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第93話 改めて、自己紹介。

「改めて、リエナエーラと申します。言いにくいので、どうぞリエナとお呼びください」

「じゃあリエナちゃんって呼ぶね。わたしは蓮見佳奈。ハスミンでいいよ」

「はい、ハスミンさん」


 ハスミンとリエナがぺこりぺこりと頭を下げあう。


「それはどうなんだリエナ? あだ名にさん付けは変だろ?」


「いいんじゃないの? 個性を大事に的な?」

「まぁ個性的ではあるな……」


「それにほら、リエナっていうのもあだ名と言えばあだ名でしょ? 『リエナちゃん』と『ハスミンさん』なら同じじゃない?」


「いやーどうなんだろ……」


「勇者様、私は人を呼ぶ時は基本的に『様』付けか『さん』付けですので、そこはどうかお気になさらず」


「あー、そういやそうだったな。それに2人がそれでいいなら俺がどうこういうことでもないしな。ちなみになんだけど、俺を異世界転移させたのもこのリエナなんだ」


「あ、そうなんだね」


「そして勇者様は5年をかけて魔王カナンを倒し『オーフェルマウス』を救ってくれたんです。その節は本当にありがとうございました」


「ははっ、いいってことよ」


「2人は仲いいんだね。……っていうかお互いに『いいな』って思ってる間柄だったんだよね?」


 しかし軽い挨拶を終えてすぐ、ハスミンが踏み込んだ質問を繰り出してきた。

 まぁ今日はこういう話をするために顔を合わせたんだから、踏み込むも何もないんだけれど。


「はい。ですがお二人の『真実の愛』を見せられて、私は自分の気持ちを納得させることができました」


「ごめんなリエナ。リエナの気持ちに応えられなくて」


「いえいえそんな。勇者様が謝ることではありません。……残念は残念ですけどね」


「『オーフェルマウス』……だっけ? 元の世界にはもう帰れないの?」


「現状では無理な感じですね。あれから何度も試しているんですけど、上手く転移の術式が発動してくれないんです」


「なにか原因があるってこと?」


「転移術式は非常に繊細な調整が必要で、しかも膨大な力を消費する古代の禁術なんです。この世界は女神アテナイの影響力が少し弱いので難しいのでしょう」


「そうなんだ……」


「ですが、それらはこの世界に来る前から分かっていたことですので仕方ありません。覚悟はしていましたのでどうか気になさらないでください」


 そんなリエナの説明を聞いて、俺は少し疑問を覚える。


「なぁ、この世界って女神アテナイの影響力が弱いのか? その割に、俺の勇者スキルはどれも向こうの世界とまったく変わらずに機能しているぞ?」


 勇者スキルを使った時に性能が落ちているように感じたことは一度もない。

 なにせ5年も使い続けた力だ。

 性能が落ちていればすぐに気づくはずだ。


「それはきっと勇者様が特別なんだと思います。なにせどれもこれも最高レベルの加護をこれでもかと授かっていますから」


「なるほどな」

 一事が万事、俺はどこまでも女神アテナイの特別だってわけか。


 でもここまでしてもらってるのに、当の俺に女神アテナイへの信仰心がほとんどないのが申し訳ないな。


 というか信仰心っていう熱心な感覚自体が、あまり俺の中に存在してないんだよな。


 女神アテナイのことは、神託で声を聞いたこともあるし力も授けてもらってるから、決して信じていないわけじゃない。

 だけどそれがリエナみたいな熱心な信仰心かって問われると、それはやっぱりどこか違う気がするのだ。


 まぁ俺のぺらっぺらに薄い信仰心については、とりあえず置いておいてだ。


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