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第32話 後夜祭(1)

 全てを片づけ終わって教室がすっかり元通りに戻ったのを見て、


「終わったな」


 俺は祭りの後の寂しさというか、もの悲しさというか。

 そういった切ない気持ちを感じるとともに、クラス委員として肩の荷が完全に下りたのを感じていた。


「終わったね。修平くんはクラス委員として準備からこの瞬間までご苦労様でした」

 隣の席に座るハスミンも満足げな表情で、うーんと伸びをする。


「ありがと。みんな率先して協力してくれたから、準備から本番まで上手くいって良かったよ。ハスミンも副クラス委員でがんばってくれたし」


「そうは言っても、途中何度かライブの練習で抜けちゃったからね。クラスでの貢献度はちょっと低めかなぁ」


「いやいや、そのライブのおかげでうちのクラスのラストスパートが決まったんだぞ? 最後大変だったんだからな。ホットケーキを焼いたそばから次から次に追加の注文が来てさ」


「お客さんすごかったよね~」


「ほとんどハスミン目当てのお客さんだったけどな。さすが1年5組のモテ番長だ」

「あはは、なにそれ。誰が言ってるのよ?」


「……ま、それも含めていい思い出になったよ。こんな楽しい文化祭は人生で初めてだったからさ」


「ねぇ修平くん、今露骨に話を逸らしたよね? いったい誰がわたしのことモテ番長なんて言ってるのかな?」


「あー、誰だったかな……忘れた」

「ぜったい嘘だし」


「まぁほら、楽しかったからいいじゃないか。クラスの出し物もライブも全部成功して、ほんと最高の1日だった」


「うん、わたしもすごく楽しかった。ってことで、残るは生徒会主催の後夜祭だけだね」


「だな。でもこっちは俺はまったく関わってないから気楽なもんだよ。参加すればいいだけだし」


 そう。

 文化祭の最後には、後夜祭として生徒会が主催するキャンプファイヤーが用意されていた。


「じゃあそろそろ行こっか? メイやホノカもすぐ行くって」

「了解だ」


 そして俺とハスミンは、新田さんたちバンドのメンバーと一緒に後夜祭に参加する約束をしていたのだ。


 俺は最初は、

『俺はいいよ、仲良し女の子グループに部外者が割って入るのはどうかと思うし』

 そう言って固辞したんだけど。


『なに言ってんの、部外者どころか今日の主役は織田くんじゃん』

『そうそう、私たちの救世主だもん』

『織田っちマジでギター上手くてびっくりしたし! プロかよっていう』

『修平くんはほんと多才だよね』


『今日ライブができたのはほんとに織田くんのおかげだから』

『そうそう、今日に限っては織田くんがいないと始まらないよねー』

『もしかして私らと一緒じゃ不満かー?』

『修平くん、一緒に後夜祭に行こうよ?』


『まぁそうまで言ってくれるなら一緒させてもらおうかな?』


 せっかくこうまで誘ってくれてるんだから、むしろ断る方が感じが悪いよな。


 そういった経緯を経て、約束をした俺たちがグラウンドで集まった頃には、辺りはすっかり薄暗くなっていた。

 グラウンド中央にしつらえられた井の字に組まれた薪のやぐらは、既に赤々と燃え盛っている。


「あーあ、もう点火しちゃってるし」

「クラスでみんなで盛り上がってたからちょっと出遅れたな」


「もうちょっと前に行く?」

「そうだな……でも前の方は混んでるから5人でまとまれるスペースはなさそうだぞ?」


 俺とハスミンがそんな話をしていると、


「あ、そう言えば私用事があるんだった。ごめん、私ちょっと別行動するね」

 突然新田さんがそんなことを言った。


 するとそれに呼応したかのように、


「あーそうだった、私もクラスで呼ばれてたのを今思いだしちゃったから行かないと」

「あ、私もー、なんか……なんかあったからー」

「ああもう、ちゃんと考えておけって言ったでしょ」


 続いて楠木さんと赤松さんがそう言うと、3人は示し合わせたかのように一斉に離脱していき、後には俺とハスミンの二人だけが残されてしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 各セリフの後に(棒)とつくんですね。
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