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第61話 男女混合スウェーデンリレー(2)

「頑張りましょうね、織田くん」

「ああ、お互い頑張ろうな新田さん」


「……織田くんってさ」

「なんだ?」


「さっきはみんなにプレッシャーを与えないように、結果より過程が大事だって言ってたけど。織田くん自身は何よりも結果を求めるタイプだよね」


「まぁそうだな。どっちかって言うとそういうタイプかもな。俺個人としては、何でもやるからにはいい結果を手にしたいタイプだとは思う」


 みんなには気楽に行こうと言ったけれど、実は俺個人としては1位以外は考えていない。

 このメンバーなら普通にやれば勝てるとも思っている。


「ふふっ、やっぱりそうだよね。文化祭で私の代わりにギターをやってくれた時にそう思ったの。織田くんは無理強いこそしてこないけど、でもやるんなら何が何でも最良の結果を手に入れようとする人だって」


「あー、一応言っておくと、ここまで練習してきた過程が大事だって言ったのは嘘偽りない本心だし。仮に負けたからって誰が悪いとか戦犯探しをするつもりも更々ないからな?」


「もちろん分かってるわよ。今のはあくまで織田くんの内面に限っての話だから」


「誤解はないみたいで良かったよ。ま、俺個人としては当然結果も取りに行くつもりだ。こう見えてかなり負けず嫌いでな」


 なにせ俺は5年にも渡って異世界で魔王軍と戦い、ただの1度も負けなかった最強の勇者なのだ。

 勝つことに慣れきっているし、勇者になってからは負けた経験は一度もない。


 いやまぁ文化祭のミニ四駆勝負でハスミンに3戦して3敗したんだけど。

 あれはまぁ言ってみればお遊びだからノーカウントだ。


 ノーカウントなの!


 勝つことを義務付けられた常勝不敗の絶対勇者シュウヘイ=オダが求めるのは、常にただ一つ、勝利という名の栄光だけなのだから!


「同じね」

「なにが同じなんだ?」


「ハスミンなんだけどさ。走り方とかバトンパスとかを、ネットで動画を見てかなり練習してたみたいなの。あの子も織田くんに似てかなりの負けず嫌いだから」


「そうだったのか、全然知らなかったよ。まったく水臭いよなハスミンは、言ってくれたら良かったのに」


「きっと隠れて練習して、誰かさんにいいところでも見せたかったんじゃない?」


「ハスミンは両親が見に来てるのか? うちの親は来てないんだよなぁ」


「んー、親じゃあないかな?」


「まぁ誰に見せたいにせよ、なんでも一生懸命に頑張ろうとするハスミンは、ほんとすごいと思うよ」


「……そうね、文化祭も体育祭も、最近は特に熱心かな。もしかしたら織田くんがいるからかもね?」


「そうかもな。俺とハスミンはクラス委員と副クラス委員だから。クラスの皆が楽しんでくれるようにハスミンも頑張ってるんだろう。俺はそこまで献身的にはやっていないから、ハスミンのそういうところは見習わないといけないな」


 体育祭のリレーの練習をこっそりやってたりと、誰よりも一生懸命に学校行事に取り組むハスミンの姿に、俺は頭が下がる思いだった。


「うーん、そう言う意味でもないんだけどねぇ……あっちもあっちなら、こっちもこっちかぁ」


「なんの話だ?」


「ううん、何でもないの。ちょっとした個人的お節介だから気にしないで。あ、そろそろスタートだから行ってくるね」


 新田さんは少し苦笑いしながらそう言うと、スタート位置に向かって歩き出した。


「頼んだぞ、トップバッター。でも力まず、肩の力を抜いてな」

 俺はその背中に軽く声をかけて送り出す。


(それにしてもさっき新田さんが『そう言う意味でもない』って言ったけど、じゃあどういう意味だったんだろうか?)


 ちょっと気になるけど、今はそんなことよりも男女混合スウェーデンリレーに集中すべきだな。


 アンカーの俺が気もそぞろで余計なこと考えて、万が一バトンを落として負けでもしたら申し開きができないから。


「なんにせよ、俺は常勝不敗の勇者なんだ。そして大の負けず嫌いでもある。5年間続いた不敗神話は、この世界でも継続させてもらうぞ――!」


 俺は静かに闘志を燃やしながら、スタート位置についた新田さんに視線を向けた。



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