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長官らしいですね

今回は少し暗い話になりますので、苦手な人は読み飛ばしてください。

たぶん、読み飛ばしても話は通じます。

次回からはいつも通りの明るいギャグになりますよ(*^^*)


あと、総長の裏設定を詰め込んだので読みにくいです。スミマセン。

どうしても1話で終わらせてしまいたかったのでこんな形になりました。

「チェイソンさんもマーサさんも良い方ですね」



今、私と総長は夜月亭のテーブルに向かい合って、チェイソンさん達が作ってくれた定食を食べています。


メニューは生姜焼き定食。甘辛のタレに薄くスライスされた豚肉がよくあいます。千切りキャベツと一緒に食べるのも美味しいです。


チェイソンさん達は夜の仕込みがあるらしく、今は厨房でお仕事してます。一緒に食べられたら良かったのですが、残念です。



「あぁ、ロクでもなかった俺の面倒見るだけじゃなくて、学校まで通わせてくれてさ。今の職に就いて、これでやっと恩返しできると金を渡そうとしたら、突き返されたよ。親がガキの面倒を見るのは当然の事だつってな」

「そうなんですね」



チェイソンさん達の話をする時、総長は目元を優しく緩めるので本当に慕っている事がわかります。



「血は繋がってないが、本当の親みたいなもんだと思ってるし、これから2人に何かあったら受けた恩はキッチリ返そうと思ってる」


「長官らしいですね」



義理堅いというか、なんというか…総長のそんなところ、私はけっこう好きですよ。


と、そういえば前から思っていたのですが、長官は食べ方がキレイなんですよね。お箸も使えますし、当然ながらナイフやフォークで食べる時のテーブルマナーも完璧です。普段から姿勢もいいですし、ぶっきらぼうな印象の割には所作がとてもキレイなんですよね。そう、まるで………



小さい頃にしっかりとしたマナー教育を受けた貴族のように。



ですが、総長が貴族だという話は聞きません。総長自身も前に「ただの平民だ」って自分の事を言っていましたし。


ですが、よく考えたらですね。ただの平民があの若さで徴税課とはいえ、国の機関の長という役職に就けるものなのでしょうか。

この世界はそこまで身分制度は強くありませんし、貴族と平民が結婚するのも珍しくありません。

が、貴族制度は未だに存在し、王宮内の長などは貴族がなるのが一般的です。あのニックさんでさえ男爵家の次男だったりします。貴族も勤めている職場の長にいくら仕事ができるからって平民がなれるものなのでしょうか。


となると、子供の頃に亡くなったというご両親の事がどうしても気になってしまいます。ですが、これはデリケートな問題ですし、私から聞いてもいいものなのかどうか………。


私がモヤモヤとしていると、総長が私の気持ちを察したらしく、



「あー、俺の両親は元貴族でな。その頃の縁や………あと学生時代の悪友が権力持ってるヤツで。そいつのコネなんかもあって今、徴税課の長官なんつーもんをやってる。本当は騎士になるつもりだったんだがな」



と教えてくれました。

なるほど、やっぱり総長は元貴族だったんですね。それでしたらなぜ今は貴族ではないのでしょうか。



それにもう1つ。

総長は騎士団の練習に顔を出したり、騎士団から要請があって魔物討伐の手伝いをする時があるくらいには騎士団と親交がありますし、おそらくそこら辺の騎士より強いと思われます。先ほど本当は騎士になるつもりだったと言ってましたし、そんな騎士志望だった総長がなぜ徴税官になったのでしょうか。



「それで俺の両親なんだが………って悪ぃ。こんな話は重いな」



短い息を吐き出しながら、総長が途中で話を止めようとします。



「聞かせてください」



もしかしたら聞いて後悔するのかもしれない。

総長は本当は聞かれたくないのかもしれない。

私のワガママだって事はわかってます。



「長官のこと、もっと知りたいんです」



でも、私はどうしても総長のことが知りたいんです。


テーブルの上に置かれていた総長の右手に、そっと左手を伸ばして重ねます。

いつもは力強い手が、かすかに震えている気がするのは、私の気のせいでしょうか。


総長がもう一度大きく息を吐き、それからゆっくりと話し出してくれました。


「あー、俺の両親なんだが………父親の方が俺が11歳の時に大きな事業に失敗して、でけぇ借金抱えて………それで首吊ってな。………その後は母親が爵位返還して平民になったんだが………その母親も数ヶ月後に流行病であっけなく逝っちまって………ってなんでお前がそんな顔してんだよ」



だって、11歳ですよ。


日本だったらまだ小学生じゃないですか。



「長官、私………なんて言ったらいいのか………」



たとえ強がったとしても、まだ親が恋しい時期じゃないですか。


親が必要な年齡じゃないですか。


そんな時期に家族を2人も亡くすなんて………辛すぎるじゃないですか。





「もう昔の事だ。心の折り合いはつけてるよ」





心の折り合いを付けてるなんて嘘です。

子供の頃の傷はそう簡単に癒えるものではないです。

それに総長、心の声が辛そうじゃないですか。

心の中では泣いてるじゃないですか。






『あんな想いは二度としたくねぇ』






そんなに辛そうな声でなんで強がるんですか。






『できるなら………同じような想いをこの国のガキどもにさせたくねぇ』






自分だって辛いのに。

なんで他人のために頑張れるんですか。



………総長がなぜ徴税官をしているのか、今わかりました。



徴税課はこの国で働いている人の納税報告書が一気に集まります。毎年報告される税の金額を見比べると、その人の仕事がうまくいっているのかいないのかが一目瞭然なんです。


そして総長は昨年に比べて著しく収める税が少なくなった人がいた場合、必ず自分に報告をさせます。「税金を誤魔化してないか確認するため」なんて言っていますが、免税制度の説明や自己破産の方法、就職支援先の紹介などをきめ細かくフォローしています。時には直接その方の仕事先まで出向いて仕事のアドバイスをしています。


前から「なんでここまでできるんだろう」って不思議だったのですが、




きっとそれは………過去の自分のような人を出したくないから。




あぁ、なんて不器用で、なんて強い人だろう。

なんて気高くて、なんて弱い人だろう。





「おい、なんでお前が泣いてんだよ」





気がつけば、私の目から涙が頬を伝いテーブルの上の落ちていました。


いえ、別に悲しいわけではないんです。泣こうなんて思ったわけではないんです。


ただ、総長の事を思うと心が締め付けられるんです。胸がキリキリと痛んで自然と涙が溢れてくるんです。




「ちょうかん………わたし………わたし………」




私が泣いても総長には迷惑だろうに、私はバカみたいに泣く事しかできなくて。

自分の感情を言葉にすることもできなくて。



ただただ子供みたいに泣きじゃくることしかできなくて。



いつの間にか総長が近くまで来て、私を抱きしめてくれたけど。

それでも私は泣き止む事ができず。

総長の背中に腕を回して、幼子が母親に縋り付くように、ただただ泣き続けたのでした。





『アンズ………ありがとう』





そんな総長の心の声を聞きながら。



次回からはいつも通りのギャグ話になりますよー。

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