2話
聖奈の家
これだけは聞いときたい!
「私の事、恨んてないんですか?」
「分からないわ。聖奈の意志を尊重したい気持ちもあるし聖奈の霊体化させて生きている今のみとりちゃんに少なからず怒りを覚えている自分もいる…」
この反応…私への怒りが半端じゃないわ
「私に対する怒りは少なからずあるんですね」
毒親だと思ってたけど聖奈のが霊体化した原因である私に対する強い怒りは持ってるのね。いい親じゃない
「みとりちゃんは深く考える必要はないわよ?!」
「私に対する怒りを持ってる事、いい事だと思いますよ。隠さなくていいんですよ。それは聖奈を思ってる事でもあるんですから」
「みとりちゃん…」
「聖奈が霊体化した理由は私の母親が私の意識回復の為に実体を抜き取ったからです。私を殺せば聖奈の実体は聖奈の元に戻ります。聖奈の実体を取り戻したいとは、思わないんですか?」
「無理に決まってるでしょ!殺しなんて!それに聖奈ちゃんはまだ子供よ!未来に希望があるのにそれを奪うなんて人間じゃないわ!」
聖奈そっくりね。その未来に希望がある子供の実体をを私の意識回復に使って聖奈を霊体化させたのは私の母さんなんだけど
「今、その未来に希望がある子供の実体を奪い霊体化させたのは自分の母親なんだけどって思ったでしょ?」
「エスパーですか?」
聖奈に似て勘が鋭い…
「超能力よ!」
「はは。まぁ安心してください。罪悪感で自殺はしません。それだけは約束します」
「ありがとう。聖奈も喜ぶわ。私の考えなんだけどみとりちゃんのお母さんが死んだら聖奈の実体はみとりちゃんから離れちゃうんじゃないか?って思ってるの。それが心配で…」
侮れない!
「はは。当たりです。私の母さんが死ねば聖奈の実体は私の元を離れ元の持ち主である聖奈に戻ります」
「やっぱり」
「どうして聖奈の霊体化より私が植物状態に戻るほうを心配しているんですか?」
「みとりちゃんが再び植物状態になったら聖奈はまた絶望を味わう事になる。それが怖くて」
「聖奈の事、大事なんですね」
「いずれはみとりちゃんの中にある聖奈の実体は強制的に聖奈に返さなくていけなくなる。もし聖奈の実体がみとりちゃんからなにをしても離れないようにする方法があったら教えて頂戴。聖奈とみとりちゃんの最後の時間を想定して選択肢として聖奈に教えたいの」
「嫌です。それにないです。私の母さんが亡くなれば強制的に聖奈の実体は私の元を離れます」
「残念だわ。そろそろ聖奈が戻ってくると思うし私はお暇するわ」
私は嘘をついた。ある事にはある…特に今は困らないから言っとくか
「あります!聖奈の実体が私の元から離れないようにする方法」
「教えて!」
急に食いついてきた…!
「私の母さんが死ぬ際に聖奈と私が手を繋いでいたら封印の術を誰かが使わない限り二度と聖奈の実体は私の元から離れなくなります」
「教えてくれてありがとう。この情報はあなたと聖奈が一緒にいられる時間が最後になりそうな時に教えるわ」
「勝手にしてください。ただし聖奈の実体が戻らなくて絶望しても知りませんよ」
3分後
「みとりちゃん!お待たせ!コーラ持ってきたよ!」
「コーラって…結構聖奈ってアグレッシブよね」
「いいからいいから」
「聖奈はいずれ私が聖奈に実体を返さなきゃいけなくなる事を理解してる?」
「してる。でももしが実体を返す必要が無くなる方法があるなら、私はそれに頼るかな」
「自己犠牲、ご立派ね」
「信頼だなぁ」
「ねぇ、聖奈は霊体になって不便な事とかないの?」
「ないよ。むしろ便利さ」
「実は言いたいことがあるの」
「なに?」
「私の母さんが死んだから聖奈の実体は聖奈の元に戻り、私は植物状態に戻るわ」
「え?!それって…」
「私の母さんの寿命=聖奈の実体で私の意識が維持できる時間よ」
「はは。なんか実感わかないな」
「でしょうね」
「私ね、みとりちゃんのお母さんに利用されてい事なんて100も承知だったんだよ。みとりちゃんのお母さんはこれを逃したら二度とチャンスはない、実体を渡してくれたらみとりちゃんは喜ぶとか言ってたな」
「カスね」
「でも私は嬉しかった」
「どうして」
「子供を助けたいという思いが伝わったから、みとりちゃんを助ける方法があったからさ」
