に、強面総長の下で働く事になったアンズです。

私がこの世界に召喚されてから、早くも6ヶ月が経ちました。

月日が流れるのは早いですね。


最初は怖い人だと思っていた総長ですが、この半年の事をダイジェストで振り返ると…




 


―異世界に来て2ヶ月目―


「今から飯食いに行くぞ。奢ってやるから好きなもん食えよ」

「え、でも…」

「お前なぁ、落ち込んでる時は上手い飯食うに限んだよ。ほら、黙ってないで行くぞ」


異世界ホームシックで落ち込んでいる私をご飯に連れて行ってくれたり。

 



―異世界に来て3ヶ月目―


「大丈夫だ。こんなのミスのうちに入んねぇよ。こっちは俺に任せてお前はそっちやっとけ」

「ご迷惑かけてすみません」

「迷惑だなんて思ってねぇし、俺が好きでやってんだ。気にすんじゃねぇよ」


仕事でミスした私をさりげなくフォローしてくれたり。





―異世界に来て4ヶ月目―


「ははっ、お前けっこー根性あんだな」

「長官の指導のお陰です」

「バーカ、お前が頑張ってたからだろ。他のヤツもお前のこと認めてんだ。自信持てよ」


脱税してた商人から税金取り立てに成功したら褒めてもらったり(強面総長のニカッとした笑顔を頂きました)。





―異世界に来て5ヶ月目―


「責任は全て俺が持つ。テメぇら、一切容赦すんじゃねぇ」

「おおおおおおぉぉぉぉぉ!」

「舐めたマネしやがって、たっぷりお返ししてやんないとなァ」(←ドス黒い笑顔)


あ、スミマセン、これは嫌な思い出でした。今思い出してもゲンナリするので忘れてください。





―異世界に来て5ヶ月目 改め―


「ほらよ、疲れてる時は甘いもんでも食っとけ」

「嬉しいです。ありがとうございます」

「お前が頑張り屋なのは分かってんだが………あんま無理すんなよ」


残業中に飴ちゃんの差し入れをさりげなくもらったり(ちなみに総長は辛党派なので普段飴は食べません)。





―異世界に来て6ヶ月目―


「お前はもっと周りを頼っていいんだよ。頑張るのと無理すんのは違ぇだろ」

「すみません」

「別に謝る必要ねぇよ。つーか、こんな時は違う言葉だろ」

「あ、ありがとうございます」

「ん。………ったく、だから放っとけねぇんだよ」

「え?今何か言いました?」

「何でもねぇよ。ほら、そっちの書類寄越せ」


抱え込んでいた仕事を手伝ってくれたり(この時、異様に周りがざわついていた気がするのは気のせいでしょうか?)。





…とこんな感じで、怖いのは怖いのですが、怖いだけではなく意外に面倒見がよくて優しい上司なんだという事がわかりました。

今では総長の下で働けて良かったなぁと思っています。







さて、それでは今日もお仕事です。


「あ、アンズさん、お疲れ様っす!」


この軽い感じの人は同僚のニックさん。20代前半で明るいイマドキの若い男の子という感じです。


「アンズさん、この前の聖女様がお披露目されたの見ました?すっげー綺麗で可愛い子でしたよね。俺一目でファンになっちゃいましたよー」


聖女様というのは私が巻き込まれ召喚された時の例の女子高生です。良かった。聖女教育は上手くいっているようですね。若い子が国の大事を務めないといけない運命なんて、大丈夫かなぁと心配してたから少し安心しました。


ちなみに私が「巻き込まれて召喚された異世界人」であることは秘密になっていて、一部の人しか知りません。周りには「遠方の東方国から移住してきた人」という設定になっていて、職場で私が異世界人だと知っているのは総長くらいです。



「そうそう、可愛い子だったよね」

「あー、ウチにもあんな若くて可愛い女の子が入ってきてくれないかなー。そしたら毎日仕事頑張れるのにー」


悪気はない。うん、ニックさんに悪気はないと分かっているのですが、アラサー女子には地味に傷つく言葉です。


「うん、そうだね」


ですが、こんな言葉で落ち込んでいる場合ではありません。こういった言葉もさり気なく流すのが大人な社会人というものです。


「あ、でもっすね!アンズさんも元はいいんだからもっとオシャレし」




「おい゛」




後ろから低い声が聞こえました。

これは総長の声ですね。


「あ、クラム長官お疲れさ………ヒイィ!」


どうしたんでしょうか、ニックさん。お化けでも見たような声出しましたけど。

私が振り返るといつもの人相の悪い総長がいました。総長の人相の悪さはデフォなので、今更驚く事ではないと思うのですが。


「ニック、てめぇ。くだらねぇ事喋ってんじゃねぇぞ」


総長がニックさんを羽交締めしてヘッドロックをかけてます。ニックさんが泡を吹いて落ち掛けていますが、職場では見慣れた光景なので誰も気にしません。


もしかしたら総長は私がニックさんの言葉に気分を悪くすると思って、(強引ですが)話題を変えてくれたのかしれませんね。総長のこういうさり気ない優しさが嬉しいです。





『分かってねぇな。あんな聖女よりこっちの方が断然イイ女だろ』





うん?

今、総長の声であり得ない言葉が聞こえたような。


こっちってどっちの女性でしょうか?

この職場には女性が極端に少ないのですが。


総長を見るとまだニックさんをヘッドロックしていました。ニックさんはもう白目剥いて完全に落ちているので離してあげてください。




『まぁ、こいつの良さは俺だけが知ってる方が都合イイしな』




んん?

やっぱり総長の声が聞こえます。

でも、総長、今は口を閉じてましたよね。


怪訝な顔で総長を見てたら、総長と目が合いました。



「あぁ?どうしたよ、変な顔して」

「い、いえ。なんでもありません」

「そっか。まぁ、無理はすんなよ」



総長が私の横を通った時に頭をぽんぽんしながらすれ違っていきました。

ちなみに伸びたニックさんは床に転がったままです。


総長からの頭ぽんぽんされるのは嬉しいといえば嬉しいのですが、他に好きな女性がいるならこんなコミニュケーションは避けるべきです。

好きな人に誤解されても知りませんよ。


と、私が思っていると、総長の背中の方から聞こえてしまったのです。






『さァて………これから、どうやってアンズを落とすかなァ』






んんん?


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