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第55話 リレーの準備(3)

「べ、別にそんなんじゃないし……ねっ、修平くん?」

「まぁそうだな」


 ハスミンが顔を赤くしながらそそくさと指を引っ込めた。

 ――と思ったら、自分の人差し指同士でツンツクし始める。


 そして俺と視線が合うと、プイっと大げさに視線をそらす。

 コミカルでちょっと可愛いな。


 そんな俺たちを伊達がにこにこしながら見守っていた。


 おい伊達。

 なんだよその、孫の成長を見守るお祖父さんみたいな優しげな表情は?

 俺に言いたいことがあるなら言っていいんだぞ?


「ま、冗談はそのくらいにして。ほんと織田くんってなんでもできるわよね」

「足も速いし、織田は陸上部に入っても余裕でエースになれそうだよな」


「ありがとう、褒められて悪い気はしないよ」

「さらっとそんな風に言っちゃうんだものね」


「それなりに以上にできるのは自覚してるから」


 一部チートのおかげもあるとはいえ、今の俺は謙遜した方がむしろ嫌味で感じが悪く見えるだろう。


 と、


「そう言えば、なんの話をしてたんだっけ?」

 ハスミンの一言で、話が完全に脱線していたことに俺も含めてみんなが気が付いた。


「伊達の部活もあるし、雑談は終わりにしてバトンパスの話に戻そうか」


「そうだな」

「もうみんなダメだよ、遊んでちゃ」

「なに言ってるのよ、ハスミンが織田くんとじゃれあい始めたのが発端でしょ」


「じゃ、じゃれあってなんかないってば……」

「はいはいそうね。じゃあ織田くん、この子のことはほっといて話を進めてくれる?」


「お、おう、分かった。俺の意見としては、速く走りながらのバトンパスは少し難しい気がするんだ。だから少しくらいペースが落ちてもいいから、ここは成功優先でいかないか?」


 俺はここまでの練習状況とみんなとの話し合いを元に、そう提案した。


「あ、それわたしもさんせー。ちょっと思ったんだけど、他のクラスだってみんなバトンパスは素人のはずなんだよね。ってことはわたしたちと同じように、そんな上手くバトンパスができるはずがないと思うの」


 俺の提案に、ハスミンがいい感じの理由をプラスしてくれる。


「ハスミンの言うとおりだと思う。俺たち以外もみんなリレーは素人だから、焦らずに確実にバトンを繋げさえすれば、うちのクラスは4人とも走力が高いからいい勝負ができると思う」


「なるほど、確かにそうだね。無理に危ない橋を渡る必要はないか」

「バトンパスが下手なのは私たちだけじゃないはずだものね」


 ハスミンに続いて、伊達と新田さんからも肯定的な意見が出る。


「安全第一、名付けてセーフティ・ファースト作戦だ。バトンを落としたら元も子もないからな」


「うん、いいんじゃないか。俺は織田の案に賛成だ」

「私もそれでいいと思うわ」

「わたしもー」


「じゃあ基本は確実にバトンを繋ぐセーフティ・ファースト作戦で行こう。しっかりとバトンを受けてから走る。ただし出遅れて下位に沈んだ時に限って、一か八かのギャンブルバトンパスもありってことで」


「ふんふん、りょーかい」

「その判断は俺たち個人で勝手にやってもいいのか?」


「その辺は各々に任せるよ。もちろんそれでバトンを落としても絶対に責めないって前提でな。バトンを落としたとしても、悪いのはニュートン先生の万有引力の法則だ。体育祭は競技会じゃなくてお祭りなんだし、俺としては楽しくやりたいかな」


「それもりょーかい!」

「まぁ俺は全力で1位を狙わせてもらうけどな。手を抜くとバスケ部の先輩にドヤされるんだ……」

「じゃあみんなで楽しく1位を狙いましょ」


「さすがメイ、いいこと言うじゃん……えいっ♪」


 言いながらハスミンが新田さんに後ろから抱き着いた。

 新田さんのお腹の上――というか明らかに胸のあたりに両手を回すと、ハスミンはバックハグのような体勢で身体全体を密着させる。


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