「私を助ける事ができて満足してる?助けた結果霊体化したのに?」
「うん!死ぬ以外ならなんでもやるつもりだったから。実体を失う程度安いものよ」
「命を捨てるつもりはなかったのね。安心したわ」
「さっきみとりちゃんは母さんに解放の術を使うように頼んでみろって言ったよね?」
「それがどうかしたの?」
「みとりちゃんのお母さんは嫌がると思う。心の底からね」
「分かってるじゃない。人の実体を抜いて霊体化させたのに酷い人よね」
「酷くないよ。大切な人を失いたくない、それは人として当然さ。その感情が酷いなんてある訳ない。解放の術を使ったらみとりちゃんの母さんは親として失格だと思うんだ」
「あんたはその感情を紛らわす為に利用された被害者よ?」
「どんな形であれ許可はだしたから被害者じゃないよ。むしろ私からみた被害者はみとりちゃんだよ」
「どういうこと?」
「私が実体を貸したせいで罪悪感を持ってしまった。生への執着も薄れ生よりも私の実体の事を考えるようになってしまった」
「当たり前よ。あんたは今霊体状態なのに私は何不自由なく暮らせている。助けたはずの聖奈が不自由になり助けられた私が自由を手にした。耐えられないのよ」
「私の今の生活に不自由なところは無いけどなぁ」
「許可は出したと言っても所詮は唆されただけじゃない」
「むしろ私は許可なんてとらず無理矢理やって欲しかったな。子供の為に心を鬼にして欲しかった。あの人は私が嫌と言ったら多分やらなかっただろうし」
「嫌と言えばやらなかったでしょうね」
「もし私の実体を抜き出さずみとりちゃんが植物状態のまま放置してたら、みとりちゃんの母さんはもう母親じゃないよね?子供が植物状態になるのに私に実体を返すなんて本当に子を愛してるの?」
「私にはあまり理解ができないわ」
「んー…じゃあ私が肝臓移植が必要になって肝臓を譲ってくれって頼まれたらどうする?」
「それは…」
なに?この気持ちは…
「もし私が末期癌で安楽死すると言ったらみとりちゃんは悲しまない?」
辛い…なんなのこの気持ちは
「今みとりちゃんの中に葛藤がうまれているでしょ?私が死んだら悲しむよね?」
「悲しむに決まってるじゃない!肝臓も渡すし安楽死も止める!」
「それが大切な人を失うという事だよ。理解してくれた?」
「聖奈…」
「私がだったら逆にみとりちゃんのお母さんを利用してたかもしれないしね。責められないよ」
結構考えてるのね…
「ねぇ、聖奈」
「なに?」
「それを聞いても私、死ぬのに抵抗は持てないよ。聖奈の実体が私の意識回復に使われてる後ろめたさ、本来であれば一生目を覚まさない可能性すらあったから」
「少しは生に執着をもってよ」
「口で言えるほどかんたんじゃないのよ」
「さっきも言ったけどみとりちゃん、お母さんに会いに行ってないよね?」
「行ってないわよ。恨んでるし」
「私は解放の術を使わないように頼んだ。もし私が解放の術を使わないように頼まなかったらみとりちゃんの一言でみとりちゃんのお母さんは解放の術を使ってたかもしれない。みとりちゃんのお母さんが
解放の術を使わない原因を作ったのは私だよ?私を恨まないの?」
「それは…」
「あってあげて。たった1人の家族だよ?」
「あんたに頼まれたんじゃ断れない。分かったわ」
「じゃあ今すぐ行ってきて!」
「今すぐ…分かったわよ」
たまにはこういうのもいいかもね
「じゃあ私はそろそろお暇するわ。じゃあね」
「じゃあね」
「みとりちゃん、お母さんと仲良くなるかな?あれ?これはみとりちゃんから子供の頃に貰ったなんでも券だ。懐かしい!」
「ただいま!」
「父さん?!」
「お、聖奈!帰ったぞー!」
「おかえり。父さん」
みとりの実家
緊張する…でも聖奈の頼みだし…
「はーい!どちら様?ってみとり?」
聖奈達が今生きている日は6月4日です。ちなみに設定上2人とも学校には一応行っていますが話の都合z…ゲフンゲフン。2人とも通信制です。みとりは初めは学校に行く気はありませんでしたが聖奈が無理矢理通信制の学校に行かせたという裏設定がございます。聖奈は優秀です。小規模人工知能ですから。この話がみとり視点で話が進んでいる理由は聖奈はみとりを失った事によるショックで1年生の頃から精神年齢が殆ど変わってないからです