2日目 1話
聖奈の部屋 朝6月5日
「嫌な夢を見たわ。聖奈!起きなさい!」
「うぅ…みとりちゃん、食べきれないよ〜」
「どんな夢を見てるのよ…」
「んん…おはよう。みとりちゃん」
数分後
「ねぇ聖奈」
「なに?」
「聖奈が生きてきた中で1番辛かった時間は?」
この答え、変わってるのかしら?
「みとりちゃんが植物状態になっている間ずっと」
変わってない?!
「逆にみとりちゃんが今までで苦しかった事って何?」
「ないわ。そんなもの」
「みとりちゃん…成長したね!」
「何よ急に!」
「あ!飲み物持ってくるから待っててね」
「分かったわ」
「聖奈、行きましたね。出てきていいんですよ?」
「あら、バレちゃった?」
「バレバレです。用はなんですか?」
バレバレよ…殺意MAXね
「単刀直入に言うわ。死んで」
「嫌です!」
「?! 」
「私、死にたくないです!あなたの娘さんを利用するだけ利用します!実態を失うと意識消滅しちゃうんですから。聖奈には犠牲になってもらいます!」
これくらい言えば殺してくれるかしら
「みとりちゃん…」
「これは謝罪するべきなのでしょうね。本来は…」
「みとりちゃーん!」
「お、お母さん?!どうしたんですか!」
「それ以上言っちゃダメ!みとりちゃんが生に執着をもっと持ったって聞いたら聖奈は喜ぶわよ!」
「恨んでるんじゃないんですか?」
「休戦よ」
どういう事?油断させる気?
「それより、朝ご飯の準備とかしなくていいんですか?」
「今は聖奈がやってるわ。聖奈はバシバシ動くから助かるわ〜」
「助かるなら実体の事なんかほっといてもいいんじゃないですか?」
「いいんだけど、ほっておくと人として大切なものを2つくらい失いそうな気がしてね」
「親として子があのままではいけないと思ってるんですよね」
「当たり〜!」
「でももう1つは分からないわ」
「私もです。せっかく休戦中なんですからテレビでも見ましょ。再度争う事になったらできませんから」
「いいわよ」
「今日はとあるスーパーが自動レジを導入すると発表致しました」
「自動レジ、便利になったわね〜」
「はい。でも、なんか悲しくなります」
数分後
「自動レジねー…万引きとかどうするのかしら?」
「万引きの被害より人件費の方が高いんですよ。それでも完全無人のスーパーは万引きの的にされてしまう為万引きGメンか雇って万引きを見つけたら店長とかが対処するみたいになるんじゃないですかね」
「母さん!みとりちゃん!ご飯できたよ〜!」
「聖奈がご飯を作ったみたいよ。行きましょ!」
「私もいいんですか?」
「いいのよ。遠慮しなくて」
あれ?このニュースと聖奈のお母さんの状態、何故か親近感が…
外
「私はそろそろ帰るよ」
「みとりちゃん遊びに行こ〜!」
「え?お母さんが心配するわよ?」
「あら、みとりちゃんと遊びに行くの?いいわよ」
「カラオケ行こ! 」
カラオケ
「少し疲れたわ」
「歌いすぎたよ」
「ねぇ、聖奈」
「なに?」
「聖奈は家の家事をどれくらい負担してるの?」
「分からないよ」
「そう。じゃあもう1つ聞くわ。聖奈はお母さんが私を殺人未遂をした事、今はどう思ってる?」
「恨んでるよ。心の底からね」
あの人、悪い人ではないんだけど…どう伝えればいいかしら?
「もう許してあげて。あの人の気持ち、分からなくはないから」
「いいよ」
「あら?案外あっさりね」
「だって今のみとりちゃんは心の底から生きたいって思ってるんだもん!前のみとりちゃんならお母さんの味方して自分が殺されるのを受け入れてたから」
「あ!それは!」
「じゃあ、みとりちゃんは今実体返せって言ったら応じられる?」
「無理よ!」
「んー…嘘じゃないみたいだね」
相変わらず鋭いわね
「だって死ぬのよ!」
「じゃあみとりちゃんのお母さんが死んでも実体を返さなくてもよくなる方法、教えて」
「それは…嫌」
「どうして!」
「だって、ずっと霊体なのは嫌じゃないの?」
「嫌じゃないよ!」
「どうして?」
「みとりちゃんが植物状態になってしまったのは私のせいだから」
「まだ気にして…」
「私ね、霊体化した事で色んな力を得たんだ。疲れを感じなくなり病気にもならない。でもね、それを自分の欲の為に使おうとは思わない。いや、思えないって言った方が正しいかな」
「どうして?」
「私の願いはただ1つ、みとりちゃんを助ける事だったから」
「聖奈、あんたバカね」
こいつは真性の馬鹿ね。でも
「な、失礼だね!」
「子供の頃から変わっていない。あんたの精神年齢はいくつなの?」
こいつ、まさか!
「はは。バレちゃった?」
「あんたにしてはいい演技だったわよ」
「みとりちゃん、すごーい!どうして見抜けたの?」
「疲れを感じなくなり病院にもならない。これを上手く使えばあなたは億万長者。でもそれをあなたは誰かの為に使っている。これは幼稚でないと思いつかない考えよ」
「ねー、みとりちゃんは精神年齢が1年生のままの私、嫌い?」
「…嫌いじゃないわよ。でも…偽るのは良くないわね。親にも隠していたんじゃないの?」
「はは!やっぱりバレちゃってたか!」
「バレバレよ」
「みとりちゃん、やっぱり困惑してるな〜!」
「し、してないわよ!」
「嘘は良くないんだぞ!」
こいつ、間違いなくあの頃の聖奈ね…
「停電?!」
何?いきなり停電?
「キャー!怖いよ〜!」
幽霊なのにくらい所が怖いのにはどう突っ込めばいいのかしら?
「あんた、なにも変わってないわね」
帰り道
「みとりちゃんに精神年齢を暴かれるなんて、思ってもいなかったよ」
「さっきは子供っぽさ満載だったのに戻ったわね」
「当たり前さ。こんなのを人前に見せられないし私はずっとこれで生きてきたから」
「でも、溜め込むのは良くないわよ」
「だったら実体を返さずに済む方法、教えて」
「それは無理」
「私は悲しいよ」
「それにしてもほんと違和感が凄いわね」
「ねぇ!今日はみとりちゃんの家に泊まっていい?」
「いいけど2日連続はあんたのお母さんが許さないんじゃないの?」
「もしもし?母さん?実はかくかくしかじかで…ありがとう!」
「どうだったの?」
「いいって!」
「すきにするといいわ」
2日目突入です。誤字脱字がないようにチェックはしてますがもしあった場合は指摘してくれると嬉しいです